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昭和なスナックの日常6

昭和なスナックの日常6


小説風 本当にあったお話
ある夜のとあるスナックでの出来事。
 
そこは昭和な雰囲気のスナック。
レトロ感漂う店内。
お客が15、6人も入れば満席になる。
そんな店内に今夜もお客がやってきた。
 
今夜もいつものように扉が開く。
カラン、カランと音がする。

そしていつものようにママが声を掛ける。
ママ
「いらっしゃいませ」

あや
「ママ、こんばんは」

ママ
「あやちゃん、いらっしゃい」

あや
「今夜は居酒屋で食事してきたの、そうしたら、隣で飲んでた人がここへ行きたいって言うから、お連れしたの」

ママ
「あら、そうなの、ようこそ、いらっしゃいませ、はい、おしぼり」

そう言うとママはいつものようにおしぼりを渡す。

あやは、話しかけられると相手の人には丁寧に返事は返すほうではあるが、相手の名前とか顔とか覚える気はないらしい。

今回もそんな感じで連れては来たが、適当に相づちを打つくらいで真剣に話を聴いているわけではなかった。
あやは、どうせ酔っぱらっているし覚えていないだろうからと、あまり親身にならないことにしている。
ましてや初めて話した居酒屋で隣にいたくらいの相手に、労力を使う気にならないらしい。
そこはママも心得ている。

その日、あやが連れてきた男性はそこでもかなり飲んでいた。
ママはお客のことを詮索しない。
だから、お客も気楽に楽しめる。
だが、ママとしては客商売だから、無銭飲食だけは避けたい。
初めてのお客は少し神経を使う。
あやが連れくる客で悪い客はいないが、たまにこうして見ず知らずの人を連れてくる。

ママは、当たり障りのない話をして相手がきちんと支払えるのかを確認する。
何気なく相手の状況を判断する。

こんなに慎重なママでも、何度か散々飲食して逃げられたことがある。
忙しいときに限ってそういう客がやってくる。
思い出しても腹が立つと嘆いていたことがあった。

あまり調子の良いことばかり言って、じゃんじゃん飲み食いをしていると、途中でママは、大丈夫なのかを確認をする。

心配な客には、そろそろお勘定するねといって、金額を提示する。

若い客にはこれをすることがある。
金額の設定が居酒屋と違うから、最初に金額の説明をし、どれだけ出せるのかを聞くときもある。
その金額になったら、おしまいの合図を送ってくれる。

酔っぱらって羽目を外すと、お金が足りなくなったり、時間になっても帰らない客がたまにいる。
ママにもなると、客の対応は手慣れたものだが、お客様あっての商売だから、お金の支払いは、シビアになるがスマートに対応している。

ママはあやに言う。
ママ
「あやちゃん、連れてきてくれるのはありがたいんだけど、素性がわからない
人と一緒にくるのは止めときなさい」
そうママに諭されていた。
ママはあやのことを心配している。

あやはそうしますと反省している様子だった。

ママ
「それにあやちゃんは、今日のお客さんの名前も顔も次きたとに覚えていないでしょう、相手の人がお気の毒だわ」
そうママは少し笑いながら、あやに笑顔を向けた。

あやはそんなことはないと真顔で返事していたが、そうなのだから仕方がない。

先日その男性が既にお店に来ていて、あやがその後やってきたときのことだった。
その男性が軽く会釈してきたので、同じように会釈して離れた席に座った。

ママがその男性とあやに話し掛ける。
ママ
「初めましての挨拶みたいにしているけど、違いますからね、あやちゃんがお連れしたお客さんですよ」

二人とも、イヤイヤ、初めましてですと、挨拶した。

やっぱりねとママは笑った。
あなたもですかと、男性にも呆れてまた笑った。
男性もあやも隣の客もみんなが笑う。

笑い声が響いて楽しい一夜が始まった。


今夜の話はいかがでしたか?
 
非日常が日常のスナックでの一夜の出来事を面白く小説風に描いていきます。
 
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~今回はここまで~
 
   2022年5月29日日曜日
 
      ライター:唯李







 

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唯李(ゆり)と申します。
stand.fmでオリジナル小説を朗読しています。
小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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