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元塾講師が教える 小学校の成績は当てにならない

元塾講師が教える 小学校の成績は当てにならない


以前noteに投稿した記事を再編集したものです。



「小学校の時は成績がよくて、学校のテストもほとんど良い点数だったんですけど、中学校に入ってから成績が悪くなって……」

塾の講師をしていた時に、保護者からよく聞いたのが、この言葉でした。

その場合、私は必ず次のように質問します。

「小学校のテストの平均点は何点ぐらいでした?」

こう聞くと、異口同音に

「だいたい90点ぐらいだと思います」

と返ってきます。

読者の皆さんは、この保護者の回答におかしなところがあると気づけたでしょうか。

大きく3つ。おかしな点があります

その1:だいたい、ぐらい

めちゃくちゃアバウトです。
平均点は、実施されたテストの点数の合計をテスト回数で割った値です。
計算すれば正確な数値が出ます。

それにも関わらず、「だいたい」という回答。
この回答の裏には、我が子の成績に対する保護者のいい加減さが透けて見えます。

その2:教科は?

小学校には算数、国語、理科、社会とあります。
それを全部まとめている時点で、これまたいい加減です。

せめて教科毎に答えてもらいたいもの。
おそらく、そこまで関心がなく、なんとなく不安を抱いて塾を訪れることが多いのでしょう。
本当に我が子の成績のことを心配しているのか?
と疑いたくなります。

その3:90点の意味

小学校で学習する量は非常に少なく、スピードも緩やかです。
それに加えて、学習直後にテストが実施されるがことが多いです。

その平均点は90点強と言われています。

つまり90点とれて普通!それが普通です。
もっと言えば、100点取れないといけないテストなのです!

それを「90点だから=できている」と捉えているとダメなのです。

90点を許容しないことが大事

100点取れて当たり前のテストで90点。
ということは、10%理解できていない可能性があるわけです。

前述したとおり、小学校の学習範囲はとても狭く、進行速度は遅いです。

それを10%積み残していく。
その影響がはっきりと表れるのが中学校に入ってからです。

間違った10%を徹底的に対策して、確実に100点を取れるようにしておかないと、その10%は理解不足や不適切な解き方として残存し続けます。

そして、それを保護者も本人も許容してしまう。
そこが大問題なのです。

10%が広がり始める

中学校に入って初の中間テストは5月に行われます。
当然テスト範囲は狭く、クラブ活動も本格化していなません。
もちろんテスト対策時間も十分に取れます。

果たしてその結果は?

上の例に登場したような90点平均の生徒ならば、だいたい80点平均程度は獲得できます。
5教科合計なら400点前後です。

そして、またもや許してしまうのです。

「初めてのテストだから、こんなものか。次頑張ろう」と。

ここで気づかなければなりません。

20%も理解不足が残存していることを。
ほころびが広がりつつあることを。

1年生最初の中間テストで平均80点を割った場合は、そこから定期テストのたびに徐々に成績が下降します。
そんな生徒は3学期の期末テストでは、70点平均を割ることが多いです。

しかし、徐々に下がるがゆえに、傷口が広がっていることから目をそらします。
生徒は自分を、保護者は我が子を許してしまうのです。

そして誤った認識が植え付けられます。

「これぐらいは許容範囲」
「少し頑張れば挽回できる」

と。

積み重ね教科の恐ろしさ

英語と数学は積み重ねの教科と言われています。
新しく学習する内容は、既習範囲を理解していることが前提です。
つまり、既習内容の理解不足があれば、新単元を理解できないのです。

わかりやすいように、理解度を数字で考えてみましょう。

例えば1年生最後の定期テストで英語が80点だったとします。
この時点で、20%は理解不足や未定着です。
これをきちんと復習して克服しておけば、なんら問題はありません。

もし仮に20%をそのまま放置したとします。
理解度は80%のままです。

その子の理解度のポテンシャルは80%なのです。
それは1年生最後の定期テストで点数として証明されています。
つまり、今まで通り取り組んでいれば、学習内容の80%しか理解できない学習方法と勉強方法をとっているわけです。
そのままだと、2年生になって新単元を学習した時に、新しく学習した内容の80%しか理解できません。
1年生の内容を80%しか理解できていない上に新単元を積み重ねると

0.8 × 0.8 = 0.64

こうなってしまいます。

どこかのタイミングで相応の対策を打たなければ、2年の終わりには64点ぐらいしかとれなくなります。

では、対策を打たずに3年の終わり、つまり受験を迎えるとどうなるでしょうか?

0.64 × 0.8 = 0.512

50点ほどしかとれなくなります。

理科、社会、国語は単元ごとに独立している場合が多いので、定期テストではこの考え方は当てはまりません。あくまで定期テストの場合は。です。

しかし、3年生になると実力テストが複数回実施されます。
そこには、様々な単元の知識が複合的に出題されるため、英語、数学と同じような現象が理科、社会、国語でも起こりやすくなります。

このまま高校に進学すると

高校3年生までずっと理解度80%のままだと、以下のようになります。

高1終了時:0.4096
高2終了時:0.32768
高3終了時:0.262144

これでは、どの大学にも合格できません。26点では無理でしょう。

負を積み重ねた結果、こういうことになりかねないのです。

徐々に下がる点数を許しながら、何の対策も打たずに放置すると…
もっと悪い結果になることもあります。

では、どうすればいいか

いくつか対策はあります。

もっとも単純な方法は塾へ行かせること

集団塾の場合、劇的な効果を望んではいけません。
特に成績が下降し続けている場合は、集団塾はダメです。

集団塾は、年間カリキュラムが決まっています。
そのため、個人への対応はやや疎かになります。
確かに勉強する時間は増えますが、根本的な対策にはなりません。
過去に分かっていなかった部分を放置したまま、次の単元へと進むからです。

一般的な個別指導や家庭教師はどうか

担当講師に依存します。

講師が学生の場合、大した成果は出ないことを覚悟しましょう。
学生講師は、指導すること自体が初めてです。
いわば、素人が教えている状態だからです。

今学習中の単元が理解できない原因は、どこにあるのか?
どこまで遡ればいいのか?
それをどうやって判断するのか?

これらを知らないまま指導しているのが大学生だからです。

プロの個別講師・家庭教師に頼むとどうか

相当の出費が必要です。
しかし、学生講師に指導してもらうよりは成果は出やすくなります。

経験が豊かな人であれば、単元Aが理解できない原因は、単元Bの理解不足かもしれない。
と、簡単に見抜きます。
そして即座にそれを確認します。
想定通り単元Bが理解不足なら、カリキュラムを組みなおしてくれます。

学年が進めば進むほど、遡る範囲は広くなります。
時には小学校の範囲までやり直しをすることもあります。
そんなこと、アルバイトの学生講師に見抜くのは無理ですよね。

カリキュラムが変わると、勉強量を増やすしかありません。
勉強する本人は相当な努力が必要ですし、時間的な制約から、クラブや習い事を途中で辞めなければならないこともあるでしょう。
さらに、より高額の出費が必要になることもあるでしょう。
仕方ありません。受験は待ってくれないのですから。

時間に余裕がないなら、習い事やクラブは即刻辞めることをお勧めします。
習い事やクラブで将来の生計を立てることを本気で考えているなら、即勉強をやめてください。
もちろん両立できるなら、すべて継続しても問題ありません。

ずっと長期にわたり理解不足を許してきたのは、保護者と生徒本人なのです。
それを何とかしたければ、本人も保護者も時間やお金を投じて解決するしかないのです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

小学校の時の90点は、あくまで平均点です。
それを許容して、満足に復習せずに学年だけが進むと、こうなるという話を展開してきました。

確かに極端な例かもしれません。
しかし、非常に多く見られるパターンです。
私は実際にこのような経過をたどる生徒をたくさん見てきました。

根本的対策としては、保護者が「小学校の時の90点」を許さない姿勢を維持し続けることです。

そして、お子さんに、10%を放置するとどうなるかを、きちんと説明して納得させてください。
納得の上で、本人が勉強することを支援してあげてください。
お尻をたたくのではなく、支援してあげてください。

「なぜ勉強するか?」と聞かれた場合は、別途答えが必要ですが、それはまた別の機会に書こうと思います。


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元塾講師です。大阪や奈良の進学塾で講師をしていました。塾の裏側、受験対策、効率的・効果的な勉強方法など、受験生や保護者の方々のお役に立つ記事を書いていきます。

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