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#6 我が家の悪魔

#6 我が家の悪魔



我が家には、悪魔がいる。

それは、私の父である。





私が幼稚園児の時から、夏の時だけ活動する演舞のようなものをやっていた。


袴を着て、カラフルな被り物をし。
私や兄のような小さい子供数人と、大人数人の小さな集まり。






衣装で完全に顔を隠した状態で、お盆には依頼された方のお墓や家の仏壇の前で舞をし。


いくつかのお経を唱えるもの。




それで、私のような子供でも数万円のお給仕が発生していた。

もちろん、それは母にとられるのだが。





夏休み時期になると、その練習が始まる。

私と兄は、この時期が嫌であった。






悪魔が一番、張り切る行事だから。







1年ぶりの練習は、やはりうろ覚え。

1回目はこんなもんだろう。



子供たちの出来に、皆そう言うが。

ひとりだけ、それを許さない。






それが、私達の父だ。

しかし、父はよその子にはなにもしない。

するのは自分の子供だけ。





つまり、私と兄。

直径3cm程の棒を持ってくると、それで私や兄をドスドスと殴る。






お酒も入っている父は、手加減もない。






皆が休憩する中、私と兄だけが延々と踊らされる。






痛い。
痛いし、恥ずかしいのだ。






虐待なんて言葉は、なかった。
なかったとは言え、皆引いてたと思う。






でも、この光景もまた。
毎年の恒例なのだ。






口では皆窘めるも、本心はあまり関わりたく無さそうにいつも遠目で見ている。






なぜ、助けてくれないのだろう?
と、いつも思っていた。






いいな。あの子は。
親にこんな風に怒られてる所、一度も見たことがない。






痛い。助けて。痛い。






皆が皆、そうとは限らないが。
傍からみたら可笑しいその光景も、当事者の私と兄からしたら恥ずかしいしかない。






だって、ちゃんとできないから殴られている。から。

助けを求めたことはない。






でも、思った事はある。

ねえ、そんな可哀想。みたいな顔して見るなら助けてよって。



でも、助けてくれないのを知ってる。
だから、心の底では憎んでた。





練習終わりの度にある打ち上げで、私と兄だけが無表情の中大人達は私たちを笑わそうとしてくる。



私たちが欲しいのは、それじゃない。
悪魔を止めてくれ。
たったそれだけを、望んでいるのに。





打ち上げ中も、気は抜けない。

父に急に名前を呼ばれ、ビクビクしながら父の元に行くと。


なんの前触れもなくビンタをされる。





意味が分からない。
周りの大人も、え?って。





父は言う。
「そんな辛気臭え顔してんじゃねえよ。
皆さんが、気つかってんだろうが!!」





………………なるほど。







私は戻ると、今度は笑顔を貼り付けた。
兄も慌てて笑顔を貼り付けた。





そして、一連の流れをみていた大人たちはまた引いていた。







父に、引いていた。

引き攣った笑顔の私と兄に、引いていた。






父は、母には手をあげなかった。

母は、口で止めはするも体を張って守ることはしてくれなかった。





今で言う、虐待。

それは日常茶飯事で。

父が家に帰ってくる日。

父が会社の飲み会の日。

私と兄は、怯えていた。





怯えて引き攣る顔の私たち。

笑え。と言われたら笑った。

何か話せ。と言われたらベラベラ話し。

うるさい。と言われたら口を閉じた。






どこで父がキレるか分からないから。

一秒前まで笑っていたのに、急にビンタされた事がある。




あの時ほど、意味が分からないことはない。




でも、悪魔はこれだけでは終わらない。

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