政治に疎い人向け政治小説!真山仁『当確師』批評
政治に疎い人向け政治小説!真山仁『当確師』批評
65点
真山仁の長編小説です。
2015年の出版、NHK版の『ハゲタカ』がすでに放送されたあとなので
著者はすでに今ぐらい知名度を持っていました。
内容は政治小説。
国政ではなく地方選挙を舞台に、
当確師と呼ばれる選挙コンサルタントを主人公にして話が進みます。
構成はプロローグを含め8部構成。
第1章は関口という選挙スタッフを主人公がスカウトするサイドストーリーで、
第2章以降からメインの物語に入ります。
なるべくニュートラルに選挙というものを描けている点は評価できます。
政治を題材にする小説と言っても
それはもう幅広いです。
政治のどのタイミングを物語にするのか。
本作みたいに選挙なのか。それとも当選したあとの話なのか。
選挙なら国政選挙なのか、地方選挙なのか。はたまた内閣総理大臣指名選挙なのか。
加えて誰の視点で描くのか。政治家、官僚、関係者、一般人……視点を置く人物によって物語の色合いが違ってきます。
選挙コンサルタントという立場は、
情勢を客観的に記述できながら、依頼を受けた候補者を勝たせるというカタルシスも提供できる、
一石二鳥な人物と言えます。
もちろん難点もあります。
政治小説の宿命ですが、登場人物が多すぎて
だんだん誰が誰だかわからなくなっていきます。
本作、文庫だと300ページ足らずで、長編小説としてはそんなに長くないんですが
それでも後半は人物の背景を混同してしまいました。
ストーリー展開についても、なんだか後出しじゃんけんというか
後半に行くにつれてご都合主義が目立つようになってきます。
選挙に関する描写がリアルなだけあって、より目立つんですよ。
とまあ色々書きましたが、ライトな政治小説としては悪くないです。
政治家やその関係者が、メディアに映らないところで何をやっているか、
気になる人って多いと思います。というかコロナ禍を経て増えてきてるんじゃないか。
企業小説の書き手が政治小説にたどり着くのは自然なことです。
企業は日本の法律に縛られるし、その法律を作っているのは政治家ですから。
山崎豊子しかり、池井戸潤しかり。
ただ政治小説は難しい。
それは法制度や、実際に政治家や関係者たちがどう動いているかという現場の運用を取材するのに
大変なコストがかかるということもあるし、
政治を描けばおのずとなんらかのイデオロギーを描くことになり、
作者の意図していないプロパガンダと受け取られてしまうリスクもある。
あと、事実は小説よりも奇なりってやつで、下手なフィクションより
現実の政治のほうがコンテンツとしておもしろくなることだってある。
本作のドラマ化に当たり、著者のインタビュー動画が
YouTubeにありました。
何やら欅坂46の話をしています。
『不協和音』の歌詞書いたの、秋元康っていうおじさんなんですけどね。
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