舞城王太郎的『インセプション』――『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』批評
舞城王太郎的『インセプション』――『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』批評
ID:INVADED イド:インヴェイデッド 80点
2020年に放送されたテレビアニメだ。
対象の殺意に入り込み、捜査をおこなうというSF設定の警察ものという、筆者好みの内容ということと、脚本を舞城王太郎が担当しているということで見た。
舞城王太郎はもともと小説家だ。筆者が読んだことあるのは『阿修羅ガール』、『好き好き大好き超愛してる。』、『スクールアタック・シンドローム』、『熊の場所』といったあたりである。本作の重要なアイデアである、複数人が同じ夢を共有することについても、たしか『阿修羅ガール』か『好き好き大好き超愛してる。』に同じアイデアが出てきた記憶がある。
本作を見て多くの人が思い浮かべる先行作品が、クリストファー・ノーラン監督『インセプション』であろう。『インセプション』が対象の夢の中に入り込む産業スパイだったのに対し、本作は殺意の中に入り込む捜査官(名探偵)だ。両方とも、夢の中の夢に入り込むこと、殺意の中で殺意に入り込むことはリスクが高いと描写されるし、夢や殺意の中に入り込めば入り込むほど、時間軸が狂っていく点も共通している。
そういった設定だけではなく、作風としても近い。序盤はSF設定を用いたミステリーとして展開していくが、後半に行くにつれて難解になっていくところも似ている。そのあたりの大衆性と作家性の両立は、クリストファー・ノーランと舞城王太郎が似た傾向を持っているからだろう。
主人公の声を担当するのは津田健次郎だ。遊戯王世代の筆者としては海馬瀬人のイメージが強い。最近では情報7daysニュースキャスターのナレーションの印象もある。本作については、最初はやや違和感があったものの徐々に慣れてきて、終盤にある泣かせどころは見事なものだった(まあ本作は知名度が高いアニメでなく、まだ見ていない人もそれなりにいるだろうから、あんまりこういうことは言わないほうがいいのかもしれないけれど)。
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