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魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-26 ☸ ロビと金色の男

魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-26 ☸ ロビと金色の男


魔法外科医の少年は癒し系~あらすじ

魔法外科医って結構、大変なお仕事。さらに転生者の受け入れまで。ほのぼのあり、シリアスあり、アクションあり、ギャグあり、ほどよくエッチもありの逆異世界転生ファンタジー。


<ロビ様、血管とかひとつずつ繋げていますけど、ぶわぁって治る治癒魔法というのは無いのですか?>
<あるよ。あるけど、あれ、障害が残るんだ>
<どういうことでしょうか?>
<切れた患部がぴったり合っていれば綺麗に治るんだけど、ずれているとそのまま治っちゃってリハビリが大変なんだ。特に太い血管や筋肉はちゃんとやらないと>
<なるほど、勝手に元通りになるわけじゃないんですね>
<そう。だから、障害を残さないよう、元通りに結合していくんだ>

(ハルカの世界では、魔法って、随分と便利なものと解釈されているんだな)


※本小説は、「小説になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」、「ノベルバ」、「ノベルビア」にも投稿しておりますので、お好みのサイトで読んでいただければ幸いです。

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魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-26 ☸ ロビと金色の男



 ➖ ➖ ➖  ✡️ ✡️ ✡️ ➖ ➖ ➖

 

 剣を持った二人がハルカの前に出た。鞘から抜かれた剣は、光を放っている。どうやら魔力が注ぎ込まれて何かの魔法が付与されているようだ。

 

(悪趣味だな。あれじゃ夜、戦う時に目立ってしょうがなさそう)

 

<ハルカ、気を付けて、その剣、魔法が付与されている。それにさっきの奴より強い>

<どうしたらいいんですか?>

<普通の剣より切れるだけだと思う。聖蛇短剣スネイクダガーなら耐えられるよ。だけど、倒れている人の剣を奪って使うと切られちゃう>

<わかりました。他には何か?>

<魔道士二人が動けるようになったから、中距離攻撃を受けないように常に剣士を間に挟んで>

<はい、注意します>

 

 先ほどの男たちと違い、この二人の動きは無駄がない。ロビは三人目の剣士と魔道士の動きを見ていた。

 

(大丈夫、ハルカと聖蛇短剣スネイクダガーなら、あの二人のレベルでも戦える)

 

 ハルカは五分ほどの攻防で一人を絡めとり、雷衝撃インパルスで気絶させた。しかし、もう一人の剣士が剣を大きく振り上げて聖蛇短剣スネイクダガーを断ち切ろうとした。

 

 光を放つ剣と聖蛇短剣スネイクダガーの接点は激しい光りを放ち始めた。

 

<ハルカ、三人目の剣士が来る。聖蛇短剣スネイクダガー短剣ダガーに戻して>

<はい>

 

 ハルカは聖蛇短剣スネイクダガー短剣ダガーの状態に戻し、三人目の剣士の剣を受け止めた。リボン状から短剣ダガーに戻した反動で倒れていた剣士が地面で二転ほどし、自分の剣で怪我をして血を流した。

 

「なんて短剣ダガーだ、この剣でも切れないなんて!」

 

<ハルカ、どうしたの?>

<ロビ様、あたし、あたし、人を傷つけてしまいました>

 

(まずい、魔道士が……『召喚サモン、ハルカ』)

 

<あれ、ここは?>

<危なかったね。あの魔道士、結構、やるね。恐らく短縮詠唱で魔法を発動ラウンチさせたよ>

 

 ハルカは、ブルフィグトの治療を続けているロビのそばにいた。

 

<あたし、どうなったんですか?>

<魔法攻撃を受けそうになったから召喚サモンしたんだ。どう?初めての召喚サモンは>

<あ、あ、ありがとうございます>

 

 ハルカは泣き出した。

 

<ハルカ、獣人族なら、あの魔法攻撃一発で死ぬことは無いから安心して>

<は、はい>

 

 ハルカはシュンとなって座り込んだ。

 

<ハルカ、よくやったよ>

<え?>

<あの六人はレベルが高い。ハルカ、すごかったよ>

<はい>

<十五分は足止めしてくれたし、奴らは、すぐにはここに来ない>

<どうしてですか?>

<ハルカががんばってくれたから、今頃、警戒して周囲の状況を確認しているよ>

<お役に立ててうれしいです>

 

(あれ?ハルカ、手術しているところ、すごい見ている。気持ち悪くないのかな)

 

<ロビ様、血管とかひとつずつ繋げていますけど、ぶわぁって治る治癒魔法というのは無いのですか?>

<あるよ。あるけど、あれ、障害が残るんだ>

<どういうことでしょうか?>

<切れた患部がぴったり合っていれば綺麗に治るんだけど、ずれているとそのまま治っちゃってリハビリが大変なんだ。特に太い血管や筋肉はちゃんとやらないと>

<なるほど、勝手に元通りになるわけじゃないんですね>

<そう。だから、障害を残さないよう、元通りに結合していくんだ>

 

(ハルカの世界では、魔法って、随分と便利なものと解釈されているんだな)

 

 ロビの目の前に二つの魔法陣と水が現れた。ロビは身体を振るわせた。

 

<ロビ様、大丈夫ですか?>

<うん、前に温水を作ったときと一緒。後ろからぶん殴られたぐらい>

<これで体内の洗浄をしてから傷口を閉じるんだ>

<どうして温水なんですか?>

<体温と同じぐらいに温めないと、体温が下がって体力を消耗しちゃうんだよ>

<お医者様って大変です>

<いや、僕だけだから>



  ➖ ➖ ➖  ✡️ ✡️ ✡️ ➖ ➖ ➖



 小さいブルフィグトの方の治療は終わり、大きいブルフィグトの治療も後半というところで、ロビが顔を上げた。

 

<ララ、戻っておいで>

 

 音も無くナイトホークがロビのそばに舞い降りた。

 

「ララ、ありがとう。『喚返リターン、ララ』」

 

<ロビ様、どうしたのですか?>

<奴らが動き始めた。今度は僕が行く>

 

 ロビはブルフィグトのそばにしゃがみ、魔法陣のひとつを指さした。

 

<ハルカ、これはブルフィグトの心臓で、今は弱っているから魔法で強制的に動かしている。そのうち自力で動き出すと思うけど、僕がここを離れると数分で魔法が消えちゃう。だから同じ速さでハルカが揉み続けてあげて欲しい>

<はい、わかりました>

 

 ロビは手を布で拭くと、マントを脱ぎ、上着をひっくり返して着た。上着もマントもリバーシブルになっており、ひっくりかえすと赤紫色の派手なデザインになる。

 仕上げに、ロビは左耳のピアスを触った。

 

<ハルカ、どう?髪の毛の色、変わった?>

<はい、ちょっと色ははっきりわからないのですが、髪と瞳の色が変わりました。そういえば、私、色がよくわからないんですけど変なんでしょうか?>

<いや、獣人族はヒト族より見える色の種類が少ないみたいなんだ>

<そうですか。ちょっと残念です>

<でも、安心して。種類が少ないだけで、ハルカなら慣れればちゃんとわかるようになるよ。それにヒト族には見えないものが見える>

<例えばなんでしょうか?>

<暗闇でも物が見える。それから精霊だよ>

<この世界には精霊がいるのですか?>

<ヒト族には見えないけど、うちの獣人には精霊の加護を受けて旅立った者もいるそうだよ>

 

 ロビはにこりと笑うと、首に巻いていた布を引き上げて鼻から下を隠した。

 

<実は僕、裏稼業で冒険者もやっているんだ。いつでもこの服装に変えられるよう、僕の服はリバーシブルになっているんだよ>

<魔法でぶわあああっと……>

<そういう変身する魔法は無いから……いや、無いこともないかな。魔道士三十人ぐらいでやっと一人を変身させれるかも>

<そうですか。魔法って大変なんですね>

<じゃあ、行ってくる>

<行ってらっしゃいませ、ロビ様>

<あ、名前はナンチェリだから>

 

(どうやら知り合いがいるみたいだから、余計な血は流さずに済みそうだ)

 

 いくつかの大きな岩を越えたところで、ロビは密猟団を見つけた。

 

(一応、ナンチェリ口調で……設定は冒険者だから。一人称は、俺、俺、俺。よし)

 

 『ナンチェリ』は、ロビが冒険者ギルドに登録している名前である。ロビはこの名前で冒険者ギルドだけでなく、辺境警護団にも出入りしている。

 

「やあ、あんたら、何をしてるんだ?」

「今度は一体なんだ、お前、何者だ?」

「お前、ナンチェリじゃないか」

「ダンツ、久しぶり。あんたのような騎士がなぜここに?」

 

 ロビは、以前、辺境警備団にいた警護兵が密猟団にいることを、ララの視覚を通じて既に知っていた。

 

「今は辺境警備団を辞めて、もっと給料のいい傭兵団に入ったんだ。その依頼が密猟団の護衛でな。まあ、俺も落ちたもんだ、はっはっは」

「ダンツは相変わらず、昼間から飲んで景気がいいな。依頼主は?」

 

 ロビはさりげなく剣を見た。全体的に派手な装飾がされており、鞘は黒と赤のツートンカラーに金色でドラゴンが描かれている。

 

(これは古代魔道具アーティファクトじゃない。新しく作られたものだ。どうやってあれだけの魔力を溜め込んだんだろう?)

 

 矢に魔法を付与して放つことはあるが、付与した魔法が効力を発揮し続けるのは数秒程度、長くて数分である。しかし、ララの目を通して見たこの剣は、少なくとも五分以上魔法が付与されており、聖蛇短剣スネイクダガーと魔力衝突をしても魔力切れを起こさなかった。恐らく、もっと長く魔力付与ができると思われる。

 

「依頼主については、俺にはわからん。傭兵団として受けているからな」

「じゃあ、あんたは?」

 

 ロビは魔道士の方を見た。ダンツと対等に話している様子から、ただならぬ気配を感じたのか素直に話し始めた。

 

「俺もダンツと同じ傭兵団だから。上層部しか知らないんじゃないか」

「ダンツ、傭兵団の名前は?」

「お前も来るか?ホレセル傭兵団だ」

「聞いたこと無いな。主は?」

「セルレル=ホレサレという奴だ。魔法も使えるから貴族落ちかもな」

「そうか」

 

「おい、お前ら、いつまでしゃべってるんだ!」

 

 密猟団のリーダーらしき男がイライラしながら、狩猟用刀剣ハンティングソードを片手に前に出てきた。



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「昔話とかはどうでもいい。獲物が逃げちまうぞ」

「俺が帰れと言ったら帰るか?」

 

 ナンチェリは笑顔で話しかけた。

 

「帰るわけないだろう、俺とやりあうっていうのか?」

「おい、やめろ、そいつは……」

「うるせえ、ダンツ、黙ってろ」

 

 リーダーの男はナンチェリに掴みかかった。その瞬間、男の両腕から血が噴き出し、両腕は、だらんと垂れ下がった。ナンチェリの両手には双輝鋭刃ツインズカッターが握られている。

 

(筋肉に沿わせて切ったから、普通の治癒魔法でも治ると思うけど)

 

「ほら、言わんこっちゃない。そいつ、歳は行ってないが、やることはえげつないぞ」

「早く魔道士に治癒してもらった方がいいぞ。それぐらいは見逃してやる」

「ちくしょう、お前ら、やっちまえ!」

 

 数十秒後、両腕から大量の血を流す男たちが十一名……。

 

(もう一人はどこにいるんだろう?魔道士がいるところで見える魔法は使いたくないな)

 

「ダンツ、お前ら、ここで戦わないのは契約違反だろ!」

「いや、俺たちは魔石獣から守るのが契約でな、その他は別だ」

「さっきは戦ったじゃないか」

「あれは、俺達にも襲い掛かってきたからだ。自衛だよ自衛」

「あんた、依頼主を知っているのか?」

 

 ナンチェリは、男を見た。

 

(ん?向こうで弓を直している。狙ってくるのかな)

 

「知らん!」

 

 右足から血が噴き出した。

 

「もう一度、聞きくけど依頼主は?」

「知っていても言わん!」

 

(なんか、本当にこいつら、ベタな奴らだな)

 

 左足から血が噴き出し、男は身体を支えることができずしゃがみこんでしまった。



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理系Hラノベ作家みならい。主にアニメ実況感想レビュー。ネタバレしない程度にレビュー記事を書いています。記事を読んでからアニメを観てい頂ければ感動?をシェアできること間違いなし!
申し遅れましたが名前は綿串天兵(WATAKUSi SOLABe:ワタクシソラベ)です。

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