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なんでもない平日の朝の話

なんでもない平日の朝の話


「ふわぁぁい」
スマホの目覚ましの音に叩き起こされ、眠気を引きずりながら瞼を開ける。スマホの光は、寝ぼけ眼に容赦なく突き刺さるようだ。もう何年も目覚ましアラームなしで、朝を自然に目を覚ました日は全くないのかもしれない。朝は毎回、
(もっと寝ていたい……)
と脊髄反射的に思ってしまう。
朝の風景は大好きだ。人気が少ない道路は歩きやすいし、自転車も走らせやすい。まだ誰もいない場所は、朝特有のひんやりとした新鮮な空気を独り占め出来る。肌寒い時期は、ジワジワ上る太陽を拝んで視覚から暖かさを得られるのだ。
しかし日勤の自分には、朝は眠い、という強い概念がいつからか叩き込まれている。暗い夜より一日の始まりを感じさせる朝が大好きなのに、皮肉なことだ。まぁ、朝が眠いと感じるのは昨晩、夜ふかししてしまったからである。完全に自分に非があるが、ついうっかりやってしまうのだ。暗い夜は苦手だが、夜には独特の静けさがある。
(時間を止めたら、もっと寝られるのに……)
我ながら面白いアイデアだが、いいね!と言ってくれる人は果たしているだろうか……?
いつまでも布団の中に引きこもるわけにもいかないので、仕方なく掛け布団をめくり、体を起こした。
冬の室内はひんやりしている。
 
体がまだ布団の温もりで暖かいうちに、服を着替えた。布団の中に、朝に着替える服を入れている。部屋の中に置くと、着るときにヒヤッとして嫌だから、数年前から着替えは布団の中に入れているのだ。ベストなアイデアだと自負している。まぁ、シワはついてしまうが、冬の朝は起き上がるのが一苦労だから、快適さを最優先にさせてもらおう。    
 服を替えて部屋を出ると、床の冷たさが裸足に直に伝わる。居間に入り、カーテンを開ける。外はまだ暗い。とりあえず、トイレで用を足し、手と顔を洗って歯磨きを行う。就寝前より短い時間で歯磨きを終わらせ、テレビをつけた。朝は大抵、どこの局も情報番組を放送している。いつも平日見ている情報番組を流し見しながら、弁当と朝食の準備に取りかかった。   
 
弁当の中身は冷凍食品一択だ。理由は明白、用意が楽で美味しいからである。洗い物を出来るだけ減らしたいので、ご飯はラップに包んでおにぎりにしている。レンジのチン、という無機質な音が響く台所にいる中、背中越しにテレビの音が聞こえた。このコーナーは何時くらいに、あのコーナーは何時くらい、と大体の時間の目安になっている。弁当作りを
終えると、次は朝食の準備だ。まず、食パンをトースターに入れ、その間にソーセージ、冷凍のブロッコリーをレンジで温めた。しばらく待って丁度いい頃合いで取り出し、マーガリンを満遍なく塗る。焼いた直後だと、よくマーガリンが馴染んでいく。そしてコーヒーを用意して、お皿にパン、ソーセージ、ブロッコリーを載せ、ヨーグルトを出したら平日の朝食の完成だ。
出来ることならゆっくり味わいたいところだが、あいにく今日は仕事がある日の朝、ササッと胃に収める。食器を洗い、通勤のカバンを引っさげ、テレビと部屋の電気を消して玄関の扉を開けた。風こそ吹いてないが、空気は肌に冷たく当たる。せっかく温かいコーヒーを飲んだのに、体が外から冷えてしまう。外はまだ暗い。職場に着いたら、何か食べて気分転換とエネルギーチャージをしておこう。自転車に乗り、温かい部屋に後ろ髪を引かれる思いで職場に向かった。

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