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案外教育的?原発AV小説『恋する原発』批評

案外教育的?原発AV小説『恋する原発』批評


70点
 
高橋源一郎の長編小説。
発表されたのは2011年11月。題名からわかる通り、
東日本大震災と、福島原発事故をテーマに描かれています。
 
被災地を取材してリアリティーのある描写……なんてものは一切なく、
ポストモダン的な社会風刺と、不謹慎に不謹慎を重ねたようなブラックユーモアが
とにかく展開されます。
 
全8章構成、
本編は7章で、第6章と第7章のあいだに
震災文学論という作中評論が挟まります。
小説内の評論なので事実に基づかない記述もちらほら。
 
ストーリーはあってないようなものです。
東日本大震災のチャリティーAVと称して
福島原発でAV撮影をしようとする監督の話、
という大筋はあるにはありますが、
展開を楽しむのではなく
口語的な文体と、登場人物たちが語る思想を楽しむ小説ですね。
 
第5章に出てくる、
55歳のAV女優と小学四年生の女の子のぶっ飛び会話が
本編でのハイライトでしょう。
 
2011年11月の発売当時にすぐ買って読んで
高橋源一郎やべーとなった記憶があります。
全国的に自粛ムードに疲弊していた時期で、
意図的に不謹慎な態度を取る有名人はちらほらいたんですが、
ここまでやる人はいなかった。
「不謹慎警察」を馬鹿にするような内容を期待した人は
度を越えた不謹慎に少なからず引いてたと思います。
 
その後、2024年に二度目の通読。
いろんなものが「冷めた」状態で読んでみると
第5章に出てくる、
55歳のAV女優と小学四年生の女の子のぶっ飛び会話含め、
意外と「教育的」だったので
どう評価していいかよくわからない複雑な気分になりました。
 
あくまで流行物、震災後の自粛ムードに対するカウンターカルチャーの一つとして
楽しむのが正しい読みかたな気がします。
 

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ポップカルチャー評論家
専門分野は映画、ドラマ、小説、アニメ
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