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辛口英語教育論 (9)

辛口英語教育論 (9)


さて、8日前 <https://topview.jp/t62ce434d521e2-4642> から、

This is a pen.:「こんな英文、現実にはまず口にしないだろう!」と、したり顔で烙印を押される典型的な文

をトピックにして、

この種の発言って大方の場合ただの「受け売り」になっていないだろうか?実はあまりにも一方的で一面的な物言いではないだろうか?

という問題提起をした上で、この問題をいくつかの要因に分けて考えてみたい、としました。そして、要因分析として、

 <想像力><有用性><文法><発音>

といった要因を順次取り上げていきます。

と宣言しました。


5日前からは、<文法>―とりわけ、彼我の、つまり日英の<文法>の相違点―という要因に関して、述べています。

<文法> (6)

昨日 <https://topview.jp/t62d6fb6e0b37c-4762> は、英語の<単数><複数>との関連で「~以上、~以下、~を超えて、~未満」の話をしました。

さて、これとの関連で述べておいた方がよいと思われる点があります。それは、

ひょっとして、

 日本語と違って英語では<単数>と<複数>とが区別されるので、英語の方が<論理的>だ、

とついつい思ってしまう、一般人が抱きがちな大いなる「誤解」です。

まずは、辛口英語教育論 第 (4) 回 <https://topview.jp/t62d220a5968b5-4693> で述べた以下の点を再度おさらいしましょう。

 (因みに、文法上の<数(すう)>という概念 ≠ 現実世界の<数(かず)>という概念 であって、両者を混同してはいけませぬ。―文法用語の「数(すう)の一致」も「数(かず)の一致」などと言ってはいけませぬ。―たまにそういうことを平気で言う教師も残念ながらいたりもしましすが...。
 日本語に文法上の<数(すう)>という概念がないとはいっても、日本人だって「1」と「2」と「3」… の区別は当然つく訳です。
 逆に、英語で文法上<単数>vs.<複数>があるとはいっても、英語圏の人も「1」と「2」と「3」… の区別は当然つくけれども、
 「2」と「3」は文法上は共に<複数>なのであって、その意味では文法上は区別がない訳です。)

その上で、世界の言語には、そもそも<数(すう)>に関して概略以下の区別があるのですが、

 a. <数(すう)>の概念をもたぬ言語:日本語など
 b. <単数> vs. <複数>を区別する言語:英語など
 c. <単数> vs. <双数/両数>vs. <複数>を区別する言語:具体例はネットで調べてみてください

仮に上の「理屈」に従ってしまったならば、b タイプの英語よりも c タイプの言語の方が<論理的>だ、
ということになってしまいそうですが、このような形で<言語間に優劣を想定する>ような発想は、言語学の世界では<とうの昔に廃棄>されています。

そもそも、考えてみてください。

名詞を文法上いくつかのクラスに分ける<類別詞>には、例えば、

 文法上の<性>の区別:ドイツ語・フランス語など

もありますが、こうした文法上の<性>を基本的にもたぬ英語は、相対的に独仏語よりも果たして<劣っている>のでしょうか?

あるいはまた、<類別詞>の一例である

 <助数詞>:日本語(「枚」「個」「本」「匹」「頭」, etc.)など

を勘案するなら、<助数詞>をもつ日本語の方が英語よりも<優れている>ということなのでしょうか?
違いますよね。もう、こういうことを言い出したらキリがない話な訳です。

さらに言うならば、

 英語圏の子どもは<単数> vs. <複数>の区別を獲得せねばならぬが、
 日本語圏の子どもは<助数詞>の区別を獲得せねばならぬ

ということを考えると、言わば<どっちもどっち>ではないでしょうか?

こういったことは、<発音>という側面に関しても実は当てはまります。例えば、

 日本語では母音は5つだけですが、英語では(数え方にもよりますが)はるかに多くの母音があります。

このことが含意する点(で、ほとんどの人が触れぬ点)は例えば次の事実です。

 英語圏の人は母音の獲得時に相対的に苦労するが、獲得後は<同音異義語>が相対的に少ないので楽
  vs.
 日本語圏の人は母音の獲得時に相対的に楽をするが、獲得後は<同音異義語>が相対的に多いので大変

ここには言わば絶妙な「兼ね合い(trade-off relation)」の関係 =「シーソー関係」が存在する訳ですよ。
やはり、トータルで見ると言語学が言うように<言語間に優劣はない>訳ですね。実に面白いですね。


では、明日以降もどうぞお楽しみに~。

ps
「蝶々」を数える<助数詞>ってご存知ですか?
なんと、「頭(とう)」です!!!

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