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ドラえもんに学ぶ「マネーゲームの本質」。

ドラえもんに学ぶ「マネーゲームの本質」。


ドラえもん第27巻に収録された「しあわせトランプの恐怖」というエピソードをご紹介したいと思います。

これは時に「マネーゲームの本質は壮大なるババ抜き」であると語られる事象の構図をそのままトランプに例える事でわかりやすく解説した傑作でもあります。

さて、ある日のび太の部屋に置いてあった謎の新品のトランプ・カード。

これを使って「しずかちゃんとババ抜きをしたいな」とウキウキするのび太の前に突然しずかちゃんが来訪。そのまま至福の時間を過ごしますが、なにやらゲーム終了時にトランプのカードが一枚無くなっていた事に気づきます。

ゲームを終えてしずかちゃんと入れ替わりにドラえもんが部屋に帰宅。そこで驚愕の事実が判明します。

それはこのしあわせトランプの持ち主はカードを一枚消費するごとに自身の願いを一つ叶える事が出来ること。

そしてその代償に52枚全て使い切ったら最後に残ったジョーカーの効力によってそれまでの埋め合わせによる不運が束になって襲いかかってくるという大変恐ろしい効果を宿したひみつ道具だったのです。

このドラえもんの忠告に恐れをなしたのび太は急いでこのカードをスネ夫に譲り渡します。

しかしこのスネ夫という少年は小学生ながら慧眼の持ち主でした。

  • スネ夫「まだ50枚もあるんだよ。早いとこのぞみをかなえさせて、だれかにやればいいんだ。」

得意の狡猾さを活かした損得計算でスネ夫はちゃちゃっと望みを叶えてそれをジャイアンに譲渡する華麗なる損切りでこのリスクを見事に回避しました。そしてスネ夫から同様の入れ知恵を受けたジャイアンも・・・

  • ジャイアン「ようするに金がありゃいいんだ。」

ジャイアンもカードを一枚消費して大金を手に入れる程度で売り抜けしてこのトランプをまた別の人間に横流しします。

このように大きな幸運と最悪の不幸の源泉は表裏一体の関係にあります。

そして、このゲームの参加者の間でジョーカーという不幸のリスクを押し付け合う壮大なババ抜きが始まりました。

しあわせトランプを消費して個々の欲望を叶えていくゲームの参加者達。ところがその光景を見たのび太は「手放すタイミングが早計すぎた」と欲に目がくらんだ事でトランプを取り戻そうとします。

そして必死こいてトランプを取り戻した時には既に遅し。ジョーカー含めて残り二枚という惨状でした。こうしたのび太の一連の行動は「ジャンピングキャッチ 」と呼ばれるものに近いと解釈できるでしょう。これによってパニックに陥ったのび太。思案している中でのび太を叱ろうとしていたママの怒りを鎮めるためにラスト一枚を消費してしまう有り様。

この時点で壮大なるババ抜きの敗者はのび太に確定してしまいました。

そして早速ジョーカーの効力によって不幸なひったくり被害に遭うのび太

しかし、先にも記したように大きな幸運と最悪の不幸の源泉は表裏一体です。このひったくり犯がジョーカーのカードを盗んでしまった事で不幸のリスクを一身に背負って警察に逮捕される思わぬ結末を迎えてしまうのでした。


このようにマネーゲームの目的は自身の利得を最大限に拡大して、振りかかるリスクを最小限にする為にそれを他人に押し付ける。そのプロセスを参加者間で延々と繰り返す事が「マネーゲームの本質は壮大なるババ抜き」と言われる所以でもあります。同時にのび太とひったくり犯が「ババを何故引き当ててしまったのか」という理由も言外から読み取る事ができます。

それはマネーゲームで真っ先に退場するのは目先の欲や先行きのリスクをコントロール出来ない人間から餌食になって行くからです。

のび太が目先の欲とリスク計算が出来なかったのは言わずもがな。このひったくり犯も目先の金銭と警察のお世話になるリスクを秤に掛けなかった事でこのような末路を迎えたという解釈もできるでしょう。

本作はたった11ページの原稿で複雑怪奇なマネーゲームの構図をシンプルに説明しきった恐るべしエピソードでした。

コマ引用:「ドラえもん第27巻 しあわせトランプの恐怖」|藤子・F・不二雄作


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