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日本語(関東方言)の「母音の無声音化」(5)

日本語(関東方言)の「母音の無声音化」(5)


日本語(関東方言)の「母音の無声音化」(5)

前回第4問
https://topview.jp/t62a60d1c06531-3896
の回答例:

「きく」、「くつ」等の母音 [i]、[ɯ] が無声音化するのに、
「かくまう」「ここなつ」「けしごむ」等の母音 [ɐ]、[o]、[e] が無声音化しないのはなぜか?

という問でしたが、母音 [i] vs. 母音 [ɐ] を例に採って考えます。

日本語の母音の話なのですが、ここでは分かりやすくするために便宜上敢えて英語の Bonnie の母音 [ɑ] vs. [i] で臨時に置き換えて考えてみます。
上の図を参照してもらえば分かるように、<声帯から唇に至る空間>(上部管腔)を一種の<管(tube)>と見做すと、
<管>の太さに関して、 [ɑ] > [i] となりますね。

そして、同じエネルギーで発音しても<聞こえの度合い>は [ɑ] > [i] となります。つまり、<太い管>の方がいかにも<母音らしく響く>訳です。
(やまびこを聞きたいときも、相対的に<太い管>の母音を含む「ヤッホー」であって、<細い管>の母音を含む「イッヒー」や「ウッフー」とは言いませんね。)

(英語と違い)日本語ではこの<管の太さ>に応じる形で、さらに
母音 [ɐ]、[o]、[e] :相対的に母音らしい →「有声音性」が保たれる
母音 [i]、[ɯ] :相対的に母音らしくない →「有声音性」が保たれなくなる可能性 → 前後の音の影響を受けやくなる
という訳です。

言い換えると、母音のうちなぜ [i]、[ɯ] だけが無声音化?という疑問が湧く訳ですが、これは、[i]、[ɯ] の場合口腔内で舌が盛り上がる結果、声帯よりも上の空間=<管>が、[ɐ] の場合などよりも<細い管>となるせいですね。<太い管>を空気が通る母音([ɐ] など)よりも<細い管>を空気が通る母音([i]、[ɯ])の方が、同じエネルギーで発音しても「母音としては弱い」ので、前後の「非有声子音(=無声子音や無音)」の影響を受けやすくなります。その結果、通常だったら「有声音」である [i]、[ɯ] が「無声音」となるわけです。

さて、最後にややこしい問題。

第5問:

「目覚ましどこだ?」の「し」は「ど」が後続(つまり有声子音 [d] が直続)するのになぜ(通常)無声音化するのか?
ただしその際、条件として「それは例外だから仕方がない」といった「例外処理」という形ではない説明を試みてください!

今回も、どうぞ、どなたでも奮ってお答えください!

回答例は明日。

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