脚本～恋人たちの協奏曲～第一章

唯李 /

2022/08/28 03:21 | 3089 文字

タイトル

【恋人たちの協奏曲】

第一章

『夏が忘れていったあの日』

～彩花(あやか)の弾き語り～

　曲が流れ始める

～涼太(りょうた)のひとりごと～

『俺は呆然と立ち尽くし、彼女を見つめていた。』

～彩花が歌い出す～

曲調:切ない恋心を歌った曲

ナレーション

『涼太はしばらく聞き惚れていた。』

～歌が終わり、曲だけが流れる～

ナレーション

『涼太28歳。大学を卒業してそれなりに稼ぎ、彼女もできた。その彼女、真理(まり)と結婚を前提に付き合う決心をして、今日これから彼女に告白するつもり…。』

～涼太のひとりごと～

『俺はまだ彩花のことが好きだ。』

～ナレーション

『高校生の時に、涼太が彩花に告白して付き合い始めた。大学生になり、夏休みに入ったある日の午後のことだった。』

彩花

「りょうちゃん、私待ってるね。」

涼太

「あや、ゴメン…。」

～涼太のひとりごと～

『俺は彼女の優しさに甘えていた。いつものように、「いいよ」と返事があると思っていた。』

～ショックの音が入る～

～寂しい曲が流れる～

～涼太のひとりごと～

『俺は大学に入り、サークル仲間と遊ぶことに夢中なっていた。

彼女が俺から去るなんて思ってもいなかった。

それでなくても遠距離でなかなか逢えないのに、やっと逢えるという日を、俺はあろうことか、サークル仲間と遊び呆けていた。』

～寂しい曲が終わる～

ナレーション

『涼太は、彩花と付き合っていた高校生の頃を思い出していた。』

～懐かしい曲、涼太の弾き語り～

～歌が終わり、曲だけが流れる～
～タイムスリップする～

涼太

「今日は最近覚えたあの曲を歌ってくれる？

俺、一応弾けるようになったからさ。」

ナレーション

放課後の教室で、涼太は照れながらギターの練習に彩花を誘ってみた。

彩花

「いいよ。でもまだ覚えたてだから、うまくないよ。うふっ」

ナレーション

『はにかむ彩花だった。』

～涼太のギターに合わせて彩花が歌い始める～

～曲が終わる～

ナレーション

『突然、歌い終わった彩花の目の前に涼太が立って言った。』

涼太

「俺、彩花のことが好きだ。」

ナレーション

『涼太は唐突に彩花に告白した。

彩花がビックリしているにも関わらずそのまま続けた。』

涼太

「彩花はモテるから、俺なんかじゃつりあわないと思うけど、俺は、彩花のことが好きなんだ。彩花の歌も大好きなんだ。」

彩花

「私なんてモテないよー、私の歌を誉めてもらえてすっごく嬉しい。私も…好き…。」(恥ずかしいけど嬉しそうに)

「私でよかったら、よろしくお願いします。」(告白した恥ずかしさから、うつむいたままの彩花)

ナレーション

『彩花は恥ずかしそうにうつむきながら、涼太を見た。彩花の頬はほんのりピンク色だった。』

涼太

「あ、あっ、窓、虹だ。雨がやんでよかったな。」(ドキドキしながらも告白が成功した喜びを噛み締めながら)

ナレーション

『ふたりは恥ずかしさを隠すために、窓から空を見上げた。涼太はゆっくりと彩花の肩を抱いた。』

～彩花の歌声が流れる～

ナレーション

『彩花は◯◯◯◯の歌を口ずさみながら涼太の温もりを感じていた。』

ナレーション

『教室の扉の前には、健太郎が立っていた。雨があがったから、一緒に帰ろうと涼太を迎えにきた健太郎だった。健太郎は、静かにくるりと向きを変えて歩きだした。』

～彩花のハミングを聴きながら～

健太郎

「先越されたか…。涼太なら祝福するしかないな…。あはは…。」

ナレーション

『健太郎は、涼太とは幼なじみで付き合いは長い。お互い親友と思っている。』

～涼太のひとりごと～

『彼女はいつも俺の隣で歌ってくれていた。

柔らかな包み込むような彼女の歌声は俺の心を熱くした。』

ナレーション

『大学生になり、仲間との付き合いを楽しんでいたあの頃…。』

涼太

「おかしいなあ、まだ怒っているのかなあ…。」

～涼太のひとりごと～

『俺は何事もなかったかのように彼女へ連絡した。

だが、返事はなかった。

俺はいじけているだけだと思って、しばらくほうっておいた。

しかし、返事はなかった。』

～不安をあおる音～

『俺は電話をかけた。』

～電話の呼び出し音～

『だが、彼女は出なかった。』

～衝撃的なショックな音～

～さよならの曲が流れる～

ナレーション

『あの日、彩花はまさか自分の誕生日をひとりで過ごすことになるなんてと、落ち込んでいたとき、健太郎からラインが入った。』

健太郎

「ラインで誘うと思ったけど、今大丈夫っていうから、電話したけどホントによ良かった？」

彩花

「うん。いいよ。久しぶりだね。高校卒業以来だから、半年ぶりくらいかな。」

健太郎

「明日、空いてる？もうすぐあやちゃんの誕生日でしょ、だからランチでもどうかなって思ってさ。あっ、誕生日は涼太とふたりで祝うだろうからさ、俺はその前にと思ってね。」

彩花

「…」

健太郎

「どうしたんだ？返事ないけど、嫌なら別に無理しなくていいよ。えっと…、涼太に気を遣うとか、俺に迷惑だとかなんて、ないからな。」

彩花

「けんちゃんて、優しいね…。」

健太郎

「ど、どうしたんだ…、何かあったのか？」

彩花

「けんちゃん、私…」

～彩花は泣き出した～

ナレーション

『以前はよく涼太、健太郎、彩花の三人で遊んでいたので、健太郎は彩花の気持ちがよくわかっていた。だが、彩花の話を聞いた健太郎は、自分の気持ちを押さえることができなくなっていた。』

健太郎

「明日逢ってゆっくり話しような。じゃあ、いつもの喫茶店で待ってるから。」

彩花

「うん、わかった。ありがとう…また明日ね。」

～彩花のひとりごと～

『このタイミングで…。どうしよう…。でも、りょうちゃんはあんなだし、いいよね、少しくらい愚痴っても…、いいよね…。』(自分自身に確認するかのようにつぶやく)

ナレーション

『それから数日後、彼女からラインが入った。
「りょうちゃん、ごめんね　さようなら」とだけ。

涼太は、そのとき初めて事の重大さに気が付いた。』

～涼太のひとりごと～
『あのときの俺のあの一言がこんなことになるなんて…。』

涼太

「俺は、取り返しの付かないことをした。」

～ショックで辛くて耐えられないくらいの声で訴える～

～曲が終わる～

涼太

「俺の夏は終わった。」(空しく切なく)

～蝉の鳴き声が空しく聞こえる～

～つづく～

唯李😊⚜️

2022年8月27日土曜日
修正　2022年9月10日土曜日

#恋愛 #声優 #スタエフ #声劇 #脚本 #ラジオドラマ

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唯李

唯李(ゆり)と申します。
stand.fmでオリジナル小説を朗読しています。
小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。