メイン画像

#5 無垢で無邪気はもうない

#5 無垢で無邪気はもうない




「大丈夫?痛くない?」

「…………うん。」





はとこのお兄ちゃんの部屋。






兄がテレビゲームに夢中になっている背後で、私とはとこのお兄ちゃんはベッドにいた。






隠れているつもり。
隠せているつもり。







顔までスッポリと布団を被り、お兄ちゃんと私は"していた"。






嫌だと、なぜか言えない。
すぐそこにいる兄に、助けを求めれない。






子供なのに……。
子供らしく、騒ぎ・泣き叫ぶことはできなかった。






きっと私は、我慢強かった。
注射も泣かない。
そんな子供だったらしいから。





そんな我慢強さが、裏目に出た。






お兄ちゃんの家に、行きたくない。

行けば、やるしかなくなる。

嫌なのに。





母の機嫌を損ねないため、行くしかない。

だから、お兄ちゃんは私が嫌がってると思ってないんだろう。






でも、僅かな抵抗。

兄が一緒に行く時だけ、行くことにした。

それでも、やるのだけど。





近くに兄がいるだけで、安心感はあった。





兄が小学校の友達と遊ぶ時は、お兄ちゃんの家に行くふりして外で一人で遊んだ。

私が家に残り、母の機嫌を損ねないため。






子供はね、バカじゃないから。

変な事してるって分かってる。

可笑しいことしてるって気づいてる。






大人から見たら、誰が悪いのか明らかなのに。

子供には、それが分からない。

バレたら私も、凄く怒られるんじゃないか?と、ビクビクしてる。

だから、不思議と言えないのだ。





なぜか、自分も悪だと思ってるから。
"助けを求める"という考えに至らないのだ。





嫌だけど。
怒られたくないから言えない。
そう思っているのだ。






決して、お兄ちゃんを庇ってるんじゃない。
自分もしたいから、と同意のもとでやってるんじゃない。





でも、どうしたらいいのか。
分からない。





だから。
分からない子供いるんだよ。





庇ってるわけじゃないけど、言えない子供もいるんだよ。

嫌なのに、助けを求めれない子供もいるんだよ。





その理由は、たった一つの思い込み。

自分も怒られるんじゃないか。

そのたった一つの思い込みで、助けを求めれないのだ。





純粋無垢な私は、自分の意志とは別になくなり。

無邪気な私は、消えた。





中学一年生になったお兄ちゃんは、私の家に来た。

新品の中学の制服を身にまとい、お披露目をしに。





「かっこいー!似合うじゃん!」
と、満面の笑みの母に照れくさそうに笑うお兄ちゃん。


「うんうん!かっこいーね!」
何も知らない母の前で、その時の精一杯の笑顔を貼り付けた私は思っても無いことを言っていたと思う。





顔が痛いと感じる程の笑顔をしながら、私は動悸がしていた。


悪いことがバレる前の子供のように。






だって、私とお兄ちゃんは。
まだ続いてる。

アカウントを作成 して、もっと沢山の記事を読みませんか?


この記事が気に入ったら どうせ私は悪役 さんを応援しませんか?
メッセージを添えてチップを送ることができます。


この記事にコメントをしてみませんか?


うまくできない|甘えるのは苦手|親が毒か私が毒か|正しいは時に間違いだと|だから離れるを選択し|私は元から居なかったと|そう思っていて欲しい|私は今幸せだから

おすすめの記事
2024/03/16 08:37 - Akinu@自作ゲーム、小説、手作りアクセサリー販売
2024/02/7 03:32 - Akinu@自作ゲーム、小説、手作りアクセサリー販売
2024/01/28 24:03 - Akinu@自作ゲーム、小説、手作りアクセサリー販売