魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-15 ☸ リリスの理論
魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-15 ☸ リリスの理論
魔法外科医の少年は癒し系~あらすじ
魔法外科医って結構、大変なお仕事。さらに転生者の受け入れまで。ほのぼのあり、シリアスあり、アクションあり、ギャグあり、ほどよくエッチもありの逆異世界転生ファンタジー。
<ロビ様、血管とかひとつずつ繋げていますけど、ぶわぁって治る治癒魔法というのは無いのですか?>
<あるよ。あるけど、あれ、障害が残るんだ>
<どういうことでしょうか?>
<切れた患部がぴったり合っていれば綺麗に治るんだけど、ずれているとそのまま治っちゃってリハビリが大変なんだ。特に太い血管や筋肉はちゃんとやらないと>
<なるほど、勝手に元通りになるわけじゃないんですね>
<そう。だから、障害を残さないよう、元通りに結合していくんだ>
(ハルカの世界では、魔法って、随分と便利なものと解釈されているんだな)
※本小説は、「小説になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」、「ノベルバ」、「ノベルビア」にも投稿しておりますので、お好みのサイトで読んでいただければ幸いです。
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魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-15 ☸ リリスの理論
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王立学院の研究部は重要な研究をしていることもあり、研究棟に入るためには許可が必要である。また、警備兵も何人か配備されている。ロビは、警備兵に軽く挨拶をし、受付でティラーナ教授の研修室を訪ねる旨を伝えた。
既にリリスから許可申請がされており、受付まで迎えに来たリリスに連れられて、ロビは問題無くリリスの研究室まで行くことができた。
「ロビ、あなたの魔力はすごいわ。私より強いかも」
「ティラーナ教授の方が上ですよ。闘技練習場を壊すぐらいですから」
「二人っきりの時はリリスでいいわよ」
「リリス教授」
「ううん、リリスでいいから」
「リリス」
「そうそう。その方が私も気が楽だわ」
リリスはティーカップにハーブティーを注ぎ、ロビに差し出した。ロビは、色々な書物が積み上げられているソファに座った。
「このティーセット、とても高そうです」
「あなた目利きができるの?これ、教授になった時にお父様からお祝いで頂いたの」
「たぶん、金貨……あ、そういう話は失礼ですよね。すいません」
「いえ、いいわ。何歳の頃からあんなに強い魔力を使えるようになったの?」
「物心ついたころには使えるようになっていました」
「クルーガ家の方々はみんなそうなの?」
「リリス、実は、僕……」
「どうしたの?」
「な、何でもないです。たぶん、そうです」
ロビは、クルーガ家の肉親に会ったことがほとんど無い。母親は消失、父親と兄が三人いるが、親としての父親の記憶はなく、兄たちとも年に一度、歳の一番近い兄に会うかどうかである。
「さて、ロビ、私に何か聞きたいことがあるのね?単刀直入に言っていいわよ」
「はい。次、勇者はいつ現れますか?」
リリスはハーブティーを口にし、深呼吸をした。
「まず、なぜ魔学の専門である私にそれを聞くの?」
「クルーガ家の記録には六百年毎に勇者が多数現れます。僕は、旅人ではなく、魔法や魔術のようなもので召喚しているのではないかと考えました」
「ロビ、あなたから有益な情報を得られたら考えます」
「異世界からの精神体転移現象を見つけました」
リリスは目を輝かせ、興奮気味な表情でロビを見つめた。
「そうなの?すごいわ。あなたが見つけたということは、ウリシア王国内よね」
「はい。獣人族の奴隷に異世界からの精神体が転移していました」
「たまに精神体転移や憑依はあるけど、どうして異世界からってわかったの?」
「奴隷なのに言葉が話せず、
「すごいわ。その方にお会いできるかしら」
「今、転移のことは伏せて保護ために譲渡手続きをしてます。その後であれば。ただ、意識共存がうまく行かなかったようで
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リリスは、書棚から一冊の書物を取り出した。印刷物ではなく自分で書いた書物である。
「まず、六百年毎に行われているのは『勇者召喚の儀』というものよ。私がオトイク王国に留学したのは、これを調べるためでもあったの」
「オトイク王国は、長寿国だからですね?」
「ええ。それで、歴史では国名が何度も変わって場所は特定できなかったけど、書物館に過去三回分の
「これがそれを書き写したものですね」
「そうよ。見て。距離はわからないけど、正確な円周上に配置された六つの山。しかも不自然な三角錐。高さは推定百五十メートル。そして北と西に海があるわ」
「どうして山の高さがわかったのですか?」
「魔道士を守るために衛兵が山のふもとを警備した記録があって、その時の配置図から推定したの」
リリスはページをめくった。
「そしてもうひとつ、信憑性はなんともだけど、世界地図もあったわ」
「世界地図、これが世界の形ですか?すごいです」
「ええ、私たちの知識では描けない世界地図よ」
「僕たちはどこに住んでいるのですか?」
「はっきりとは言えないけど、私たちが持っている中央大陸西部の地図、当時の文化に関する記録を照らし合わせると、ここよ。そして、六つの山はウリシア王国の南東百キロあたりから広がる森林地帯のどこか。私は、夜な夜な隷従鳥獣を飛ばして同じような地形の場所を探しています」
ロビは、リリスの顔をじっと見た。
「リリス教授のジト目は、寝不足のせいなんですね」
「関係ありません。生まれつきよ。
「でも、可愛いです」
「あ、ありがとう……それで、勇者たちはこの円の中のどこかに出現するの」
「この円の大きさはわかりますか?」
「いえ、まだわかっていません。でも直径は少なくとも数十キロ規模だわ」
「そうですか」
ロビは考え込んだ。
「あなたは、『勇者召喚の儀』を止めたいの?」
「いえ、止めると精神体がどうなるかわからないので、戦争さえ起きなければいいと考えています」
「転移した精神体の記憶がはっきりしてきたら『勇者召喚の儀』がいつ行われるかわかるわよ」
「そうなんですか?それはすごいです」
リリスは得意げに説明を始めた。
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「これはまだ未発表の理論よ。『勇者召喚の儀』とは、何らかの方法で時間の経過とともに六つの山に魔力を蓄え、仕上げに魔道士によって追加の魔力を加えて発動させるものと推測しているの。あの山自体が
リリスは、花瓶に挿してあった花を一本取り上げ、指でつまんでロビの目の前で振ってみせた。
「このように、大きな揺れを使って異世界から勇者を連れてくるの。異世界とつながっている時間は一日ほど。その間、この六角形の中のすべての生命体は死滅するので入ることはできない」
そしてリリスはさらに何ページか書物をめくり、横線と振幅する波線を見せた。
「しかしこの揺れは一回では止まらず、反動で往復をしてもう一度、異世界と繋がるの。この時は既に召喚力は弱まっており、もっと軽いものしか転移できないわ。異世界と繋がっている間に、勇者召喚された場所で死亡して肉体から精神体が分離すると精神体転移が起きると考えているの」
「どうして『勇者召喚の儀』より過去に出現するのでしょうか?」
「それは川の流れのようなものよ。水は上流から流れてくる。未来は下流にあるの。『勇者召喚の儀』で起きた揺れの位置は変わらないため、二回目の揺れは発動者が下流に流されたあと、上流に現れるのよ」
「それで過去に現れたというか、発動者から見ると過去に存在していたことになるわけですね?」
リリスは、理解を示すロビに対して好感度を上げたのか、興奮して話を続けた。
「そうよ」
「精神体転移はどうやって選ばれるのですか?」
「無作為よ。反動による精神体召喚は、同じ場所で発生するの。勇者候補者がいた場所だから人の往来が多い場所の可能性が高いわ。過去の記録から勇者達の年齢は若いの。恐らく、学習施設などの付近である可能性が高いわ」
(そういえば、ハルカの世界も学院みたいな施設がたくさんあったな……)
「それでも、その場所で死亡する確率は低いと思いますが……」
「いえ、異世界と繋がっている間は時空のゆがみが発生するため事故が起きやすくなるの。つまり殺されるのではなく、何かの事故に巻き込まれて死んでしまった可能性が高いわ」
「では、なぜ精神体はウリシア王国内に現れたのでしょうか?」
「実体と違って精神体は重さがほとんど無いから、転移した時に一旦空高く上がるの。そこで、精神的に不安定で似た要素を持つ生き物に吸い寄せられるように転移すると考えているわ」
(そういえば、残留魔力、すごく高いところにあった)
「あと、精神体は同時にこの世界に現れるのですか?」
「いえ、精神体の重さによって変わるのよ。一番軽い精神体は瞬時に転移し、重い方は過去に現れるの」
リリスは話を続けた。
「そして、一番軽い精神体として転移した者が、生前、勇者がその世界から消えた時期を思い出すことができれば、この世界での『勇者召喚の儀』が行われる時期がわかるってこと」
「なるほど。でも、この世界と異世界って時間の進み方は同じなのですか?」
「完全に一致しているかどうかはわからないけど、召喚された勇者の生活周期はヒト族と変わらなかったそうよ」
リリスは花を花瓶に戻し、ハーブティーを一口飲んだ。
「ロビ」
「はい、なんでしょうか?」
「悪いけど、まだ研究課題が残っているので、今日はここまでにして、また明日、来てもらっていいかしら?」
「いいですけど、僕の用件は終わりました。まだ何か?」
「ええ、あなたに聞きたいことがあるの」
「じゃあ、明日、講義が終わったら研究棟に来ます」
ロビは立ち上がり、バッグを背負った。
「リリス」
「何かしら」
「僕、リリスのこと好きです。できたらお付き合いしたいです」
「あ、あの、ありがとう。でも、他の女の子にも好きって言っているんでしょう?」
「いいえ、リリスだけです。初めてです」
「本当?」
ロビは恥ずかし気に笑った。
「でも、夜はちゃんと寝てくださいね」
「え、ええ」
「もし、僕がその山を見つけることができたら、結婚してくれますか?」
「い、いきなり何を言うのよ」
「ダメですか?」
「うーん、結婚はちょっと……でも、お付き合いぐらいなら考えてもいいわ」
「ほんとですか?僕、がんばります」
ロビは受付で退出の手続きをし、リリスは隣で明日の入室申請を書いていた。リリスが申請書を書き終わると、ロビは帰宅の途についた。
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