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脚本~恋人たちの涙のあとに~

脚本~恋人たちの涙のあとに~


第一章
『夏が忘れていったあの日』
 
~彩花(あやか)の弾き語り~
 曲が流れ始める
 
~涼太(りょうた)のひとりごと~
『俺は呆然と立ち尽くし、彼女を見つめていた。』
 
~彩花が歌い出す~
曲調:切ない恋心を歌った曲
 
ナレーション
『涼太はしばらく聞き惚れていた。』
 
~歌が終わり、曲だけが流れる~
 
ナレーション
『涼太28歳。大学を卒業してそれなりに稼ぎ、彼女もできた。その彼女、真理(まり)と結婚を前提に付き合う決心をして、今日これから彼女に告白するつもりだった。』
 
~涼太のひとりごと~
『俺がバカだった。俺はまだ彩花のことが好きだ。』
 
~ナレーション
『高校生の時に、涼太が彩花に告白して付き合い始めた。大学生になり、夏休みに入ったある日の午後のことだった。』
 
彩花
「りょうちゃん、私待ってるね。」
 
涼太
「あや、ゴメン…、俺…。」
 
~涼太のひとりごと~
『俺は彼女からの誘いを「ゴメン」のひとことで断った。
それが彼女と話した最後の言葉となった。』
 
~ショックの音が入る~
 
 
~寂しい曲が流れる~
 
~涼太のひとりごと~
『俺は大学に入り、サークルの仲間と遊ぶことに夢中なっていた。
彼女が俺から去るなんて思ってもいなかった。
それでなくても遠距離でなかなか逢えないのに、やっと逢えるという週末を、俺はあろうことか、サークルの仲間と遊び呆けていた。』
 
~曲が終わる~
 
ナレーション
『涼太は、彩花と付き合っていた高校生の頃を思い出していた。』
 
~懐かしい曲、涼太の弾き語り~
~歌が終わり、曲だけが流れる~
 
涼太
「今日は最近覚えたあの曲を歌ってくれる?
俺、一応弾けるようになったからさ。」
 
ナレーション
放課後の教室で、涼太は照れながらギターの練習に彩花を誘ってみた。
 
彩花
「いいよ。でもまだ覚えたてだから、うまくないよ。うふっ」
 
ナレーション
『はにかむ彩花だった。』
 
~涼太のギターに合わせて彩花が歌い始める~
 
~曲が終わる~
 
ナレーション
『突然、歌い終わった彩花の目の前に涼太が立って言った。』
 
涼太
「俺、彩花のことが好きだ。」
 
ナレーション
『涼太は唐突に彩花に告白した。
彩花がビックリしているにも関わらずそのまま続けた。』
 
涼太
「彩花はモテるから、俺なんかじゃつりあわないと思うけど、俺は、彩花のことが好きなんだ。彩花の歌も大好きなんだ。」
 
彩花
「私なんてモテないよー、私の歌を誉めてもらえてすっごく嬉しい。」
「私でよかったら、よろしくお願いします。」
 
ナレーション
『彩花は恥ずかしそうにうつむきながら、涼太を見た。彩花の頬はほんのりピンク色だった。』
 
彩花
「あっ、虹だ。きれーい。」
 
ナレーション
『彩花は恥ずかしさを隠すために、窓から空を見上げた。それを見た涼太はゆっくりと彩花に近づき、そっと肩を並べた。』
 
~彩花の歌声が流れる~
 
ナレーション
『彩花は◯◯◯◯の歌を口ずさみながら涼太の温もりを感じていた。』
 
~涼太のひとりごと~
『彼女はいつも俺の隣で歌ってくれていた。
柔らかな包み込むような彼女の歌声は俺の心を熱くした。』
 
彩花
「りょうちゃん、私、プロを目指すことにしたの。高校を卒業したらオーディションを受けるの。受かったら応援してくれる?」
 
涼太
『あやちゃんなら、きっとプロになれるよ。もちろん、応援する。』
 
ナレーション
『涼太はあの夏の日のことを後悔していた。』
 
涼太
「おかしいなあ、まだ怒っているのかなあ…。」
 
~涼太のひとりごと~
『俺は何事もなかったかのように彼女へ連絡した。
だが、返事はなかった。
俺はいじけているだけだと思って、しばらくほうっておいた。
しかし、返事はなかった。』
 
~不安をあおる音~
 
『俺は電話をかけた。』
 
~電話の呼び出し音~
 
『だが、彼女は出なかった。』
 
~衝撃的なショックな音~
 
~さよならの曲が流れる~
 
ナレーション
『それから数日後スマホが光った。彼女からのメールが届いた。「さようなら」と一言だけ。
涼太は、そのとき初めて事の重大さに気が付いた。』
 
涼太
「俺は、取り返しの付かないことをした。」
 
~ショックで辛くて耐えられないくらいの声で訴える~
 
~曲が終わる~
 
涼太
「俺の夏は終わった。」
~空しく切なく~
 
 
~蝉の鳴き声が空しく聞こえる~
 
~つづく~
 

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唯李(ゆり)と申します。
stand.fmでオリジナル小説を朗読しています。
小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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