医療財源・年金財源とされているものも軍拡財源に流用しようとしている
医療財源・年金財源とされているものも軍拡財源に流用しようとしている
政治は私たちの生活に直結しているにも関わらず、そして日々ひどいことが起こりつつも、色々ありすぎて、ただ頭の中を通り過ぎてしまいそうになります。ここでは、そういった様々な出来事の備忘録を主としています。そして、自分の感じたことも。麻痺してしまわぬように。「そんなもの」と冷笑し、怒りの矛先を権力者ではなく弱い者にぶつける格好悪い大人そのものになってしまわぬように。
先日、岸田政権はコロナ対策費の決算剰余金、つまり余った分は防衛費に回す発言をしているということを記事にしました。→コロナを5類にする本当の理由は、国民の健康よりも兵器の方が大事だから (topview.jp)
防衛費に回そうとしている医療関連費は、実はコロナ対策費だけではありません。今回はまた新たになったことを記していきます。
目次
国立病院や地域医療機構のための積立金を軍拡財源に流用しようとしている
軍拡財源確保の為に、国立病院や地域医療機構のための積立金の約半分を「不要見込み」として国に返金させようとしていることがわかりました。ちなみに、今回ターゲットとして発された金額としては以下の通りです。
- 国立病院機構(NHO):422億円
- 地域医療機能推進機構(JCHO):324億円
国立病院機構(NHO)・地域医療機能推進機構(JCHO)とは?
そもそも、この機構とは?というのを先に。
どちらも厚生労働省所轄の医療施設を運営する機構であり、国の援助によって運営されています。
■国立病院機構
2004年4月設立。
医療の提供(一般診療等)はもちろんのこと、調査や研究、医療技術の研修を業務としています。特に5疾病・5事業への取り組みに力を入れているとのことです。先進医療にも取り組んでいます。
- 5疾病:脳卒中、がん、精神疾患、糖尿病、急性心筋梗塞
- 5事業:緊急医療、災害医療、周産期医療、小児医療や小児救急、へき地医療
■地域医療機能推進機構(JCHO)
2014年4月1日設立。
社会保険病院・厚生年金病院・船員保険病院が統合してできた、全国ネットワーク組織です。全国の地域住民と労働組合が一緒に作り上げた組織でもあります。
患者の権利を守り、医療と社会保険の充実、そして地域に根ざした病院や介護老人保健施設を作ることをスローガンとしています。
実はお金に余裕があるわけではない
「厚生労働省所轄」「国の援助を受けて」と書きましたし、積立金が発生しているので、もしかしたら運営に余裕あるんでしょ?儲かってんでしょ?と思われる方もいるかもしれません。
※昨年、財務省が「積立金があるってことは余ってんだろ、返せ」と厚労省にいちゃもんつけていたようです。
確かにJCHOにおいて、当時の理事長だった尾身茂氏が、コロナ補助金をたくさんもらっておきながらコロナの患者を十分に受け入れていなかったという問題がありました。(※現在は理事長交代済み)
ですが、実際の現場が金銭的に恵まれているのか?というとそういうわけではなさそうです。
例えば、給料の件。
この機構に勤めている医療従事者への給与は、私立病院と比べても勿論のこと、労災病院や日赤等の他の公立病院よりも低いとのことです。
国家公務員の水準は上がった、というのは、正確に言えば「人事院勧告(国家公務員に対する給与などの勧告)」の数字が上がっただけであり、この機構の従事者たちには適用されていません。
というのも、筋ジストロフィーや重度心身障害者、結核等のセーフティーネット医療を担っている中、赤字になっている病院も多いためです。それがゆえに、賃金抑制も行われてしまっているとのことです。
労働組合の団体交渉で賃上げを要求してみても、コロナ前でさえ理事会側は「積立金が800億円必要」だというのを理由に応じてこなかった過去もありますし。
返納金は、本来はどこに返すものなのか?
まず、利益は積立金としていきます。そして、中期目標期間の最終年度末の時、その次の中期目標期間の業務の財源が足りなければ、積み立ててきた分をそこにまわします。それでもなお余った場合に、それは「返納」しなければなりません。
返納先は法律にて以下のように定められています。
- 国立病院機構⇒国庫
- 地域医療機能推進機構⇒年金特別会計
年金特別会計というのは、基礎年金や国民年金、厚生年金等の各年金や、健康保険、児童手当等の事業収支を経理するために設置された、厚生労働省所轄の特別会計です。
地域医療機能推進機構は国民の保険料を活用する形で設立したため、積立金が余ればそは年金関係のところに返すことが定められています。(保険料が資本なのだから、返す先が保険料なのは当たり前のことですよね)
ならば、年金特別会計に戻された分は、年金関係にまた充当するのが当たり前だと思いますよね。ですが、岸田政権はそれを「軍拡財源(防衛費)」として使おうとしているのです。
また、現在の中期計画は「2023年度まで」です。それを岸田政権は「前倒しして返納させよう」としています。
そもそも医療関係の積立金がなぜ「不要見込み」となるのか?
実は昨年の感染症法改定により、この2つの機構は「パンデミック時の医療提供義務」が課されました。「義務」ですよ。
そのため、次期中期計画ではパンデミック時にも対応できるようにするための予算も盛り込むとのことです。社会的責任を果たすために。
それに、実は病院の老朽化も進んでいます。省令で定められている耐用年数39年を超えた病院が多く、しかも築70年を過ぎている施設も少なくないそうです。(戦後直後に建てられたものがほぼそのままということになります。ですので、耐震に問題があることがわかっている施設もあるとのことです)
耐用年数39年を過ぎている病院数は以下。
- 国立病院機構:140病院中77病院
- 地域医療機能推進機構:57病院中15病院
それ以外にも、パンデミック時に対応できるための設備やシステム等も整えなければならないでしょう。平素から、何があっても対応できる体制を整えるためにも。人員の確保だってしなければなりません。
そうなると、今の積立金だけでも足りないのです。
また、前述の通り、医療従事者に対する賃金抑制は続いています。
もしこれが本当に決行されてしまったら、医療崩壊は間違いなく更に加速するでしょう。なにしろ、あらゆるコストカットを更に図らなければならないのですから。離職者も更に増えることでしょう。
岸田政権はどのように返答したのか?
2023年2月1日の衆議院予算委員会にて、この問題に切り込んでくれたのは日本共産党の宮本徹議員です。彼の質疑に対し、岸田総理、そして加藤厚労大臣はどのような返答をしたのか、箇条書きでメモします。
- 特例的に前倒しで国民の協力をいただくことにした
- 年金特別会計に入れる理由を岸田総理は知らない(加藤厚労大臣は知ってた)
- 閣議決定(国会無視)で、法律を変えて年金特別会計から国庫にするから問題ない
- 中期計画の期間は終わっていないが特例で前倒しする
- 建物は適切に修繕すればまだ使える
- ウィズコロナに移行するから、いらなくなる予算があるでしょ
- 賃金はあがっているはず(実際は前述の通り賃金抑制中)
- 国民の皆さんに理解していただくべく努力していくことが重要である
ウィズコロナにするから「予測不能な事態に備えるための予算も用意する必要がなくなる」と言っているのですよね、岸田総理。コロナ対策の完全放棄を改めて宣言した格好です。
あとがき
岸田政権…いえ、自民党は、この国の医療を発展させることはおろか、守ることさえも考えていないことが露見しました。また、国民の理解を得るべく努力する丁寧な説明云々言ってますが、全く果たされていません。
しかし。「そもそも~」のところで書いたことから考えても、逆にこのようなことがなかったとしても(老朽化対策の必要がない等)。
なにがあったとしても。
「医療のためのお金」を「戦争のためのお金」に転用しようとすること自体が、どれだけおぞましいことなのか。
「国民の医療福祉」を捨ててまで、戦争できる国にしようとしていることがどれだけ異常なことか。これを「異常」だと思える人がたくさんいることを願います。
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