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昭和なスナックの日常8

昭和なスナックの日常8


小説風 本当にあったお話
ある夜のとあるスナックでの出来事。
 
そこは昭和な雰囲気のスナック。
レトロ感漂う店内。
お客が15、6人も入れば満席になる。
そんな店内に今夜もお客がやってきた。
 
今夜もいつものように扉が開く。
カラン、カランと音がする。
そしていつものようにママが声を掛ける。

ママ
「いらっしゃいませ」

老紳士
「やあ、久しぶりだね」

ママ
「あら、お珍しいですね、はい、いらっしゃいませ」
と、いつものようにおしぼりを渡す。

ママとは古い付き合いのようだ。
先代のママのときからお客で、数年ぶりにご来店とのこと。
結構なお年を召していらっしゃる。
葉巻に火をつけ、ゆっくり煙を燻らせる。
ステキな紳士。

お酒も控えめに、カラオケをするでもなく、ただ周りのおしゃべりを聴いているだけ。
ときよりママが話し掛けるとそれに答える。
嬉しそうに話している。
言葉数も少なく、ゆっくり話す感じが謎めいて興味をそそる。

しばらくすると、ママにお勘定をと言い、「それじゃ」と言って帰ろうとした。
ママ
「またいらしてくださいね」と声を掛けると、その男性は、にっこりと笑って、

老紳士
「そうですね、これたらよいですが、もうこれが最後かもね」と、少し寂しそうに右手を軽く上げて、じゃっと、扉の向こうへ、行ってしまった。

ママ
「ありがとうございました。お気をつけて」と、ママが声を掛けたが、ママの声が寂しく置き去りにされた感じがした。

あれからその老紳士を見かけない。
ママの話によると、90歳を超えているそうで、お元気そうで良かったわとあの後話していた。
とても気っ風がよく、優しい人だったと懐かしそうに話していた。

人生の終盤に、思い出していただける人であるのは幸せ者といえる。
双方にとってよき日になったことだろう。

水商売をしていると色々な人と巡り合い、その人の人生を垣間見ることがある。
波瀾万丈の人生だけど、だからこそ、
出会いに感謝しているとママは言う。

今夜の話はいかがでしたか?
 
非日常が日常のスナックでの一夜の出来事を面白く小説風に描いていきます。
 
よろしかったら、「昭和なスナックの日常」の常連さんになりませんか?
 
 
~今回はここまで~
 
   2022年5月31日火曜日
 
      ライター:唯李





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唯李(ゆり)と申します。
stand.fmでオリジナル小説を朗読しています。
小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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