魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-21 ☸ ウグルスは料理研究家
魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-21 ☸ ウグルスは料理研究家
魔法外科医の少年は癒し系~あらすじ
魔法外科医って結構、大変なお仕事。さらに転生者の受け入れまで。ほのぼのあり、シリアスあり、アクションあり、ギャグあり、ほどよくエッチもありの逆異世界転生ファンタジー。
<ロビ様、血管とかひとつずつ繋げていますけど、ぶわぁって治る治癒魔法というのは無いのですか?>
<あるよ。あるけど、あれ、障害が残るんだ>
<どういうことでしょうか?>
<切れた患部がぴったり合っていれば綺麗に治るんだけど、ずれているとそのまま治っちゃってリハビリが大変なんだ。特に太い血管や筋肉はちゃんとやらないと>
<なるほど、勝手に元通りになるわけじゃないんですね>
<そう。だから、障害を残さないよう、元通りに結合していくんだ>
(ハルカの世界では、魔法って、随分と便利なものと解釈されているんだな)
※本小説は、「小説になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」、「ノベルバ」、「ノベルビア」にも投稿しておりますので、お好みのサイトで読んでいただければ幸いです。
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魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-21 ☸ ウグルスは料理研究家
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連休二日目も同じように勉強や格闘練習をし、今日は連休三日目である。ロビとハルカは、ハーブティーを飲みながら朝食前の勉強ををしていた。
(『
<ハルカ、色々、考えたんだけど、僕と召喚契約をしない?>
<召喚契約って、剣と魔法のラノベに出てくる奴隷みたいなものですか?>
<ハルカの知っている書物では、結構、怖いものとして理解されているみたいだね>
<あ、ラノベの設定によりますけど>
<この世界には隷従契約と召喚契約があって、どちらも契約には主従関係が必要なんだ。例えば、相手を倒して力を認めさせるとか。契約すると念話ができるようになる>
<離れていても念話ができるのですか?>
<そう。ただし、隷従契約の場合は簡単な言葉しかやり取りできない。名前とか、命令とか>
<こんな風に自由には会話ができないんですね>
<うん。感覚共有とかは同じなんだけどね。お、ハルカ、今、思い浮かべたやつ、近いよ、すごいな、ハルカの世界って>
<え、あの、アニメのシーンを思い出していました>
<動く画像?うーん、なんか、うまく言語化できないや>
ロビは『動く画像』を一生懸命考えたが、該当するものが思い浮かばなかった。
<その他に違いはありますか?>
<大きくは三つ。召喚契約には膨大な魔力が必要。ハルカの大きさなら平均的な魔道士が十人ぐらい。でも、これは僕なら問題ない。そして、遠く離れた場所でも一瞬で召喚できる>
<三つ目はなんですか?>
<解約はできない。契約主が死ぬと契約した方も死ぬんだ>
額を合わせたまま、沈黙が続いた。
(ハルカ、怖いよね。確かにハルカの世界と比べて、この世界はそんなに安全じゃない)
<ハルカ、このまま、いつも
<ロビ様、あたし、召喚契約します。そうしたら、ロビ様と離れていても話ができます。これはとても心強いです>
<わかった。召喚契約は街で行うと目立つから、馬に乗って山に行こう>
ハルカは少し考え込んだ。
<あれ?そういえば、あたし、乗馬を習っていたような……確か松の木がたくさんある大きな公園の中……>
<へえ、すごいね、ハルカの世界でも馬具とかちゃんとあるんだ>
<あたし、自分で馬に乗れます。あたしの住んでいた街に乗馬協会があって、習っていました>
<うん、じゃあ、ダリアに馬を頼んでくるね>
ロビは、ソファから立ち上がると、ダリアを探しに行った。
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朝食を食べながら、ダリアはロビに話しかけた。
「ロビ様、今日はハルカの服を注文するため、三人で街へ出かけませんか?」
「今日は休みだけど、お店やっているかな」
「お休みなのは王立学院だけで、街は平日ですよ」
「あ、そういえばそうだった。せっかくだからウグルスも出かける?」
「はい、お言葉に甘えてご一緒させていただきます」
「それではロビ様、馬はその帰りに借りてくることにします」
飲食屋は休日も開いていることが多いが、オーダーメイドできる洋服屋などは週末休みのところが多い。
「メイド服と私服を何着か注文しますが、他に何かご入用のものはありますか?」
「うん、冒険者用の服。ハルカにも依頼を手伝ってもらうつもり」
「それは武具系のお店に行った方がいいかもしれませんね」
八年ほど前からウリシア王国の辺境では大量の魔石獣がヒト族の生活圏に現れており、王国は対応に追われている。
現在、九つの辺境警備団があるが、それだけでは人手が足りず、冒険者ギルドも認可して魔石獣の対応に当たっている。冒険者ギルドは辺境警備団の管理下の元、王国や商人から依頼を受けて冒険者に仕事を渡し、成功報酬を払う。
魔石獣の肉は脂が少なくて美味しく、毛皮も高く売れるため、商人が冒険者ギルドに依頼を多く出しており、他国からも冒険者が多く流れ込んでにぎわっている。
ロビは魔石を入手するために偽名を使って辺境の冒険者ギルドに出入りし、冒険者としても登録して依頼も受けて小遣い稼ぎをしていた。
(『
<ハルカ、魔石獣狩りをするときに呼ばれたい名前ってある?>
<えっと、急に言われても……えーっと、あ、学校の近くに食べ物屋さんが……確か、楽器屋さんの斜め向かい……えっと、んんっと、ソメイ、あの、『ソメイ』でどうですか?>
<お、なんか美しい名前だね。色はどんなイメージなの?>
<薄いピンクです>
<よし、それでいこう>
「ダリア、今日はハルカの乗馬技術を確認したいんだ。だから、街から帰ってきたらハルカと馬で出かけるつもり」
「はい、わかりました。今は日も長いですし、問題ないかと」
四人は朝食を終えると街へ出かけた。
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洋服屋と武具屋でハルカの服の注文をした後、四人で食事をするために飲食店や宿屋が並んでいる通りに移動した。新しい鳥肉料理の店ができており、ちょうど大きな鳥が焼きあがったとのことでその店に入った。
外で食事をする時、ウグルスの目は鋭い。味付け、焼き加減、盛り付けなど、美味しいと思ったらとことんチェックしている。その点、ダリアはお気楽な感じだ。
ロビは、店主と魔石の交渉をしにいった。これだけ大きな鳥なので、それなりの大きさの魔石が期待できるからだ。
「無料でいいんですか?」
「はい、食事をたくさん注文してくださっているので。どうぞ、お持ちください」
「ありがとうございます」
ロビは店主から小さな麻袋にたくさん入った魔石をもらった。重さは十キロ近いが、ロビは片手でひょいと受け取った。
「どうしてこんなにたくさんあるんですか?」
「子どもの遊び道具にちょうどいいからね。それにしてもお兄さん、力持ちだね」
「ええ、普段から鍛えていますので」
注文した料理は、固いパンを薄くスライスした上に、ちょっとスパイシーな味付けの鳥肉をほぐして乗せ、香草、香りのよいオイルを主としたドレッシングがかかっている。また、サラダとあっさりとしたチキンスープも付いていた。追加で、皮をカリッと焼いて塩を振った料理や、足の付け根をじっくりとローストした料理なども注文したため、かなり豪華な昼食となった。
「こちらの料理には、おすすめの白ワインがございますが、いかがいたしいましょう?」
ウグルスが、『飲みたい』アピールの視線をロビに送った。ウグルスは、この店を『美味しい店』認定をし、料理研究家としての探求心が燃え上がっているようだ。
「うん、じゃあお願いするよ。ボトルで。グラスは四つ」
厚みのあるグラスが四つ出てきた。薄いグラスを作る技術もあるが、普通の飲食店では、このような丈夫なグラスが使われている。
(『
<ハルカ、美味しいかい?>
<はい、とても。赤ワインは少し渋みがありますが、このワインはあっさりしていてさわやかなブドウの甘みを感じます>
「店主、このワイン、ボトルで持ち帰りたいので、一本、用意しておいてくれる?」
「はい、わかりました」
昼食を終えると、ウグルスは香辛料やその他の食材を購入するため、食品を扱っている店が多い通りに出た。ハルカは物珍し気に見ていた。
「ロビ様、亀です。大きい、亀です」
ハルカは憶えた言葉を早速、使ってみせた。
「亀、うん、亀だね!ハルカ、すごいじゃない」
「ハルカ、ちゃんと勉強、がんばっているのね」
なぜかダリアの言葉だけは、褒めながらも微妙に含みのある感じがする。
ダリアが呟いた。
「亀、亀、ロビ様、亀……の頭」
「ダリア、大丈夫?」
(なんか、ダリア、変なこと考えているみたい……ワインのせいかな)
「ハルカ、あの亀は、食べ物だよ」
ロビは、ハルカのためにゆっくりと区切りながら、なるべくシンプルな言葉で伝えた」
「あの亀、食べるのですか?」
「うん。でも、亀はあまり美味しくないよ。旅をする時の食料なんだ」
「そうなんですか」
「餌はあまり要らなくて大人しいから、街があまりない街道を移動する時や船旅をする時に一緒に運んで食料にするんだ」
(ちょうど昨日の夜に読み聞かせた書物が、冒険者の本で良かった)
「お、ロビじゃないか」
「やあ、エイナ、こんなところにいるなんて珍しいじゃないか」
「お、ネネじゃないか、よくもまあぞろぞろと家族ごっこみたいに」
ハルカは、ロビの腕をつかんだ。
「いや、君の方がよっぽどぞろぞろしているよ」
エイナの周辺には、護衛と思われる剣を持った男女が十人ほどいた。
「まあ、次期当主様だからな、これぐらいの護衛は付けないと」
「そうだ、ネネは死んだらしいね。ここにいるのはネネによく似た獣人で、ハルカっていうんだ」
「ふん、奴隷の素性や名前なんてどうでもいいんだよ。そうだ、『
(ハルカ、がんばって)
ハルカは見事に苦しんでいるふりをした。
「エイナ、勝手に他の家の奴隷をいたぶるのは失礼だよ。そうだ、ネネじゃない証拠がある。
「そうか、なるほど。『
「そういうことだよ。他人の空似さ」
「ふん、まあいい」
「ロビ様、あの、またエイナ様に呼び出されるようなことは……」
「うん、無いよ」
ダリアは心配そうな顔でロビに話しかけたが、ロビはいたずらっぽい笑顔で答えた。
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