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『殺人犯はそこにいる─隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件─』批評

『殺人犯はそこにいる─隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件─』批評


殺人犯はそこにいる─隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件─ 80点
 
 
 フジテレビでやっていたドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』の参考文献として本書が挙がっている。足利事件をはじめとした、北関東連続幼女誘拐殺人事件を取材する記者のルポルタージュだ。『エルピス-希望、あるいは災い-』のプロデューサーの佐野亜裕美も、Twitterで推薦していた。
 
 
 
 事実は小説よりも奇なり、である。不謹慎かもしれないが、そんじょそこらの推理小説よりもよっぽどおもしろい。フィクションはノンフィクションに絶対に勝てないことを痛感する一冊だ。
 本書は、警察や検察や裁判所に対して批判的である。問題点とされているのは科学捜査の権威性と、強引な取り調べによる自供だ。筆者がテレビドラマ好きということもあって、いろんな警察ドラマが頭をかすめた。
 科学捜査もので言うと、『科捜研の女』、『アンナチュラル』、アメリカのドラマ『CSI:科学捜査班』シリーズあたりが思い浮かぶ。『科捜研の女』はちゃんと見たことないけど、『アンナチュラル』は科学捜査の担当官が裁判に出廷するシーンがあった。『CSI』シリーズについては「CSI効果」なる現象も起きているらしい。科学信仰の危うさが浮き彫りにされる。
 取り調べの可視化、というところからスタートしているのが、『緊急取調室』シリーズだ。強引な取り調べができない警察たちが、いかに犯人から自供を引き出すかというところに主眼を置かれているドラマである。すべてのエピソードを見ているわけじゃないけれど、冤罪をテーマにしたことはあったのだろうか。井上由美子の脚本だからそれぐらいのことはやりそうだ。
 

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ポップカルチャー評論家
専門分野は映画、ドラマ、小説、アニメ
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