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昭和なスナックの日常7

昭和なスナックの日常7


小説風 本当にあったお話
ある夜のとあるスナックでの出来事。
 
そこは昭和な雰囲気のスナック。
レトロ感漂う店内。
お客が15、6人も入れば満席になる。
そんな店内に今夜もお客がやってきた。
 
今夜もいつものように扉が開く。
カラン、カランと音がする。
そしていつものようにママが声を掛ける。

ママ
「いらっしゃいませ」

すーさん
「…」

ママ
「すーさん、こんばんは、今夜はご機嫌よいみたいね」
そう言いながら、おしぼりを渡す。
挨拶はなくても、顔が嬉しそう。

「そう見える?、今日はパチンコに勝ったからね。」
そう言うと嬉しそうにいくら勝ったとか、あれこれ語り始めた。

独身で独り暮らしの人は、嬉しいことがあると喋りたいわけで、そんなとき笑顔で聴いてくれるスナックのママは、親戚か身近な知り合いのような話し相手になる。

たまにやってくるすーさんは、自分では歌が上手いと思っている。
今日は上機嫌で歌い始めた。

ところが、その上機嫌がガラッと変わってしまった。
最近カラオケの機材が故障して長年使ってきたものから新しいものに変わったばかりだった。
変わったせいなのか、調子が悪いのか知らないが、点数があまり良くなかった。
いつもなら、90点以上出るのに出ないのはおかしいと嘆く。

レパートリーを幾つか歌ったが、どれもこれまでよりも点数が低いと文句を言っている。

他のお客さんはどうかというと、今までよりも点数が良い人もいるし、すーさんみたいに悪くなった人もいる。
ママがこっそり言う。
今までのは、誤魔化しが効いていたけど、これは効かないみたいね。

カラオケの点数で一喜一憂するのは、日本はなんて幸せなんでしょう。
ママが静かに言う。
ママ
「今日もウクライナのニュース見て泣けてきたわ」
そう言うとママは、話を世界情勢に変えた。
すーさんは、なんだか愚痴を言いにくくなったようで、すんなり大人しくなった。
あの勢いは、壁を殴るのではないかとヒヤヒヤした。
さすがママ。
さっさと今回もお帰りいただくのかと思ったが、大人しくなったのでほっとしてまた楽しい話題に切り替えたママだった。
乱暴な人ではないけど、お酒が入ると豹変する人もいるので、たまにしかこない人は、予測が難しい。

飲んべえの皆さん、
周りに迷惑をかけない飲み方できてますか?

一度聞いてみるとよいと想いますよ。
素面のときにね。
だめですよ、酔っぱらってから聞いても無駄です。
覚えていないのですから。

コロナ禍でお客は減ったけど、独身の人の拠り所である昭和なスナックは健在。

ママは、お母さんになったり、親戚のおばさんになったり、たまには先生になったり、相手に合わせて七変化できるスーパーウーマン。
歌を歌わせば、それ誰の歌?と思うような古い歌から、あいみょんや、若い人の曲も歌う。
もちろんデュエット曲もレパートリーはたくさんある。
お客は楽しかったと、また来るねと家路につく。

今夜の話はいかがでしたか?
 
非日常が日常のスナックでの一夜の出来事を面白く小説風に描いていきます。
 
よろしかったら、「昭和なスナックの日常」の常連さんになりませんか?
 
 
~今回はここまで~
 
   2022年5月30日月曜日
      ライター:唯李











 

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唯李(ゆり)と申します。
stand.fmでオリジナル小説を朗読しています。
小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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