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昭和なスナックの日常3

昭和なスナックの日常3


小説風 本当にあったお話
ある夜のとあるスナックでの出来事。
 
そこは昭和な雰囲気のスナック。
レトロ感漂う店内。
お客が15、6人も入れば満席になる。
そんな店内に今夜もお客がやってきた。
 
今夜もいつものように扉が開く。
カラン、カランと音がする。
そしていつものようにママが声を掛ける。

ママ
「いらっしゃいませ」

常連のスナックのマスター
「ママ、こんばんは」
「今夜はうちの常連さんを連れてきてやったよ」

ママはこの言葉に、ムムムと思ったが笑顔で迎える。

常連のマスターの後から入ってきたのは背は高く年齢は定年は迎えているであろうと思われる男性だった。
「昭和なスナックの日常2」で登場した常連のスナックのマスターのお店の常連さんのようだ。
なんか、ややこしいな。
このマスターとは、自分でスナックを経営している人で、ママを雇っているので気ままに飲み歩いている優雅な人生を送っている人のこと。
マーさんとしよう。

ママとしては、連れてきていただけるのはありがたいのだが、頼んだわけではないから、恩着せがましく言われるのは心は穏やかではない。
自分のお店がいっぱいだから連れてきてやったとのこと。

さて、そのお客の呼び名をどうしようか、ゆうさんにしよう。
呼び名に意味はない、ただ思い付いたから。

今回はこのゆうさんが主役。

常連のマスターことマーさんと語りながら飲んでいると、そこへゆうさんより20は若い男性が二人連れでやってきた。

その二人は月に一度くらいの割合でやってくる五人の仲間の内のふたりだった。
コロナ禍でこれなくなり久しぶりにやってきた二人だった。

食事をした後に寄ったとのことで、飲みながらカラオケを楽しもうとやってきた。

ゆうさんは、初めてのお店なのに、その二人連れに話しかけた。
二人は、気遣いができる優しい二人で、話を合わせそれなりに話し相手になった。
その日のゆうさんは、電車の時間があるとかで、先に帰ったのだがその時、その若い二人の勘定も一緒に済ませてくれた。
お勘定を済ませてくれたことをゆうさんが帰った後に聞いた二人は、とても恐縮してしまったようだった。

それからしばらくしたある夜、ゆうさんとマーさんが二人でがやってきた日にたまたま、あの若い男性がまた五人の中のひとりとやってきた。
二人連れであるが、今回はゆうさんを知らない人がひとりいるが、もうひとりは、ご馳走になっていたことのお礼を直ぐ様伝えた。
そのときのゆうさんは、「おごってやったのが俺と気づかれなかったら、そのままでいいよ」と、ママに言っていた。

それを聞いたときは、男前と思ったが、飲んでいくうちに、酔いもまわってきて男前はどこかへいってしまった。

若い二人が楽しそうに話している中へ、割り込んで話し始めたゆうさんだった。
マーさんはそれを見ているだけで何もしない。

話の途中で若い男性の片方が電話が入ったからと、外へ出た。
そして、その後にママもスマホを持ちながら外へ出た。
珍しいこともあるものだと思っていた。
ママが外へ行くのが珍しかった。
いつもなら、奥に引っ込んで電話に出るから。

そして数分後、若い二人連れはその片方の家族からの電話で帰ることになったと言って、さっさと帰って行った。

そのときの素早さはすごかった。
ゆうさんが、話している最中にも関わらず、さっさとお勘定を済ますママ。
話の途中であろうゆうさんにはお構い無しに、ママが言う。
「ありがとうねえ、気をつけてね」
そう言うとママは、さっさとふたりを送り出した。

ゆうさんは気分よく連れのマーさんの隣に戻ってきて、自慢を始めた。
「俺が前回おごってやったんだ、あの二人、今日もおごってやったよ」
ママはそれを聞いて、一瞬不機嫌そうな顔をしたが、ゆうさんにもマーさんにもわからないように直ぐに笑顔になっていた。

ママ
「そうでしたね。ふたりとも感謝してましたよ。ありがとうございますって今日もお礼を言ってましたでしょう。」
今回はビールをおごってやっていた。
おごってやってるのだから、俺の話を聞けくらいの話っぷりだった。

あの若い二人連れの男性はもうしばらく来ないだろうなあ。
ママの嘆く声が聞こえてきそう。

あの若い男性の家族からの電話は嘘だった。
ゆうさんの話を聞くのに耐えられなかったから、外からママに電話して相談したようだ。
ママは、ごめんなさいと謝り、直ぐに帰ることを勧めた。

なぜ帰りたくなったかと言うと、ゆうさんの自慢話に耐えられなかったそうだ。
いかに自分が人から頼られていて、何十人も頼って来る後輩がいて、いつもおごってやっているのだという話を永遠と聞かされていた。
いくらなんでも、ビール一本で長々とそんな話を聞かされてもそれは、たまらんというもの。

これは呑兵衛にはよくある話で、あるある。
飲むと大風呂敷を敷く人も多い。
実際に常識ある人もお酒がススムとこうなる人もいる。
お酒を飲まないときに人望がいくらあっても、お酒で台無しになる人もいる。
それをわかっている酒飲みは少ない。

残念なことだが、本人に知らせる人はほとんどいないだろう。
いたとしても本人は信じないだろうから。
いや、俺は慕われているのだと言い切るから。
そんな人を沢山見てきた。

お酒の力は偉大だ。
善くも悪くも、人間の本性を知らしめてくれる。

今夜の話はいかがでしたか?

非日常が日常のスナックでの一夜の出来事を面白く小説風に描いていきます。

よろしかったら、「昭和なスナックの日常」の常連さんになりませんか?
 
~今回はここまで~
   2022年5月26日木曜日
      ライター:唯李












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唯李(ゆり)と申します。
stand.fmでオリジナル小説を朗読しています。
小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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