ボイストレーナーへの道のり ② 裏声で歌いまくる
ボイストレーナーへの道のり ② 裏声で歌いまくる
ボクの中・高校時代はカラオケ文化がまだ浸透していませんでした。
カラオケ自体はありましたが、当時はスナックやバーなどお酒の席での娯楽でした。
中高生のボクがカラオケを歌えるような場所(カラオケボックス)は少なくとも自分の住んでる町にはありませんでした。
中高生のボクがカラオケを歌えるような場所(カラオケボックス)は少なくとも自分の住んでる町にはありませんでした。
中学3年生の音楽との出会い以来、音楽がとても好きになったボクは、Journey、Chicago、TOTOなどをラジオやCDを録音したカセットテープに合わせて、毎日歌っていました。
どのバンドも高音のボーカルが特徴ですが、サビの盛り上がるところだけでなく、Aメロの低いところもすべて裏声をメインにして歌っていました。
(ここでの「地声」「裏声」は、専門的な分類ではなく、一般的な意味合いのものです)
その頃のボクは『裏声で歌っている』という意識は全くなく、高い声を地声で出すという考えもまるでありませんでした。
ただただ、「曲や歌と一体になりたい!」と無意識に感じていました。
聞こえてくるギターのリフやドラムのフィルも歌うし、歌い手の息づかいや表情も夢中でコピーしていました。
音色が似ていること(地声っぽい声ということ)はボクにとって大切なことではありませんでした。
ボクにとって一番重要なことは、その音楽の衝動を感じ取り一体となることでした。
なぜこのタイミングでこの声を出すのか、
ドラムのフィルがなぜここで、このパターンなのか、
ギターソロのフレーズの選び方、
シンセの音色など、、、、
その音楽に散りばめられている音の存在意義(衝動)を感じ、それと一体となることで、ミュージシャンの気持ちと同化し、ギターやドラムや歌を裏声で歌っていたのです。
音色的に似た声を出したいと思ったことは一度もありません。
ただ同じパッションを感じていたいと思っていました。
そして、それに辿り着くこと(アーティストの気持ちと同化すること)で感動し、涙し、日常では味わえない感覚を感じていました。
最近は何か特別なことが出来ることがスゴイとされていると感じます。
超高い声、
ノイズ発声、
超早い歌詞、
超跳躍する音程を正確に歌う、
男性なのに女性みたいな声で歌う(両声類)、
などです。
確かにそれらが出来るなんてとてもスゴイですが、表現される内容はむしろ引っ込んでしまうように思います。
あまりにも辛すぎるカレーは、味が分かりにくいのと同じです。
人の心を驚きで動かすのではなく、発する側と受け取る側との間で誠実な心の交流が築いてゆけるような表現や文化が、もっと広まっていってほしいと願っています。
超高い声、
ノイズ発声、
超早い歌詞、
超跳躍する音程を正確に歌う、
男性なのに女性みたいな声で歌う(両声類)、
などです。
確かにそれらが出来るなんてとてもスゴイですが、表現される内容はむしろ引っ込んでしまうように思います。
あまりにも辛すぎるカレーは、味が分かりにくいのと同じです。
人の心を驚きで動かすのではなく、発する側と受け取る側との間で誠実な心の交流が築いてゆけるような表現や文化が、もっと広まっていってほしいと願っています。
女性ボーカルの歌を歌うとき、ボクは女性のような声色で歌うべきでしょうか?
ギターのかっこいい曲をピアノで演奏する時に、ギターの音色に似せてピアノを演奏すべきでしょうか?
真似るのは音楽の感動であって、音声波形や倍音成分ではないのです。
(もちろんボイストレーニングにおいては、音色を真似ることは意味のあることです。ここでは昔の僕である「ボク」が自分の中で『音楽に対する感性』を大きく成長させる体験として書いています。)
そんなわけで、自分の中では世界的なアーティストと一体になっていた(つもりの)ボクは、裏声で歌っているにもかかわらず、彼らと同等の歌が歌えると感じていました。
『とりあえず日本ではボクが一番歌がうまい』
恥ずかしながら、ボクは当時、漠然とそんな風に思っていました汗
久保田利伸さんが世に出てきた時に、
「ようやく自分と同じくらいのレベルの人が出てきた」
(ギリギリ自分の方が上と……笑)
とライブもカラオケもしたことのない高校生のボクは思っていました。
高校生になってR&Bにも傾倒していたボクにとって、久保田利伸さんは密かなライバルでした^^;
普通に考えて随分と「イタイ」人だったと思いますが、当時は真剣に思っていました。
実は今でも若干似たように思っているところがあります。
ただ当時と違うのは、プロの世界であれこれ経験して来たので、良くも悪くも賢くなってしまったというところです。
とにかく、自分にとってこの裏声で歌ってる時期が、今の自分にとても大切な時期だったことは間違いありません。
特に、練習のためにストイックにするのではなく、純粋に楽しんでやっていたことが大きいです。
音楽に限らず色んな分野で「見た目は派手だけど中味はあまり感じない」ということがあると思います。
失敗ではないもの
世の中で良いとされているもの
売れそうなもの
人から非難されないもの
……こういったものに対するセンサーが発達して、自分はどうしたいのか/自分の気持ちはどうか、ということにどんどん鈍感になっている気がします。
ボイスラボでは表現力を上げるために、
・単なる声マネではなくアーティストの気持ちをマネてみること
・裏声で歌ってみること
などをお勧めしています。
ぜひ一度試してみて下さい。
ボイストレーナーへの道のり ③ に続く
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