1月、せんせい日記。〔前編〕
1月、せんせい日記。〔前編〕
今回のテーマは、大学入試に向けた取り組みを通して1月の先生の多忙感と充実感について、日記風に紹介します。本文が長くなるので、前編・後編に分けて記事にしています。
記事の内容は、いくつかの事例を参照してまとめた、フィクションですが、今回は、僕のココロの友の一人である 太田実 のエッセイを、本人の許可を得て、今の僕が少し体裁を整えています。
この記事の後半に解説があります。高校の教員や、先生を目指す方や、教育に興味のある方にお届けします。
北海道高校教育学習会通信「1月、せんせい日記。〔前編〕」
(太田 実)
1月4日(曇り時々雪)
今日から仕事始め。時々、雪がちらついていた。
いつも通りに8時に出勤。
今日は3年生の共通テスト対策と部活指導。
3年生の共通テストまで、あと11日しかない。
私のクラスの生徒たちも朝早くから登校して、講習の準備などで自習していた。
全員の志望校合格を切に願う。
教室に掲示してある、みんなの合格祈願の絵馬通りに受かって欲しいものだ。
9時に共通テスト対策の問題解説を90分、2コマやって休憩。
昼食は愛妻弁当。
年始からありがたい。
昼からは文化部の指導。
13時から17時まで。
今週末の大会に間に合うのだろうか。
生徒たちの準備不足が気になるので、少しずつ手助けをすることにした。
文化部の生徒たちも、私に似てマイペースだからな。
3年の元部長、エータが心配なのか講習後に少しだけ部室に顔を出していた。
北大志望なんだから、まずは自分の心配をすれば良いものを。
うん、本当に後輩の面倒見がよい部長になった。
17時から18時半まで、明日の講習の予習。
2コマ分の予習はなかなかキツい。
復習用の類題を探すのに手間取った。
その後、30分ほど進路室で部長と打合せ。
帰りがけに私の教室の机整理と簡易清掃、窓の戸締まり確認をして、19時18分退勤。
〔勤務時間:10時間18分 休憩:60分〕
1月7日(雪)
朝から雪が降り続いていた。今日で冬季講習の共通テスト対策講習は終了。
来週からは、共通テスト直前予想問題演習になる。
共通テストまでラストスパート。
みんなには、気持ちを切らずに頑張ってほしい。
8時出勤。
教室を見に行くと、既に10人ほど来てて自習していた。
朝早くから自習する姿は、本当に尊敬する。
昔の私と比べると、今の生徒たちは本当によく頑張れる。
9時からの講習も、最後のコマなので、30分以上延長してしまった。
さすがに12時45分までノンストップで講習すると、私もキツい。
それでも、
「先生、ここ教えて」
とクラスのエースが講習後も質問に来ていた。
こういうのが、嬉しい。
教え甲斐があるから、もう一踏ん張りしよう、という気持ちになる。
質問に答えていたら、13時半を過ぎてしまった。
文化部の部員たちは、自主的に活動を始めていた。
明日から大会だし、ようやく切羽詰まっているようだ。
少し安心。
部活動は、活動限界の18時55分で終了。
あともう少しで完成できるのだが、下校時間を守らないと、教頭がうるさい。
生徒の安全のためには仕方ないが、
私の勤務時間にも気を遣って欲しいものだ。
19時過ぎに、進路室で、2年生の勉強合宿について、進路指導部と2学年団で最終確認。
昼ご飯を食べる暇が無かった。
ぐーっ、会議中に腹が鳴る。
その後、職員室で、2学年の先生たちと合宿のテキストを丁合。
明日は、文化部の生徒引率で朝6時半に駅に集合なのだが。
まあ、こういうときの手伝いは、なかなか断れないものだ。
お互いに助け合うのが良い職場。
いつも通り、私の教室の簡易清掃や、窓の戸締まりの確認をして、21時11分退勤。
〔勤務時間:13時間11分 休憩:なし〕
1月14日(晴れ時々雪)
7時40分出勤。朝会後、学年の打合せで、今日の学年集会の話す順番を決めた。
明日から共通テストが始まるので、決起集会。
推薦やAO入試で進学が既に決まっている生徒もいるので、
「受験は団体戦。みんなで協力していこう」
という方針だけは守って、あとはアドリブで話すことになった。
8時30分。
教室に入り、朝のSHR。
来週から家庭学習期間に入るので、次に全員が集まるのは、卒業式の前日までない。
この生徒たちと過ごす時間も、
あとわずか、
と実感した。
嬉しいことに、今日は全員登校。
ユースケも来たし、ミクも来た。
何度も家庭訪問して、
何度も保護者と面談をし、
保健室や病院とも連携して、
ここまでたどり着いた二人がそろって出席している。
出席日数がぎりぎりだけれども、全員が卒業式を迎えられそうだ。
本当に嬉しい朝だった。
1時間目の学年集会は、私がトップバッターで話すことになった。
学年主任のアカギ先生、いつもの無茶振り。
生徒たちも慣れている。
アカギ先生のノリの良さが、この学年の強みだよなあ。
学年集会の一体感が生まれるところは、アカギ先生の司会の巧さのおかげ。
緩いところと、ぴりりと引き締めるバランスがすごい。
私も、もっと話し上手になりたい。
学年集会の最後は、進路指導部長のありがたいことば。
トヨシマ先生は、部長職が長い。
本当に話が上手。
私の心にも響く。
きっと生徒たちは、明日からの共通テストで、
最善を尽くして頑張ってくれることだろう。
2時間目のLHR。
来週からの家庭学習期間の注意事項と、卒業式前日の持ち物などを連絡。
3年生は、これで下校。
他の学年は授業があるので、3年生のみ完全下校。
3時間目は
出席簿の記入、
出欠記録表へのデータ入力、
ユースケとミクの保護者の携帯電話へ連絡。
全員登校できた嬉しさと、保護者の協力にお礼を伝えた。
残りの時間で、授業に使うプリントを印刷。
4時間目、2年2組の授業。
5時間目、2年3組の授業。
6時間目、空きコマ。教材研究に当てる。
放課後、文化部の指導。
16時半から3学年の会議。
明日の共通テストの応援に何をプレゼントするか議論した。
例年、受験生に「キットカット」を贈るのだが、
今年は少しひねりたい、
という学年団で話した。
議論の結果、1間目のトヨシマ先生の話の中で出てきた、
パンの耳
を贈ることに。
17時に、1組のサクラ先生と、2組のジョウシマ先生が、近所のパン屋さんにパンの耳を買いに行った。
それから、みんなで、調理室で袋詰め。
この教員の団結力は、アカギ先生の学年経営のたまものかもしれない。
19時から、学級通信作り。
生徒向けの記事と保護者向けの記事を入れつつ、
今日のありがたい話、
卒業式までのスケジュール、
を書いてA4用紙2枚にまとめる。
22時半に両面印刷を始めて、封筒に詰めて発送準備が終わったのが23時50分。
終電がなくなる直前に退勤。
夕食を食べるのを忘れていた。
〔勤務時間:15時間10分 休憩:60分〕
〔cc.くつひもの解説〕
今回は、進学校を舞台にした担任の先生の仕事が描かれています。進学校では、多くの生徒が大学共通テスト(旧 大学入試センター試験)にチャレンジします。
受験は団体戦、
という言葉をよく使いますが、担任の先生としては、やはり生徒ひとりひとりと向き合ってください。
集団の力も大切ですし、その生徒の進路実現に向けて、
細やかな目配り、気配り、心配りが大切です。
受験期は進学について、不安から、気持ちが不安定になって、学校を休みがちになる生徒が見受けられます。
卒業に必要な、出席日数や授業の出席率(欠課時数の管理)も担任として、気をつけるポイントです。
長期欠席傾向(いわゆる不登校傾向)が見られる生徒も、
無事に卒業し、
つぎの進路に進める。
そうなるよう、3年生の担任は、遅くとも夏休み前から保護者との連絡を定期的にとったり、クラスの状況を学級通信で伝えたり、短いスパンでの情報提供を意識してください。
休みがちな生徒は「サボっている生徒」だけとは限らず、保護者も子どもとどのように接すれば良いか、困っていることが多いです。
保護者との、定期的に取ることで、「学校でできる対応」と「家庭でできる対応」が整理できるようになります。
大学進学を考える場合は、入試までのスケジュールから逆算して、いつまでに、何をするのか、学年団の目線合わせと、生徒たちへの情報提供が欠かせません。
なによりも、
長期欠席傾向が見られる生徒も、
そうでない生徒も、進路実現に向かうには、
学年内で、
生徒について気軽に話せる同僚性が、
進路実現には一番大事です。
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