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脚本~恋人たちの協奏曲~第三章

脚本~恋人たちの協奏曲~第三章


タイトル【恋人たちの協奏曲】
 
第三章
『恋は不協和音』
 
~静かな曲が流れる~
 
ナレーション
『彩花は病室にいた。病院独特の匂いや音がまだ彩花の記憶に鮮明に残っている。
二年前、この病院で、彩花の母親は息を引き取った。癌が見つかったときには手遅れだった。
あのときの辛さがやっと少し癒えてきたときに、こんなことになるなんてと、彩花は目の前の父親を見つめていた。』
 
彩花
「涼太さん、ありがとう。健太郎さんから、聞いたよ。それで…、出張で戻れないって…。あのとき私、スマホの充電が切れてからすぐに出られなかったの。」
 
涼太
「彩花さん…、あや、大丈夫かい?昨日、健太郎は何度もあやに電話したんだけど、出てもらえなくて、どうしても抜けられない仕事があるからって、俺に連絡してきたんだよ。ごめんな、こんな大事なことを俺なんかでさ。」
 
彩花
「ありがとう、涼太さんのおかげで、今こうしてお父さんのそばにいられる…。」
 
彩花
「あっ、お父さん…。」
 
~曲が終わる~無音になる
 
彩花の父
「あ…や…か、ごめんな…。もうすぐ、オーディションだろ…行きなさい。」
 
彩花
「嫌よ。私、行かない。だから、私をひとりにしないで…。お願いだから…。」
 
ナレーション
『今日はオーディションの日だった。夕べから一睡もせず、父親のそばにいる彩花だった。』
 
彩花の父
「あやか…、お母さんとも話していたんだよ。あやかの花嫁姿は、きれいだろうなあって…。見たかったなあ…。」
 
「み…た…か…た…なあ。」
(消え入りそうな声で、)
 
~ナースコール~呼び出し音~
 
彩花
「お父さん、いや、ダメ、私の花嫁姿みるんでしょう、まだダメだって、ダメだから、…。」
(父親の手を握りしめて、声をふりしぼり、何度も何度も繰り返す彩花だった)
 
涼太
「すぐに来てください。」
 
~人の出入り~ざわつく音~
 
~悲しみの曲が流れる~
 
ナレーション
『交通事故だった。駆けつけたときに、もうダメなことはわかっていた。それでも奇跡が起こることを信じていた。彩花は震えていた。その隣で彩花をしっかり抱き抱えている涼太。
震えている彩花の体を支えながら、彩花を守るのは俺しかいないと、改めて思う涼太だった。』
 
~機械音~ピー
 
 
涼太
「あや、泣いていいよ。ごめんな、こんなことしかできなくて…。」
 
ナレーション
『彩花は、どれくらい涼太に抱き抱えられていたのだろうか。我に返りやっと体を起こした。彩花は時計を見た。』
 
彩花
「オーディション…。」
 
涼太
「ん?オーディション?」
 
彩花
「うん、オーディション、今日だったの…。」
 
涼太
「そう…か…。」
「俺はあやの歌、好きだよ。きっとまたチャンスはあるよ。諦めないで、きっと大丈夫だから、俺、あやを守るから安心して…。ね、絶対にあやをひとりにしないから。」
 
彩花
「ありがとう。」
 
~曲が終わる~
 
ナレーション
『そういうと彩花は、父親のそばに行き、父親が返事をしているかのように、楽しそうに話し始めた。』
 
~静かな曲が流れる~父親との思い出の曲
 
彩花
「お父さん、覚えてる?お父さんとお母さんと彩花と三人で行った旅行、三年前の、ほら、あの旅行覚えてる?楽しかったね。」
(声は楽しそう、でも鼻声で涙を我慢している感じで)
 
彩花
「あのときね、お母さんが、お父さんみたいな人を見つけなさいねって言ったんだよ。だからね、彩花はね、もちろんそうするって言ったら、お母さん、なんて言ったと思う?
お父さんみたいな人、なかなか見つからないと想うけどねって…。…。…。なんで、ふたりともいなくなるの…。」
(泣き笑いくらいの感じで、言った後に号泣)
 
~曲が終わる~
 
~電話の呼び出しの音~
 
涼太
「まり、ごめん、しばらく逢えないかもしれない。高校の同級生のお父さんが亡くなって落ち込んでるから、しばらくそばにいてやりたいんだ。」
 
真理
「そうなんだ。わかった。りょうちゃん、大丈夫?無理しちゃダメだよ。何か手伝うことあれば言ってね。すぐに連絡ちょうだいね。じゃあまたね。」
 
~真理のひとりごと~
『同級生って、誰のことだろう…?この間話してた健太郎さんって人かなあ?久しぶりに会ったって言ってたからきっとそうかも。これでまたデートはお預けね、あーあ、しょうがないか。そう言えば、りょうちゃん、健太郎さんのアパートの名前なんて言ってたかなあ…、うちから近いって言ってた…なんだっけ?…んーまっいいか。』
 
~歩く足音~
 
~涼太のひとりごと~
『俺は彩花のそばにいたいのに、健太郎のやつ、わざわざ呼び出して何の用なんだよ、今更…。』
 
~チャイムの音~
 
不穏な雰囲気の曲が流れる~
 
ナレーション
『健太郎に呼び出された涼太は、健太郎のアパートにいた。彩花の家は、健太郎のアパートから数分の所にあった。健太郎は彩花に聞かれたくなかったから、涼太を自分のアパートへ呼び出していた。健太郎と涼太はテーブルを挟んで向かい合っている。』
 
健太郎
「涼太、彩花のことで色々とありがとな。助かったよ。本当なら俺がやるべきことをすまない。出張が海外じゃなかったら、すぐに帰ってこれたんだけど…。」
(軽く頭を下げる健太郎)
 
涼太
「いや、別に健太郎にお礼を言われることじゃないし、彩花のそばにいるのは、健太郎じゃなくて俺なんだよ。彩花には俺が必要なんだよ」
 (涼太は自信ありげな態度で健太郎を見ている)
 
健太郎
「はあ、涼太…何を言ってるんだ。俺は彩花と付き合っているんだよ。涼太も知ってるだろ。」
(呆れる健太郎は涼太を真正面から見据える)
 
涼太
「今まではそうだったかもしれないけど、これからは俺が彩花を支えていくから。」
(自信ありげな涼太は笑みを浮かべながら、健太郎を見る)
 
健太郎
「それは…、俺が出張でいなかった間だけのことで、今は俺が彼女のそばにいる。」
(呆れながらも、涼太を説得しようとしている)
 
涼太
「もういいよ。これからは俺が彩花のそばにいるからさ。」
(涼太は、健太郎を軽くあしらう感じで言う)
 
健太郎
「涼太、おまえは自分勝手だな。あのとき、彩花の気持ちを踏みにじっておきながら、今更何事もなかったかのように付き合うつもりなのか」
(健太郎は怒りを涼太に向けて、睨み付けている)
 
涼太
「なんのことだよ…。」
 
ナレーション
『健太郎は、涼太と彩花が別れたあの時のことを話した。涼太が彩花をないがしろにしたこと、そしてその後の彩花とのことを。
彩花のために引っ越ししてきてここにいることも。
それを聞いても、涼太は彩花のことを諦められないと言った。』
 
~曲が終わる~
 
~彩花が歌っている~
(曲は懐かしい曲調で)
 
彩花
「この曲は、お母さん、好きって言ってたよね、お父さんも好きだったの?」
 
ナレーション
『彩花は歌いながら、お墓の掃除をしている。母親の命日に健太郎とお墓参りに来ていた。涼太には知らせていなかった。』
 
健太郎
「あや、話がある。お母さんの前でちゃんと伝えたいから、いい?」
 
彩花
「けんちゃん、どうしたの?急に…、いいよ…。」
 
~曲が終わる~
 
~幸せの予感のする曲が流れる~
 
健太郎
「あや、僕はあやが好きだよ。今はお父さんのことがあったから、しばらくはこのままでいようと思っているけど、来年には結婚したいと思ってる。あやも同じ気持ちでいると思っているけど、本心を知りたいから、お母さんの前で、話してくれないかな。」
(健太郎は優しく彩花に話し掛けた)
 
ナレーション
『彩花は、健太郎の気持ちは嬉しかったが、すぐに返事はできなかった。あの日の涼太の言葉が耳に残っていた。』
 
彩花
「けんちゃん、わたし…」
 
~つづく~
 
唯李😊⚜️
2022年9月18日日曜日

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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唯李(ゆり)と申します。
stand.fmでオリジナル小説を朗読しています。
小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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