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「ツイステッドワンダーランド」の繋げ方の上手さ

「ツイステッドワンダーランド」の繋げ方の上手さ


ツイステッドワンダーランドという乙女向けソーシャルゲームを御存じだろうか。

 

簡単に言えばディズニーヴィランをモチーフにした学園ストーリーで、黒執事の柩やながキャラクターデザインとシナリオ両方を担当している。

今年初めはまだそこまででもなかったが、夏頃から人気に火が付いて先月(9月)の売り上げは総額25億円を記録した。これはあんスタやA3、アイナナを抜いてダントツトップである。

Twitterやpixivでも爆発人気で、鬼滅の次に台頭したコンテンツとして主に女性層に熱狂的に支持されている……が、男性ファンもいる。そういうと腐男子?と思われる人も多そうだが、このゲーム普通に面白い。乙女ゲームというよりガンガンやジャンプの努力・友情・勝利な王道少年漫画要素が盛り込まれているので、男性陣も然程抵抗なくプレイできそうだ。

長々前置きしといてなんだが私はツイステをプレイしてない。理由はスマホの容量的に無理なのと多重課金バグが怖いから。

なのでもっぱらYouTubeのストーリーまとめ動画を見て楽しんでいる。ここ数年(十年?)腐女子オタクとしてのハマり方が変化して、1人のキャラにぞっこん惚れ倒すのではなく、「この話上手いなー面白いなーこの子いいなーかわいいなー」になった。

キャラクター1人あたりに最大級注いでいた熱量がやや変わったというか、俯瞰的な距離感ができた。悪く言えば冷めた。よく言えば落ち着いた。

なのでツイステも誰か1人がめちゃくちゃ好き、というわけではない。ビジュアルではトレイが好みだが、そんな私はアイナナでは二階堂大和が好きだ。二階堂大和好きはトレイ・クローバーにハマる法則を提唱したい。

話は逸れたが、実際プレイもしてないのに何故動画サイトで本ストーリーのみならず個々のパーソナルストーリーまで追っているのかというと、単純にキャラクターが魅力的でシナリオが面白い。

第一印象と中身のギャップがありすぎてじわじわ沼るキャラクター同士のコミカルな掛け合いやキレッキレのセリフ(五章では「顔が可愛いからって頭の中身まで可愛くする必要ないのよ」がツボった)、そしてモデルとなるディズニーヴィランたちを大胆にアレンジしながらも核たる部分は譲らず相乗効果でダークな魅力が爆発するコンプレックス拗らせオーバープロット……

端的に言って面白い。

ツイステに関しては好き、という感情より面白い、楽しいが先にきてる節がある。

たとえば第一印象ではプライド高めの真面目な秀才に見えた一人称「僕」の少年が、バリバリ峠越えや喧嘩でブイブイ鳴らしていたが高校デビューで優等生をめざす母子家庭の孝行息子だったり、クールで高飛車なインテリ眼鏡に見えた青年がドジでノロマな元いじめられっ子で、いじめっ子を見返す為にめちゃくちゃな努力を積み上げていたりする。

他にもパッと見ヒロイン枠の女の子とまがうかわいこちゃんが田舎の農家育ちでじいちゃんばあちゃん想いのド根性方言男子で素の一人称は「俺」とか、頑固一徹コワモテ軍人系従者が主人大好きでニコニコ家事をするキュートな善人だったりする。

この手のエグいギャップ萌えに事欠かず、20人近くいる登場人ほぼ物全員にあてはまる。詰めこみすぎ尖らせすぎ性癖のエレクトロニカルパレードである。

だがなんといっても「上手い!」と唸ったのはパーソナルストーリーの繋げ方やキャラの絡ませ方である。

知らない人に説明すると、パーソナルストーリーとは個々のキャラクターにちなんだ個人ストーリーである。

ツイステには寮服・運動着・実験着・式典服の描きおろしイラストがあり、それにちなんだショートストーリーが全キャラに用意されているのだが、これがただそのキャラクターが主役ってだけの話じゃない

ツイステには現在19人のメインキャラクターがいる。ストーリーに登場したりガチャで引けるタイプ別イケメンが19人である。そういうと多いが、FGOは三桁である。

他のソシャゲにしたって新章ごとに複数新キャラが実装されるので、全部数えたら余裕で三桁になる作品も少なくない。

だが今のところツイステは19人。去年のゲーム開始から1人も増えてない。これを覚えていてほしい。

それだとすぐ飽きるんじゃ?とか、新キャラいないなんてツマらないって思う人がいるかもしれないが違うのだ。

ツイステのパーソナルストーリーが提示したのは、新しいソーシャルゲームの在り方だ。同種のゲームの可能性を広げたといってもいい。

というのも、ツイステのパーソナルストーリーでは基本そのキャラクターの視点で進行するのだが、そこに既存のキャラクターが思いがけぬ形で絡んでくる。

私はメインは19人といったが、この19人はそれぞれに接点がある。

寮が一緒、部活が一緒、合同授業でペアを組む、さらには散歩中にばったりや小遣い稼ぎに仕事を頼まれる食堂で席が隣り合ったなんてものから、購買部のセールで洗剤が買えずしょんぼりしてたから荷物持ちにする代わりにそのキャラの分まで買ってやった、なんてハプニングまである。

FGOでも特定のキャラクターのストーリーに親しいキャラが友情出演したり、話同士がリンクすることはあったが、良くも悪くもあちらは大所帯すぎる。100人以上キャラがいるのだ、そうそう自分の推しの出番は回ってこない。どうかすると数年単位で忘れ去られて放置プレイされる。

私はFGOのジキル・ハイドが好きだった。それこそ二次創作を書いてしまうくらいに。だが彼はもう数年単位で出番がない、最後にでてきたのは一部の終章だ。寂しい。へこむ。哀しい。

新章や新しいイベントがはじまるたび今度こそはひょっとして……と淡い期待をしては裏切られるのにすっかり疲れてしまいFGOからめっきり足が遠ざかった。

もちろん一部の前半初登場だろうが出まくるキャラはいる。ジャンヌオルタとか信長とかアビゲイルとか、一部三章のキャラならモーさんとか。で、まっっったく出番がなくなってしまったキャラのファンにはそれが不公平で、ともすると贔屓に映る。

仕方ない。むこうは三桁だ。100人以上がひしめく戦場だ。その中でも人気のあるキャラや運営が使いやすいキャラクターはいるだろうし色々扱いが偏るのは無理もない。

だが寂しい。不満だ。もっと私の推しをだせ。

ツイステはそれがない。19人という少数精鋭に絞り込んだために、誰かのパーソナルストーリーに必ず推しがでてくるのだ。

それもセリフ二言三言のちょい役じゃない、キーパーソンとしてガッツリ絡む。それで話が広がる。

某キャラの部活の先輩が推しだった、某キャラが夜食を作ってる時に夜の校舎を散歩するのが趣味の推しと出くわし、ちゃっかり山菜レシピを教えてもらうなど、その絡みのバリエイションもすごくて、出てくるたびに推しの意外な嗜好や性癖や新しい素顔に出会える。

めちゃくちゃ楽しい。

そうだよこういうのだよ求めていたのは。

なんでもただ増やせばいいってもんじゃない、ファンが見たいのはむしろ1人1人の掘り下げ、今大好きなキャラクターをもっと好きになれるエピソードや、推しと推しが絡んで推しが増える供給だ。

しかもツイステの場合、このパーソナルストーリー同士の繋げ方が憎い。ある人物のパーソナルストーリーで「体育の授業なのに運動着を持ってない」と提示されると、別のキャラクターのストーリーでその「持ってない理由」が、そのキャラが廊下を歩いててうっかり飲み物をぶっかけちゃったからだと明かされる。

即ち、プレイヤーが自分でエピソードを集め、パズルのように繋ぎ合わせていく楽しみがあるのだ。

そうすることで初めて「そうか、これが起!」「ここが転か」「あのキャラがトラブルに見舞われた時、このキャラは裏でフォローしてたのね」とわかってくるのだが、これがすっっごくわくわくする。

いずれも癖の強いキャラクターばかりなのだが、パーソナルストーリーの中で意外な素顔がちらっと明かされるとぐっと興味が引き付けられるし、推しのエピソードの中じゃけっしてでしゃばらず、なおかつ推しを立てるナイスアシストやサポートをしてくれるのだからどうしたって愛着わかずにいられない。

数を増やさなくたって話はいくらでも面白くできる。

要は見せ方と繋げ方だ。プレイヤーは馬鹿じゃないので、「匂わせ」程度にパーソナルストーリー中でチラ見せしても、自発的に断片を回収して全体を補完してくれる。むしろそっちのほうが「推しがでてくるパーソナルストーリーコンプするぞ!」とガチャに躍起になってくれる。

今までありそうでなかった、他のゲームがやってこなかった斬新さ。

ぶっちゃけソシャゲに疎いので同様の事をすでにしてるゲームがあったら恥ずかしいのだが、少なくとも私にはすごく新鮮だった。痒いところに手が届く感、イイ……!

もちろんこの先何年も続けば新キャラも増えていくだろうが、今のペースや1人1人の掘り下げ方は、推しにどっぷり沼りたいユーザーの心理をよくわかっていると感心した。


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漫画小説アニメ映画海外ドラマが好きな腐女子です。