【まとめ:LGBT関連】「MtF」や「FtM」って何? 分類や治療、戸籍について
【まとめ:LGBT関連】「MtF」や「FtM」って何? 分類や治療、戸籍について
最近、LGBTという言葉をよく耳にします。レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなど、これまでの男性、女性といった性の既成概念とは異なる考え方のことです。こうした性に関する新たな考え方に接する機会が、皆さんの身の回りにも増えてきているのではないでしょうか。
この記事では、「MtF」や「FtM」について分かりやすく解説するので、性に関する新たな考え方の理解を深めることができます。自らの性について悩んでいる、そうした人が周囲にいる、という方に是非読んでいただければと思います。
目次:
1−1 「MtF」とは何か?
1−2 「MtF」に関する様々な医学的治療方法
1−3 「MtF」の様々なバリエーション
1−4 「MtF」における戸籍変更
2−1 「FtM」とは何か
2−2 「FtM」に関する様々な医学的治療方法
2−3 「FtM」の様々なバリエーション
2−4 「FtM」における戸籍変更
3−1 「MtF」と「FtM」についてのまとめ
3−2 「MtF」のまとめ
3−3 「FtM」のまとめ
1−1「MtF」とは何か?
「MtF」とは、Male to Femaleの略です。生まれたときには、戸籍上、男性という割当をされていますが、その後、女性として生きることを指向している人のことを指します。
LGBTのカテゴリで言うと、Tのトランスジェンダーの一種に分類されます。社会からは男性という性でラベリングされているものの、女性として生きることを望むのが、「MtF」ということになります。
気をつけないといけないのが、女性として生きることを望んでいるからと言って、必ず男性を恋愛対象として見ているか、というと必ずしもそうではないということです。後ほど出てきますが、「MtFビアン(レズビアン)」という人々もいます。
すなわちレズビアンの方と同様に、女性を好きになることもありえます。つまり、性・ジェンダーの自認と反対の性を指向するという性的指向は一致しないこともあります。
1−2 「MtF」に関する様々な医学的治療方法
「MtF」の方の中には、より自分らしさを追求するために、様々な治療を検討する人もいます。いくつかご紹介します。
1−2−1 ジェンダー外来
ジェンダー外来とは、精神的側面、身体的側面の両方について、専門家の観点から診断を行うものです。臨床心理士立ち会いのもとで心理テスト実施したり、泌尿器科の立ち会いのもとで、生殖器の状況を診断したりもします。
ジェンダー外来を経て、身体的治療の必要性が検討され、必要となった場合には、診断書があるという前提の上で、様々な外科的な治療が用意されています。
1−2−2 ホルモン注射
「MtF」の場合、女性ホルモンを筋肉注射することになります。女性ホルモンは1〜2週間毎に注射するのが一般的と言われています。錠剤による投薬は、効果が不安定と言われています。ホルモン注射の効果としては、例えば、体毛・ヒゲの減少、筋肉の減少、頭髪の増加、乳房の増大、などの女性化が進むと言われています。一方で、精巣や前立腺が縮小してその機能が失われてしまいます。一度こうした機能を失ってしまうと女性ホルモンの注射を中断しても元には戻りません。また、副作用としては、肝機能障害、心不全、心筋梗塞、脳梗塞、乳癌、精巣前立腺の委縮などがあると言われています。
1−2−3 豊胸手術
「MtF」の場合、乳房に関して言えば、上記の女性ホルモンの注射によって、ある程度大きくなることが多いようです。したがって、必ずしも乳房を大きくするための外科的手術が必要とは限りませんが、女性ホルモンだけでは、個人的に満足できる大きさに乳房がならなかった場合には、豊胸手術が考えられます。豊胸手術には、乳房インプラントやヒアルロン酸の注入といった方法があります。また、豊胸手術の他に、喉仏を一部削って目立たなくしたり、声帯を調整して声のトーンを変える手術も存在します。
1−2−4 性別適合手術
上記のホルモン注射や豊胸手術を実施した上で、さらにより女性に近づきたいと思う場合、性別適合手術があります。性転換手術とも言います。性別適合手術にはいくつか段階があり、陰茎や両側精巣の切除手術と尿路の変更手術などがあります。泌尿器科医と形成外科医が連携して慎重に執刀します。それぞれの 「MtF」の方としっかりとしたコミュニケーションの上で手術内容を決めていきます。
1−3 「MtF」の様々なバリエーション
「MtF」の方にも様々な思いの方がいて、必ずしも一様ではありません。カテゴリについては、完全に確立されたものがある状況とは言えませんが、以下に大まかな分類を示します。
1−3−1 「MtFTG」
「MtFTG」は、male to female trans genderの略称です。上述の治療方法で説明したような身体的な転換を希望はしていませんが、社会的には女性として暮らしたいと考えている人たちのことを言います。身体と心の一致をそれほど強く求めないケースと言えるかもしれません。
1−3−2 「MtFTS」
「MtFTS」は、male to female trans sexualの略称です。「MtFTG」と異なり、身体的にも男性の体を求めており、豊胸手術や性転換手術を検討している人々のことを指します。「MtFTG」よりも身体的により完全な女性へのトランスフォームを指向していると言え、身体と心の一致を強く求めるケースと言えます。
1−3−3 「MtFレズビアン」
生物学的には男性として誕生しましたが、自らの性認識については、女性として認識しています。その上で、性愛の対象を男性ではなく女性を指向する人のことを「MtFビアン(レズビアン)」と言います。
1−3−4 「MtX」
「MtF」ではありませんが、生物学的には男性として生まれてきて、その後、自らの性認識を男性とも女性とも断定したくない人のことを指します。自分はある時は男性的だし、またあるときは女性的に感じるのが自然だ、もしくは、常に男性とも女性とも言えない・思えないという認識だ、という人々が、「MtX」に当てはまります。
1−4 「MtF」における戸籍変更
「MtF」で、身体と心の感覚を一致させ、社会的にも女性として生きていく環境整備をしようとする場合、戸籍の変更が最終関門と言えるかもしれません。きちんとしたジェンダーカウンセリングを経て、医師の指導のもと性転換手術などを受けた場合、戸籍の変更というのも視野に入ってきます。
ここでは、法律上の戸籍変更の要件をまず列挙します。
1.20歳以上
2.現状、婚姻していない
3.現状、未成年の子供がいない
4.生殖腺がない、又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態となっている
5.他の性別の性器に係る部分に、近似する外観を備えている
以上の5点になります。5の条件については、「MtF」の場合、性転換手術で睾丸を摘出していることが条件になります。また、ペニスを切除して、その後に、女性器の外陰部のような見た目にすることが必要となります。膣に関してはその有無は問われていないので、造膣しなくても問題はありません。
これらの情報を医師による診断書に記載して、家庭裁判所に提出します。家庭裁判所では、実際に服を脱いて証明することを求められることはなく、書類で審査されます。なお、戸籍の変更と同時に改名に関する手続きも行うことができます。
2−1「FtM」とは何か
「FtM」とは、Female to Maleの略です。「MtF」とは反対に、生まれたときには、戸籍上、女性という割当をされていますが、その後、男性として生きることを指向している人のことを指します。
LGBTのカテゴリで言うと、「MtF」と同様に、Tのトランスジェンダーの一種に分類されます。社会からは女性という性でラベリングされているものの、男性として生きることを望むのが、「FtM」ということになります。
また、「MtF」と同様に気をつけないといけないのが、男性として生きることを望んでいるからと言って、必ず女性を恋愛対象として見ているか、というと必ずしもそうではないということです。後ほど説明しますが、「FtMゲイ」というカテゴリがあり、こちらの分類される方々は、恋愛対象として男性を指向します。
すなわちゲイの方と同様に、男性を好きになる可能性もあります。つまり、ジェンダーの自認と反対の性を指向するという性的指向は一致しないこともあるということです。
2−2 「FtM」に関する様々な医学的治療方法
「MtF」の方々と同様に、「FtM」の方の中にも、より自分らしさを追求するために、様々な治療を検討する人もいます。いくつかご紹介します。
2−2−1 ジェンダー外来
ジェンダー外来とは、精神的側面、身体的側面の両方について、専門家の観点から診断を行うものです。臨床心理士立ち会いのもとで心理テスト実施したり、婦人科の立ち会いのもとで、生殖器の状況を診断したりもします。
「MtF」の場合と同様、「FtM」についても、ジェンダー外来を経て、身体的治療の必要性が検討され、必要となった場合には、診断書があるという前提の上で、様々な外科的な治療が用意されています。
2−2−2 ホルモン注射
「FtM」の場合、男性ホルモンを注射することになります。男性ホルモンは2〜3週間毎に注射するのが一般的と言われています。ホルモン注射の効果としては、例えば、体重増加、月経停止、脂肪減少、声の変化、にきびといった身体の変化が出てくると言われています。また、副作用としては、毛髪の減少、肝機能障害、多血症、血栓症、などが報告されています。
2−2−3 乳腺摘出手術
いわゆる乳房を切断する手術です。乳房をなくすことによって、より見た目が男性らしく見えるようになります。
2−2−4 性別適合手術
上記のホルモン注射や乳腺摘出手術を実施した上で、さらにより男性に近づきたいと思う場合、性別適合手術があります。性転換手術とも言います。性別適合手術にも様々なバリエーションがあり、子宮・卵巣の摘出、膣粘膜の切除、膣閉鎖、尿道の延長、陰茎形成などがあります。婦人科医が慎重に執刀します。どの施術を望み、実施するかは、それぞれの 「FtM」の方の希望によります。
2−3 「FtM」の様々なバリエーション
「MtF」の場合と同様に、「FtM」の方にも様々な思いの方がいて、必ずしも一様ではありません。カテゴリについては、完全に確立されたものがある状況とは言えませんが、以下に大まかな分類を示します。
2−3−1 「FtMTG」
「FtMTG」は、female to male trans genderの略称です。上述の治療方法で説明したような身体的な転換を希望はしていませんが、社会的には男性として暮らしたいと考えている人たちのことを言います。
2−3−2 「FtMTS」
「FtMTS」は、female to male trans sexualの略称です。「FtMTG」と異なり、身体的にも男性の体を求めており、乳腺摘出手術や性転換手術を検討している人々のことを指します。「FtMTG」よりもより完全な男性へのトランスフォームを指向していると言えます。
2−3−3 「FtMゲイ」
生物学的には女性として誕生したとしても、自らの性認識については、男性として認識しています。その上で、性愛の対象を女性ではなく男性を指向する人のことを「FtMゲイ」と言います。
2−3−4 「FtX」
「FtM」ではありませんが、生物学的には女性として生まれてきて、その後、自らの性認識を男性とも女性とも断定したくない人のことを指します。自分はある時は男性的だし、またあるときは女性的に感じるのが自然だ、もしくは、常に男性とも女性とも言えない・思えないという認識だ、という人々が、「FtX」に当てはまります。
2−4 「FtM」における戸籍変更
「MtF」の場合と同様に、「FtM」においても、医師の指導のもと性転換手術などを受けた場合、戸籍の変更が可能です。その場合、法律上の戸籍変更の要件は、「MtF」のときと同様に以下のとおりです。
1.20歳以上
2.現状、婚姻していない
3.現状、未成年の子供がいない
4.生殖腺がない、又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態となっている
5.他の性別の性器に係る部分に、近似する外観を備えている
留意が必要な点としては、「FtM」の場合、50歳くらいで閉経しますが、閉経していることを婦人科で証明してもらえれば、上記4の要件に該当するようです。また5の要件に関しては、「FtM」の場合、男性ホルモンを注射すると、クリトリスが男性器のように突出してきます。大きさに関しては条件はないので、それで満たすことになります。
3−1 「MtF」と「FtM」についてのまとめ
ここまで、「MtF」と「FtM」について、色々と情報を整理してきました。最後にそれぞれのポイントについてまとめておきます。
3−2 「MtF」のまとめ:
◯「MtF」とは、戸籍上、男性という割当をされているが、その後、女性として生きることを指向している人のことを指す。
◯女性を指向するからといって、必ずしも男性が恋愛対象とは限らない。「MtFレズビアン」というカテゴリも存在する。
◯治療方法には、ホルモン注射、豊胸手術、性別適合手術などがある。
◯「MtF」の中にも、「MtFTG」、「MtFTS」、「MtFビアン(レズビアン)」といったカテゴリがあり、身体と心の男性への一致を希望する度合いによって、様々なカテゴリに分類される。
◯性転換手術(睾丸の摘出等)を受けた場合、診断書その他の必要書類を家庭裁判所に提出することにより、戸籍の変更を行うことができる。
3−3 「FtM」のまとめ:
◯「FtM」とは、生まれたときには、戸籍上、女性という割当をされているが、その後、男性として生きることを指向している人をさす。
◯男性を指向するからといって、必ずしも女性が恋愛対象とは限らない。「FtMゲイ」というカテゴリも存在する。
◯治療方法には、ホルモン注射、乳腺摘出手術、性別適合手術などがある。
◯「FtM」の中にも、「FtMTG」、「FtMTS」、「FrMゲイ」といったカテゴリがあり、身体と心の女性への一致を希望する度合いによって、様々なカテゴリに分類される。
◯性転換手術を受けた場合(ただし、閉経でも可能な場合あり)、診断書その他必要書類を家庭裁判所に提出することにより、戸籍の変更を行うことができる。
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