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1月、せんせい日記。〔後編〕〔教員の働かせ放題〕

1月、せんせい日記。〔後編〕〔教員の働かせ放題〕



今回のテーマは、教員の働かせ放題と揶揄される「給特法」についても解説しています。
前編の続きですが、大学入試に向けた取り組みを通して1月の先生の多忙感と充実感について、日記風に紹介します。

記事の内容は、いくつかの事例を参照してまとめた、フィクションですが、
今回は、僕のココロの友の一人である 太田実 のエッセイを、本人の許可を得て、今の僕が少し体裁を整えています。


この記事の後半に解説があります。高校の教員や、先生を目指す方や、教育に興味のある方にお届けします。



北海道高校教育学習会通信「1月、せんせい日記。〔後編〕」
(太田 実)


1月15日(晴れ)

共通テスト初日。
会場入り口には他校の先生たちも応援に集まっていた。

さすがに「パンの耳」を持っている教員集団は私たちだけであろう。


休みの日にもかかわらず、みんな7時半に集合した。

結束力のある学年団で、本当に心地よい。

この学年団もあと2か月で解散となるのが、とても寂しい。

冬晴れの中、生徒たちに「パンの耳」を贈ると、
大爆笑で会場に入っていた。

リラックスもできたし、昨日の集会の話を思い出してくれたことだろう。

なんと無事にユースケも会場入り。

昨日に引き続き、高校生活を全うしようと頑張るユースケの姿に感動した。

受験生とほぼ全員会うことができたので、会場近くの蕎麦屋で学年団のみんなで昼食。

13時半に解散した。 

〔勤務時間:勤務とは考えていない〕



1月17日(雪)

8時出勤。
今日から家庭学習期間。
3年生は基本的に登校しない。

だけど、共通テストの自己採点会があるので、クラスの8割くらいが、9時には登校していた。

共通テストの模範解答と、各予備校に送る調査用紙を配布して、自己採点をさせる。

3年の担任をしていて、この時間が毎回緊張する。


生徒たちの一喜一憂がひしひしと伝わってきた。


泣き出す生徒、


無言で帰ってしまう生徒、


ガッツポーズを取って喜んでいる生徒、


一人一人のドラマがある。
担任として、どの言葉を選んで、生徒一人一人に伝えるか、毎回悩む。

結果は結果。

次の入試に向けて、気持ちを切り替えることができるかが大事。

正論だけれど、
自己採点の結果が予想以上に悪い生徒には、

伝わらない。

10時半過ぎには、全員の自己採点が終わった。
調査用紙を進路室に届けて、発送準備を終えてから教室に戻る。

何となく教室に残っていたエータと話す。
共通テストの結果が悪かったようで、
志望校を北大から変更しようか迷いだしたとのこと。

受験の話だけではなく、部活の思い出話など、雑談をして13時に解散。

生徒の不安な気持ちは、話を聞くことで解決できる。

来週は今年度最後の二者面談週間をするし、
国公立大の出願について、もう少し情報を集めることにする。

昼食後、授業の演習問題の予習。
6時間目、2年3組の授業。

放課後、部活に少しだけ顔を出す。
文化部の文集作りについて指示を出した。

16時に、各高校の共通テストの自己採点結果の速報が、■■■専用ホームページにアップロードされていた。

今年の共通テストは、全体的に難化傾向のようだ。
これならエータも闘えそう。

16時半から、共通テストの速報を元に、学年会議。
各クラスから数名ピックアップして、志望校の検討を行う。

今回のアカギ学年は志望校検討会の多さが特徴的だ。

生徒一人一人の目配り、心配りは全学年のなかでピカイチ。


その分、会議の時間が長くなるのは仕方がない。

会議後、共通テストの自己採点が目標よりも大きく下回った生徒の家庭に連絡して、明日以降の三者懇談を希望するか確認した。


18時半、三者懇談を希望する家庭向けの資料作成。
19時40退勤。

吹雪いていた。

〔勤務時間:11時間10分 休憩:30分〕



〔cc.くつひもの解説〕

今回の記事は、前編の続きですが、
教員の働き方、
について確認します。

進学校の高校3年の担任の先生にとって、
1月は大学入学共通テストが最大の山場ですね。

生徒一人一人と直接向き合うため、時間がいくら合っても足りないです。
忙しさが極限まで高まります。
でも、同じくらい、教員としての満足度も急激に高まるため、実はさほど辛くはないですよね。


反面、燃え尽き症候群のリスクも高まります。

担任業務、
授業や講習などの教科業務、
部活指導、
進路指導部のような分掌業務

休憩を削ったり、
超過勤務を常態化することで業務を回していませんか。


それでも、都市部の大規模校は教員数も多く、まだ分業できているほうです。

地方の小規模校は、分業しにくく、生徒数が少ないものの、業務量は都市部と変わらないか、多いくらいです。


ところで・・・

昭和46年に制定された、

「国立の義務教育諸学校等の教諭等に対する教職調整額の支給等に関する特別措置法(「給特法」)」

という法律を知っていますか。(2021年に改正されたことを知っていますか。)

端的に言えば、この法律、教員には時間外勤務手当(いわゆる残業代)は、

一律月給の4パーセント

と定められています。

この理由は、他の地方公務員と違って、

「修学旅行や遠足など、学校外の教育活動がある」

「家庭訪問や学校外の自己研修」

「夏休み等の長期の学校休業期間がある」

など、「勤務時間の管理が困難であること」が挙げられています。

2021年の改正で、
「一年単位の変形労働時間制の適用」
「業務量の適切な管理等に関する指針の策定」
が主な改定で、残業時間は、年間360時間を上限に定められました。



で、4パーセントの根拠は?


4パーセントの根拠は、
昭和41年度に文部省が実施した「教員勤務状況調査」の結果です。

この調査によると、

超過勤務時間の1週間平均は、
小学校で1時間20分
中学校で2時間30分
1週間の平均1時間48分

日本教職員組合の調査によると、2021年の実態調査の結果、

平日の残業時間は1日の平均2時間54分
1カ月に換算すると96時間44分

昭和46年は1週間で平均1時間48分だった残業時間が、
令和3年は、1日の平均2時間54分の残業時間。

ちなみに、
平日の1日の勤務時間は
中学校が11時間14分
小学校が10時間32分
高校が9時間58分
特別支援学校は9時間38分

調査方法が異なるため、単純な比較は難しいと思いますが、
とにかく現代の教員は忙しいと言えそうです。

ただ、今も、
「生徒のために」という使命感から、
教員は残業とは思わず、働いています。

仕事が楽しいことは、何よりです。


教員の働かせ放題、と揶揄される給特法でもありますが、
先生としてのやり甲斐と、
自分の健康や、自分の家族との時間など、

あなた自身が働き方について、見直すことも必要ですね。

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うたう教育系キャリアコンサルタント。
10代から教育業界に携わり、塾、私立高校、公立高校の先生を経て、今に至っています。先生の愚痴を聞いたり、子どもたちの悩みを聞いたりして、ココロが少し軽くなるような、道標のような生き方をしています。00年代に路上ライブをしていたこともあり、今は弾き語り配信中。(あと、ライター業も少々)

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