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ドラえもんに学ぶ「複利の脅威」

ドラえもんに学ぶ「複利の脅威」


ドラえもん」30巻に収録された「フエール銀行の巻」

このエピソードはたった9ページ足らずで複利効果が生み出す陰陽両極を簡潔に描き切ったドラえもんの原作の中でも傑作とされるお話の一つです。放蕩にかまけて貴重なお小遣いをすり減らして所持金10円となったのび太。そんな彼はいつも通りドラえもんのひみつ道具を使ってこの難局を凌ごうとします。のび太の願い通りにドラえもんが取り出した道具がこの「フエール銀行」。

この道具は一時間ごとに発生する10%の複利効果。すなわち「時利」によって一時間が経過する度に元本の10円が10%増しに膨らんでいく複利効果を宿した秘密道具だったのです。ドラえもんの説明でこの複利効果の脅威を思い知ったのび太は即座に残金の10円をこのフエール銀行に預け入れます。しかし、預け入れによって手持ちのキャッシュが0円になったのび太の元に新しいプラモデルを買いたいという物欲が彼へ押し寄せます。

  • 銀行の預入利子率は1時間10% 貸出利子率は1時間20%

大事な所なのでもう一度言います。

  • 銀行の預入利子率は1時間10% 貸出利子率は1時間20%

このメカニズムを軽視したのび太の意志決定は複利に潜む大きな落とし穴へ陥没する運命へと誘っていきます。結局物欲に負けてしまったのび太。彼は銀行からの貸出機能で5000円を融資して欲しかったプラモデルを購入してしまいますが、不思議な事に一時間経つごとに自分の所持品が自動的に消えていく事に気が付きます。

  • フエール銀行にはまさかの自動差し押さえ機能が備え付けられていました。

この場合のび太は銀行から5000円借りたのですから、一時間経過すれば利子2割につき6000円・・・二時間経過すれば7200円・・・三時間経過すれば8640円と時間が経過するごとにその借金は一介の小学生には返済不能なレベルへと膨らんでいく一方です。最終的にのび太は借金の返済に失敗して文字通りに身包みを剥がされて「裸一貫」の一コマで物語は幕を下ろします。藤子先生は複利を使った資産運用のメリットと利息に紐づけられた借金のリスクをこの一本のエピソードで見事に描き切っているのです。


かの天才物理学者「アルベルト・アインシュタイン」は生前に以下のような名言を遺していました。

  • 「複利は人類による最大の発明だ。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う」

この名言を本作のエピソードに照らし合わせると、「複利で稼ぐ人=フエール銀行」「利息を払う人=のび太」という構図で整理できると思います。それは貸出の利率が預入利率の二倍の数字に設定されていた点を含めていても明らかでしょう。

虎視眈々と複利で稼ぐ側に回ろうとしても、実は利息を払わされている側に回っていたという状況が一番恐ろしかったりします。その上でのび太が何事もなく10円(※:表計算上の単位は1円に設定)を一年間預け入れたままだとどのレベルに膨らんでいたのかという計算結果を最後にご紹介したいと思います。

フエール銀行 より引用

 

あぁ・・・なんということでしょう。

バイバイン」がシャレにならないレベルで預けたお金が膨らんでしまいました。ここまで膨らんでしまうと最早何の意味もありません。

仮にこのレベルであれば、途中であの手この手で無理やり途中解約できたとしても、フエール銀行で増やしたお金の一部を市中で行使しただけでジンバブエのケースとは比較にもならないハイパーインフレが発動して一発で経済破綻を引き起こしてしまいます。

大人にとっても重要な知識の正負両面を子供向けに端的に説明してくれるドラえもんはやはり偉大ですね。

コマ引用:藤子・F・不二雄『ドラえもん』(30巻)「フエール銀行の巻」 (てんとう虫コミックス) 小学館


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