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野菜の花が思うこと

野菜の花が思うこと


「山田さん、すてきなお庭ですね。ユリがいろとりどりでとってもきれい。ねぇリカ」

「今年は出来が良くて、香りもいいの。あら、リカちゃん、そのピンクのハイビスカスが気に入った?」

「うん。すごくきれい」

「じゃぁ、少し切ってあげるから、持って帰りなさいな」

表の庭から聞こえたそれらの声を聞いて、ナスが言いました。

「また、表の庭のお花たちがきれいとほめられているわね」

ここは、山田さんの家の裏庭の小さな畑です。

ナスやキュウリやゴーヤ、ベニインゲンなど野菜にもちょうど花がさいたころ。

隣同士に植えられていて、仲良しのナスとキュウリが口をとがらかせて言います。

「私たちも花盛りなのにね」

「ちっともきれいってほめられないわね」

紅花インゲンが後につづきます。

「わたしたちは小ぶりで目だたないかもしれないけれど、オクラさんなんか大きくて本当にきれいなのに。ハイビスカスさんにだって負けていないわ」

「ありがとう。でも、紅花インゲンさんだって、他のみんなだってきれいよ。それに、色だってむらさきや黄色や赤、白とカラフルよね。どうして、私たちはきれいといわれないのかしら?」

そういってオクラさんは首をかしげました。

「そりゃさ」

ゴーヤが口をはさみました。

「私たちは、野菜を実らせるためにあるからじゃない?花よりだんごみたいな感じよ」

不満を口にしていた者たちが、黙りました。

「表の庭の花たちは、人間でいうアイドルみたいなものなのよ」

キュウリがしゅんとして、つぶやきました。

「そうかもしれない。でも、私たちだってきれいに咲いているのに」

他の野菜の花たちも、悲しくなって下を向きました。

さっきまで、きじょうに話していたゴーヤもみんなの様子を見て、下を向いてしまっています。

山田さんのご主人が、裏庭へやってきました。

奥さんの声が追いかけます。

「あなた、外は暑いから、まず麦茶で水分補給をしてくださいな」

「ありがとう。今年は、全ての野菜がよい出来になりそうだ」

「まぁ、良かったわ。野菜が取れたらいっぱいおいしいものをつくりますからね」

「そうだな。ナスの浅漬けにゴーヤーチャンプルーに、納豆にオクラを入れて。あぁ、楽しみだな」

野菜の花たちは、がっかりしました。

「やっぱり花よりだんごなのね」

山田さんのご主人がにっこりして奥さんを見て言います。

「いやぁ、いまさらだけれど、お前と結婚できてよかったよ」

「まぁ、なんですか、急に。もっときれいな人がよかったのではありません?」

「いやいや。お前を他の人が見ても気にも留めないかもしれないが、俺は一目見てお前の目だたないながらも凛としたところに惹かれたんだ。しかも、料理上手ときたもんだ。花とだんごを両方手に入れたよ、あはははは」

山田さんの奥さんの頬が、少し赤くなりました。

「きゃあああ!」

野菜の花たちは、拍手喝さい。

一気に裏庭が明るくなりました。

キュウリがふるふると花をふるわせ、弾んだ声を出しました。

「聞いた?なんて幸せな会話なの!まるで自分がほめられたみたい」

ナスも、嬉しさをかくしません。

「そうよ。奥さんは私たちと同じだわ!」

おとなしい紅花インゲンも興奮しています。

「私たちは『花よりだんご』ではなくて『花もだんごも』ね!」

「ハイビスカスを好きなリカちゃんだって、アイドルに憧れるのではなくて、あんがいの我が家の奥さんみたいになりたいと思うかもしれないわ」

と、ゴーヤはうんうんとひとり納得しています。

「そうね。私たちは自分に自信を持ってきれいに咲きほこり、りっぱに実をつけましょう」

オクラは、そう言って花びらをすっとのばしました。

そうして野菜の花たちはみんな満足して、力強く輝く太陽に顔をむけたのでした。

 

おわり

あとがき
以前、ねぎがネギ坊主になっていて花を咲かせていたのを見て「きれいだな~」と思ったことがきっかけとなり、この童話が生まれました。
その時今まで野菜の花を野菜を付けるためのものとしてしか見ていなかった自分に気づいて反省して(笑)それからは野菜のお花にも「かわいいね」「きれいね」と言うようにしたのです。

私はふとした日常を童話にすることが好きです。
何気ない日常の中ににたくさんたくさん宝物があり、日常こそ幸せだと思うからです。(もちろんファンタジーも大好きですが)
いつか童話作家になれたらいいなと思っています。
応援してくださったら嬉しいです!!
宜しくお願いいたします!


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童話作家を目指している40代です。ゆったりと穏やかに、文章を綴っていきたいです。

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