うやまふことばの つかいかたを まとめる
● うやまひとうとぶことば・へりくだりゆづることばのつかいわけ
うやまひとうとぶことば・へりくだりゆづることばは、つぎのようにつかいわける。
① めうへのひとやはなしあひてのうごき……うやまひとうとぶことばをつかうことはできるが、へりくだりゆづることばをつかうことはできない。
(たとへ) 先生がこちらにまいります。(あやまり)
→ 先生がこちらにいらっしゃいます。(ただしい)
② みづから(みづからやみうち)のうごき……へりくだりゆづることばをつかうことはできるが、うやまひとうとぶことばをつかうことはできない。みうちのはなしではへりくだりゆづることばをつかう。
(たとへ) うちのたなかがおっしゃったとおりです。(あやまり)
→ うちのたなかがもうしあげたとおりです。(ただしい)
● ことばのあたまにつけることば「お・ご」のつかいかた
ことばのあたまにつけることばの「お」はやまとことばに、「ご」は漢語につく。
(たとへ) おつとめ おのぞみ おでかけ おいそがしい
(たとへ) ご勤務 ご希望 ご出発 ご多忙
● いきすぎたうやまひことば
うやまひことばは、つかいすぎないようにこころえる。
① うやまひことばをふたつよりおほくかさねたことば……ひとつのことばにおなじたぐいのうやまひことばをかさねてつかうこと。ただしくないつかいかたとされる。
(たとへ) あなたのおっしゃられるとおりです。(あやまり)
② うやまひことばがつづくとき……もっともあとのうやまひことばをのこしてまへをできるだけはぶく。
(たとへ) そとをご覧ながらお食事なさっていらしゃいます。
→そとをみながら食事していらっしゃいます。
③ ひとよりほかのもの……うやまひことばをつかわない。
(たとへ) そちらは、ゆきがふっていらっしゃいますね。(あやまり)
→そちらは、ゆきがふっていますね。
④ 「お・ご」のつけすぎ……ならわしとなっているものだけにつかう。
(たとへ) おとり おたのしい おかなしい (あやまり)
ときあかし
ここでは、うやまひことばをつかうときにこころえすべきいくつかのことがらをみていきます。
うやまひことばのつかいかたのまちがえやすいところをしっておくと、ただしくつかうためにみにつきます。
1 うやまひとうとぶことば・へりくだりゆづることばのつかいわけ
うやまひとうとぶことばはひとのうごきをたかめることばであるのにくらべて、へりくだりゆづることばはひとのうごきをへりくだる(ひくめる)ことばです。
このもともとのちがいから、つぎのようなことがいえます。
(1) めうえのひとやはなしあいてのうごき
めうへのひとやはなしのききて(よみて)のうごきにくらべては、うやまひとうとぶことばをつかうことはできますが、へりくだりゆづることばをつかうことはできません。
よくあるまちがいは、へりくだりゆづることばをうやまひとうとぶことばととりちがえて、めうえのひとなどにへりくだりゆづることばをつかってしまうことです。
先生がこちらに まいり ます。(あやまり)
→ 先生がこちらに いらっしゃい ます。(ただしい)
あちらで うかがってください 。(あやまり)
→ あちらで おたずねください 。(ただしい)
ご注文は、なにに いたします か。(あやまり)
→ ご注文は、なにに なさい ますか。(ただしい)
たなか先生は、まなびやを おやすみし ました。(あやまり)
→ たなか先生は、まなびやを おやすみになり ました。(ただしい)
このようなまちがいをしないためには、うやまひとうとぶことばとへりくだりゆづることばのそれぞれのあらはしかたをしっかりとおぼえることがきもです。
(2) みづからのうごき
みづからやみづからのそばのひと(みうち)のうごきについては、へりくだりゆづることばをつかうことができますが、うやまひとうとぶことばをつかうことはできません。
みうちには、いへのひとのほかに、会社などおなじあつまりにいるひとがふくまれます。
みづからのみうちについてうやまひとうとぶことばをつってしまうとまちがいになります。
みうちのうごきについてはへりくだりゆづることばをつかうようにこころえましょう。
ちちが先生に おあいになり たいともうしています。(あやまり)
→ ちちが先生に おめにかかり たいともうしています。(ただしい)
うちのはやしが おっしゃっ たとおりです。(あやまり)
→ うちのはやしが もうしうへげ たとおりです。(ただしい)
みづからやみうちがするうごきであっても、へりくだりゆづることばをつかうことができないときがあります。
たとえば、「うかがう」はうごきのむかうさきにくらべてうやまふこころをあらはすことば(へりくだりゆづることば)なので、みうちのあひだのうごきにつかうことができません。
・わたくしは、をばのところへ うかがい ます。
うへのたとへのふみでは、はなして(わたくし)がみうちである「をば」についてうやまふこころをあらはすことになるのでただしくないあらはしかたになります。
もうかた、「まいる」のように、もっぱらはなしのききてについてうやまふこころをあらはすへりくだりゆづることばであれば、みうちのあひだのうごきにつかってもまちがいではありません。
・わたしは、をばのところへ まいり ます。
ふみのきまり
みづからのそばのほかはうやまひとうとぶことば、みづからのそばにはへりくだりゆづることばをつかう。
*
みうちのはなしあひであってみうちのほかのひとがかかわらないときには、
みうちであってもうやまひことば(うやまひとうとぶことばやへりくだりゆづることば)をつかいます。
たとえば、おなじ会社のなかのひとたちでめうへのひとのことをはなすときは、そのひとについてはうやまひことばをつかうのがただしいです。
しかし、会社のそとのひととはなすときには、めうへのひとはみうちになるので、そのひとについてうやまひことばをつかうことはただしくないです。
うやまひとうとぶことばの「くださる(くれる)」とへりくだりゆづることばの「いただく(もらう)」とは、もともとにおなじこころをあらはしているので、どちらをつかってもかまいません。
もっとも、「くださる」はあいてがみづからに(して)くれる、「いただく」はみづからがあひてから(して)もらうというちがいがあります。
したがって、あるじをあらはすことばをまちがえないようにたすくことばのつかいかたをひきしめてこころえてください。
・先生が わたくしに プレゼントを くださる 。
・わたくしが 先生から プレゼントを いただく 。
・先生が わたくしを はげまして くださる 。
・わたくしが 先生に はげまして いただく 。
2 ことばのあたまにつくことば「お・ご」のつかいかた
ことばにことばのあたまにつくことばの「お」や「ご」をつけると、うやまひことば(うやまひとうとぶことば・へりくだりゆづることば・やすらかなことば)にすることができます。
そのとき、「お」はやまとことばに付き、「ご」は漢語につくのがきまりです。
おつとめ おのぞみ おでかけ おいそがしい
ご勤務 ご希望 ご出発 ご多忙
やまことばとは日本固有のことばで訓読をすることばをいい、漢語とは中国に由来することばで音読をすることばをいいます。
ふみのきまり
うやまひことばのことばのあたまにつくことば「お」はやまとことばに、「ご」は漢語につく。
たとへのそととして、漢語に「お」がつくもの(したの【A】)ややまとことばに「ご」が付くもの(したの【B】)、「お」と「ご」のともにつくもの(したの【C】)もあります。
【A】お弁当 お散歩 お化粧 お行儀
【B】ごゆっくり ごもっとも ごひいき
【C】お返事・ご返事 お勉強・ご勉強
うへのことは、「お(ご)~になる」「お(ご)~する」などのようなうやまひことばのかたちをつくるときであってもおなじです。
おはいりになる ご入場になる
おみちびきくださる ご指導くださる
おたずねする ご質問する
おいのりもうしうへげる ご祈念申しうへげる
*
ことばのあたまにつくことば「お」「ご」がつくことばは、それがうやまひとうとぶことば・へりくだりゆづることば・やすらぐことばのいずれであるかをみわけます。
めうへのひとやはなしのききて(よみて)のうごきなどをあらはすものであればうやまひとうとぶことばであり、みづからやみうちからみうちのそとのひとにむかううごきなどをあらはすものであればへりくだりゆづることばです。
また、とくにだれかへのうやまふこころをあらはすものではなくてことばをこのうへなくするためであるときにはやすらぐことばになります。
先生からの おてがみ をよむ。(うやまひとうとぶことば)
先生への おてがみ をかく。(へりくだりゆづることば)
みづからがたべる お弁当 をつくる。(やすらぎことば)
うへのたとへの「おてがみ」がおなじかたちのことばであることにこころえてください。
このように、おなじかたちのことばがうやまひとうとぶことばにもへりくだりゆづることばにもなることがあります。
3 いきすぎなうやまひことば
たとえうやまひことばであっても、度をこえてつかってしまうと、ききて(よみて)によいこころをあたえません。
うやまひことばは、あまりつかいすぎることがないようにこころえてください。
いきすぎたうやまひことばあらはしかたのたとへをいくつかあげます。
(1) ふたつよりおほくかさねたうやまひことば
つぎのたとへをみてください。
あなたの おっしゃられる とおりです。
先生が本を およみになられる 。
うへのもっともはじめのたとへの「おっしゃられる」は、「いう」をうやまひとうとぶことばのうごきをあらはすことばである「おっしゃる」にいいかえて、
さらにうやまひとうとぶのうごきをたすくことば「れる」をつけくはえたものです。
また、つぎのたとへの「およみになられる」は、「よむ」を「およみになる」といううやまひとうとぶことばのかたちにして、
さらにうやまひとうとぶのうごきをたすくことば「れる」をつけくはえたものです。
このように、ひとつのことばについておなじたぐいのうやまひことばをかさねてつかふことをふたつよりおほくかさねたうやまひことばといいます。
ふたつよりおほくかさねたうやまひことばは、いはゆるにいきすぎたうやまひことばのあらはしかたであるとしてただしくないとされています。
もっとも、つぎのたとへのように、ふたつよりおほくかさねたうやまひことばであってもならはしとしてつかわれているものもあります。
先生がお茶を おめしうへがりになる 。
どうぞごゆっくり おめしうへがりください 。
私がそちらへ おうかがいします(おうかがいいたします) 。
うやまひことばとまぎらわしいものに、つぎのようなあらはしかたがあります。
・ご覧になっていらっしゃる。(みている)
・ご覧になってくださる。(みてくれる)
・ご覧になっていただく。(みてもらう)
・おめにかけてさしあげる。(みせてやる)
これらのあらはしかたは、ふたつのことばをそれぞれのかたちにうやまひことばにいいかえているので、うやまひことばをふたつよりおほくかさねたことばにはあたりません。
たとえば、「ご覧になっていらっしゃる」というあらはしかたは、
「みている」の「みる」をうやまひとうとぶことばの「ご覧になる」にし、「いる」をうやまひとうとぶことばの「いらっしゃる」にしたものです。
このとき、「みる」と「いる」ということばをそれぞれうやまひことばにいいかえています。したがって、うやまひことばをふたつよりおほくかさねたことばではありません。
(2) うやまひことばがつづくとき
ひとつのふみのなかにうやまひことばがいくつもつづくと、くどいあらはしかたになってしまいます。
そこで、つぎのたとへのようにもっともあとのうやまひことばだけをのこしてそれよりもまへのうやまひことばをできるだけはぶくと、すっきりとしたふみになります。
先生は、そとをご覧になりながらお食事なさっていらしゃいます。
→先生は、そとをみながら食事していらっしゃいます。
ご質問のありますかたはいらっしゃいますか。
→ご質問のあるかたはいらっしゃいますか。
うへのたとへのようにもっともあとのうやまひことばあらはしかただけをのこすのは、そのうやまふこころがまへのところにもおよぶことになるからです。
(3) ひととはちがうもの
うやまひことばは、ひとについてつかふものです。
したがって、つぎのたとへのように、ありかたやいきものなどひととはちがうものにうやまひことばをつかふとまちがいになります。
そちらは、ゆきがふって いらっしゃい ますね。
→そちらは、ゆきがふっていますね。
お宅のいぬは、いくつに なられ ましたか。
→お宅のいぬは、いくつになりましたか。
うへのたとへで、「ゆき」や「いぬ」はひとではないので、これらのものについてうやまひことばをつかふことはありません。
したがって、「いらっしゃる」や「なられる」といったうやまひことばあらはしかたではなく、「いる」や「なる」といったふつうのあらはしかたにします。
「やる・あたえる」のへりくだりゆづることばに「あげる」があります。
この「あげる」ということばは、つぎのたとへのようにつかはれることがよくあります。
・いぬにエサを あげる 。
・こどもにおこづかいを あげる 。
うやまひことばはひとについてつかふことばですから、「いぬ」というひとのほかのいきものについて「あげる」といううやまひとうとぶことばをつかふことはもとからはまちがいです。
また、「こども」はうやまふこころをあらはすものではないので、へりくだりゆづることばのあらはしかたをつかふことはもとからただしくありません。
(4) 「お」「ご」のつけすぎ
ことばをこのうへなくするためにことばのあたまにつくことばの「お」「ご」をつけることがあります。
やすらぎことばにする「お」「ご」は、もともとにさまざまなことばにつけることができます。
しかし、つぎのたとへのように、「お」「ご」をつけるのになじまないことばもあります。
おとり おねこ お電車 おむぎ (✕)
おテレビ おタクシー お駅 (✕)
おかなしい お運転する (✕)
したがって、「お」「ご」をむやみにいろいろなことばにつけることはさけて、つけることがならはしとなっているものだけにつかふようにしましょう。
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