#3 抱きしめてあげたい5歳の私を
#3 抱きしめてあげたい5歳の私を
私の父は、沸点が低かった。
お酒の癖も、悪かった。
そして、私たち子供を殴る人だった。
物心ついたときには、既に父には殴られていた記憶しかない。
毎日帰ってくる仕事ではなかったかが、帰ってくる日はずっと緊張状態だった。
機嫌は良いのか……
今日もお酒を飲むのだろうか……
きっとそれは、兄もだったと思う。
でも今回は、その日常の中で始まった新たな地獄の事について書こうと思う。
私はまだ幼稚園児で、5歳だったと思う。
私の家の近くには、はとこが住んでいた。
おじいちゃん
おばあちゃん
おじさん
そして、何歳離れてるか定かではないが。
恐らく7歳程離れている、小学6年生くらいのお兄ちゃんがいた。
私と兄は、家も近いこともありそのお兄ちゃんに懐いていた。
よく家にも遊びに行っていたし、沢山面倒を見てくれていたと思う。
母は仕事はしていなかったが、子育てから解放されたかったりするのか「お兄ちゃんの所遊びに行っといで。」と、よく家から出されていた。
その言葉に対して、私と兄は嫌な気持ちは一切なく。
むしろ、お兄ちゃんの家でテレビゲームをするのが楽しみで喜んで出掛けていた。
兄は私の2つ上で、小学1年生だったので。
小学校の友達と遊ぶ日もあり。
そんな時は、私だけでお兄ちゃんの家に遊びに行くこともあった。
きっとあの日も、そういう日だったんだと思う。
なんで、あんな事になったのか……。
その日は、もう夕方だった。
記憶にある空は、綺麗な紅で。
私はお兄ちゃんに連れられ、家から少しだけ離れた倉庫に来ていた。
なぜ、倉庫なのか?
怖い。そんな感情はない。
だって、大好きなお兄ちゃんだったし。
倉庫でどんな遊びをするんだろう?と、ワクワクしていたと思う。
「ここに、寝転がって?」
そう言われて、私は土埃で汚い床に寝転んだ。
何をされていたのか……
あまり、記憶にない。
痛かった。と、思う。
でも、泣き叫ばなかった。
何をしてるか分からないのに。
いけないことをしている気がした。
「あ、スカートについちゃった」
全てが終わった後、私のスカートに付いた白い液体を見て笑うお兄ちゃん。
私は、放心状態だったと思う。
「みんなには、内緒だからね?」
そう言われて、頷いた気がする。
「じゃあ、明日も遊ぼうね」
倉庫を出てそう言われた私は、どう答えたか覚えてない。
一度も後ろを振り返らず、家に帰った気がする。
土埃で汚れた服を、はたきながら。
少しボサボサになった、髪を直しながら。
家に帰ると、友達の家から帰ってきていた兄と母。
「何時だと思ってるの!?」
と、母に怒られて謝った気がする。
あの時の気持ちは、あまり覚えていない。
訳が分かっていなかったから。
ただ、もうお兄ちゃんの所には行きたくない。そう思っていた。
5歳。
私は、処女を失った。
そして、これが地獄の始まり。
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