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昭和なスナックの日常20

昭和なスナックの日常20


小説風 本当にあったお話
ある夜のとあるスナックでの出来事。
 
そこは昭和な雰囲気のスナック。
レトロ感漂う店内。
お客が15、6人も入れば満席になる。
そんな店内に今夜もお客がやってきた。
 
今夜もいつものように扉が開く。
カラン、カランと音がする。
そしていつものようにママが声を掛ける。

ママ
「いらっしゃいませ」

今夜は常連さんが数人楽しげに語らっていた。

話題は、ママが以前働いていたお店のお客とのやり取りだった。

そのお店は駅前にあり、若い女性を数人雇っているちょっと人気のスナックだった。

今はどこにあったのかさえわからない。駅前は開発が進んで新しいビルが建ち並んでいるため昔の面影はない。

そんな昔の話をお客との会話を再現して話しているママだった。

ママはそのときは、当然ママではないので、名前で呼ばれていた。

今回は、よっちゃんにしよう。
そのお店のママさんが、いつもの常連さんがこられたので、誰かつくように言う。
すると誰もつきたがらない。
押し付けられていつもよっちゃんがつくことになる。
よっちゃんが働くようになって間もないときの話だった。

よっちゃん
「社長さん、初めまして、よっちゃんと呼んでくださいね」
と、おずおずとお客の前で挨拶する。

するとその客は、怒鳴った。
「おまえ、俺の名前を知らないのか」
と。
よっちゃんは知らなかった。

失礼を詫びた。
そしてその後、席につこうとすると、またその客がよっちゃんに言う。

お客
「俺がどこの組か知ってるのか、言ってみろ」
と、怒鳴って言う。

よっちゃんは、知らなかった。
だから、自分の知っている、有名な建設会社の名前を2つ言ってみた。

そしたら、そのお客は激怒して、
「ふざけるな」と、
グラスに注いであったお酒をよっちゃんの顔にぶっかけた。

よっちゃんにしてみたら、地元でもないし、そんな組の人のことなんて知らないし、名前なんて尚更知らない。

以前は関西にいて、営業があの有名な組があるエリアで仕事していたから、それならわかるけど、違ったらこまるから、言えなかったと、あの頃を振り返って話してくれた。

その日は、それで収まったけど、よく来るので、いつもよっちゃんが押し付けられてつくことになる。

ママが言う。
「あんなふうに、お酒を顔に掛けられた光景を目の当たりにしたら、怖いでしょ、誰も行かないから、私が結局つくことになるのよ、それを一週間も続けたらね、お客の方が根負けした感じだったかな」
と、懐かしそうに話した。

お客
「おまえは、チビでブスだな」
とか、
「他にいないのか、おまえもよくくるなあ、他におまえよりかわいい女(こ)は、いないのか」
とか、毎日罵声を浴びせていたが、一週間もすると、
「おまえもこりんやつだなあ」
と、なったそうだ。

ママはいつもそのお客につくときは、
「チビでブスのよっちゃんです、宜しくお願いします」
と言っていたと笑いながら話した。

ちなみにママは身長は低いけど、決してブスではない。
年齢よりもかなり若く見られる可愛らしい女性。
あの客は長身で美人をご所望だったのかもしれないが、そんな都合よくその客につけるわけにはいかない。
結局のところ、ママがついたことでそのお店は丸く収まっていた。
お客のあしらい方が、さすが営業をやってきたという感じだったのかもしれない。

過去は流石に覗き見できないから、残念。
今のママから想像すると頷けるだろう。

昼間の仕事もあり、夜のバイトではあったけど、夜に出逢う人との関係性は、昼間とは違って異質なことも普通にあったと話した。

あの客とは、また別のことで一悶着あるのだが、それはまた別の機会にでも。

今回はいかがでしたか?
 
非日常が日常のスナックでの一夜の出来事を面白く小説風に描いていきます。
 
よろしかったら、「昭和なスナックの日常」の常連さんになりませんか?
 
 
~今回はここまで~
 
   2022年6月19日日曜日
 
      ライター:唯李
 
 
 








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唯李(ゆり)と申します。
stand.fmでオリジナル小説を朗読しています。
小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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