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あっぱれ!野菜の花

あっぱれ!野菜の花


残り物には…?

とある晩春の夕刻。
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人の人間が、冷蔵庫の片隅でひっそりと息をひそめていたキャベツをすべて使い切るべく、刻みに刻んでおりました。残り物だからトウがたっているのをできる限りおいしく見せようと、無心で細かい千切りにし、芯だけにしてやったぜ、と達成感を覚えかけたその時。

芯から、小さ~く枝分かれした、新芽のような葉を見つけました。

この葉も刻んでやるべきか。いやしかし、葉っぱのサイズはわずか1㎝弱。芯と比べてフレッシュな黄緑色をしており、切り刻むには惜しい気がしました。とはいえそのままゴミとしてポイする気にもなれず、何の気なしに、何も生えていないプランターの上に、その芯を置いてみたのがきっかけです。

トウの立ったキャベツの芯から生えた新芽は、土の上に置かれたその日から破竹の勢いで根を伸ばし、なんともきれいな黄色の花を咲かせてくれたのです。

すごい。生命としてシンプルにすごい。

 キャベツの花

食べ物⇔植物 を軽やかに行き来

畑に植えられていた植物時代のキャベツを考えてみましょう。日々農家の方が手塩にかけて水や肥料をやり、害虫から守ってくれたおかげで、キャベツはりっぱな一巻きになりました。きっと誇らしかったはずです。しかしながらある日、植物としてのキャベツの命は根本から刈り取られることであっけなく終焉を迎えました。そこから彼女の、野菜としての人生が始まります。

他のキャベツたちと一緒に荷台に積み込まれ、市場に向かい、そこからお店へと移動して、商品として買われたことにより、キャベツは筆者の家の野菜室にやってきました。なにがしかの料理に使われながら、まん丸だったその姿は少しずつ欠けて行き、あやうく1/4サイズでしなびかけていたのにも関わらず、一縷の望みを小さな新芽に託して、野菜室の片隅で生きながらえていたのです。

結果として今、君は再び花を咲かせている。植物に返り咲いたキャベツの葉っぱは、ところどころ虫に食われ、お世辞にも野菜として美味しそうとは思えません。しかし、生きています。見事に生きています。「生きたい!」と、野菜室の隅から願い続けていたキャベツの思いが今、こんなに朗らかに咲き誇っていることを、虫たちも祝福しながら食い散らかしているに違いありません。

同様の経緯でチンゲン菜も、元気いっぱいに育っています。どうやら花の季節を過ぎ、種らしきものができてきました。これはひょっとすると、来年あたりはチンゲン菜がたくさん収穫できるのでは?とワクワクしてきます。そのためには、農家さんに引けを取らないくらいのこまめなお世話と地道な努力が必要なことはうすうす感じていますが。

 チンゲン菜の種

果物だって負けてない!

レモンの実から取った種を何気なく土に埋めてみたところ、これまた律儀にまいた種の数だけ、可愛い苗が生えてきました。せまい植木鉢の中で何本もの苗がひしめきあってしまったので、泣く泣く間引きをした結果、小さいながらも立派な木となり、すくすく成長しています。ちなみに筆者は、アゲハ蝶が大の苦手です。柑橘系の木にはアゲハ蝶が大喜びでやってくるそうで、日に日に大きくなるレモンの木の成長を見守りながら、戦々恐々としています。

 レモンの木

 

あなたの食卓を彩る野菜や果物も、(当たり前ですが)元を正せば大地に根を張る植物です。もし、食べ頃を過ぎてしまったとしたら、ぜひとも捨てる前に、起死回生のリカバリーを試みてみてはいかがでしょうか。食べ物としては再生しなくても、植物としてなら、目を見張るような復活を遂げてくれるかもしれません。


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フリーランスのモノ書きです。

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