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脚本~恋人たちの協奏曲~第四章

脚本~恋人たちの協奏曲~第四章


~恋人たちの協奏曲~第四章
 
第四章
『哀愁の空と恋心』
 
~幸せの予感のする曲が流れる~
 
ナレーション
『秋晴れの空がきれいな爽やかな昼下がりだった。空には飛行機雲が鮮やかに描かれていた。彩花の母親の命日に健太郎と彩花はふたりでお参りに来ていた。』
 
彩花
「けんちゃん、わたし…。
今は考えられない。ごめんね。でも、けんちゃんの気持ちは嬉しいよ。いつか一緒にになれたらいいなあと思う。」
 
健太郎
「わかった。でも、あやちゃん、涼太のことで迷ってるんじゃないよね、あのときのことを忘れてないよね、涼太には、結婚を前提に付き合ってる彼女がいるんだよ。…。えっ、知らないの?」
 
彩花
「そう、そうなんだ、そうだったなんて…。でも、私のこと守るって…。(ひとりごとのように)
ううん、なんでもない、わかった。わかってるから。そろそろ帰ろうか。」
「お母さん、また来るね。お父さんのこと頼んだからね。お母さん、寂しくなくなってよかったね。じゃあ…、またね。」
 
~曲が終わる~
 
ナレーション
『彩花は、涼太のことばを信じられなくなっていた。空を見上げるとそこにはもう飛行機雲はなかった。秋風を冷たく感じた彩花だった。』
 
~彩花のひとりごと~
『りょうちゃん、うそつき、私のこと守るって、いったのに…。』
 
~電話の呼び出し音~
 
涼太
「あや、なんでラインの返事をくれないんだよ。何かあったのか?今、あやのうちの近くまで来てるんだ。」
 
彩花
「涼太さん、彼女さんとお幸せにね。色々ありがとう。もう、連絡してこないで。じゃあ…。」
 
~電話の切れる音~
 
「あやっ…」
 
~涼太のひとりごと~
『俺じゃだめなのか…。』
 
~電話が鳴る~
~急いで出る涼太~
 
涼太
「あやっ、俺はあやを守るといったことばに偽りはないよ。だから話を聞いてくれ…。」
 
真理
「えっ、涼太さん…あや…さ…んて、」
 
涼太
「あっ、まりっ…。」
 
~ショックの音~
 
ナレーション
『しばらく無言のふたりだった。』
 
~電話が切れる音~
 
~切ない曲が流れる~
(曲は無しでもよいかも)
 
~真理のひとりごと~
『涼太さん、同級生って、あやさんて…女性だったんだ。私って、なんなの、二年も付き合ってきたのに…。』
 
真理
「行ってみるか、うちの近所って言っててたし。見えない相手のことで、心配するくらいなら、当たって碎けろだ。碎けたくないけどさ。」
 
ナレーション
『真理は声に出して言ってみた。今にも泣き出してしまいそうな真理だった。』
 
~足音~
 
~真理のひとりごと~
 
『この辺なんだけどなあ…、あっ、あった、涼太さんが言ってたあの看板だ。えっと…ここからどうしよう…。』
 
~曲が終わる~曲が切り替わる
~彩花の弾き語り~歌声~
 
彩花
「お父さん、私ひとりぼっちになっちゃった。これから先どうすればいいの。」
 
ナレーション
『彩花は、久しぶりにギターを弾いていた。そこへ、涼太がやってきた。』
 
~曲が終わる~
 
~玄関でベルが鳴る~
~ピンポン~扉が開く~
 
涼太
「あや」
 
彩花
「涼太さん、もう逢わないって、言ったでしょ。」
 
ナレーション
『涼太は、彩花の体を自分の胸に引き寄せて抱きしめた。』
 
涼太
「あや」
 
彩花
「あっ、だめ離して…。」
 
ナレーション
『その光景を、道路の向かい側から見ている女性がいた。』
 
涼太
「あや、俺はもう一度あやとやり直したい、うんと言ってくれないか。」
 
彩花
「だめだよ。涼太さんには、お付き合いしている人がいるんでしょ、私だって健太郎さんがいる。」
 
涼太
「あや、なんで、知ってるんだ…。健太郎か…。そうだけど、でも、俺はあやのことを忘れられないんだよ。」
 
ナレーション
『ふたりを見ていた女性はその場から、いつの間にいなくなっていた。』
 
~悲しい曲が流れる~
ここで長渕剛さんの曲で『orange』がかかるといいなあ~
 
~真理のひとりごと~
 
『涙が勝手に出てくる。悲しいなあ、悔しいよぅ、私って…。うぅ…。この二年間を返してよ…涼太さんのばかっ。うぅ…』
 
ナレーション
『涙をぬぐうことも忘れてただ歩く真理だった。一刻も早くあの場を離れたかった。あの光景を記憶から消したかった。』
 
~足音がすれ違う~
 
ナレーション
『健太郎は、泣いている真理とすれ違った。』
 
~健太郎のひとりごと~
 
『どうしたんだろう…こんなところで泣いてるなんて…。
…う~ん、人の心配してるところじゃないな、早くあやちゃんのところに行かないと、涼太のやつ、何を仕出かすかわからないからな。でも、気になる…。仕方がない、ここで逢ったのも何かの縁だ。』
 
健太郎
「あのう、大丈夫ですか?」
 
 
ナレーション
『どのくらいの時間が経ったのだろうか、涼太と彩花は結論が出ないままだった。
そこへ健太郎がやって来た』
 
健太郎
「涼太、いい加減にしろ。何してるだ。もう二度とあやさんに近づくな。」
 
彩花
「健太郎さん…。」
 
健太郎
「あやちゃん、大丈夫かい?涼太の、一時の気の迷いに惑わされるんじゃないよ。久しぶりに逢ったから懐かしいだけだよ。それは愛じゃない。」
 
彩花
「わかってる。わかってるけど…。健太郎さん、私どうしたらいいか、わからない。」
 
健太郎
「僕を信じて。涼太はまたあやちゃんに甘えて自分勝手なことをする。今だって付き合っている彼女がいるのに、彼女が泣いているのに、あやちゃんにこんなことをしている。わかるだろう、そんなやつだよ。涼太は。」
 
涼太
「ひどいことをいうやつだな。俺はあやのことが、好きなんだ。守りたいと思っている。」
 
健太郎
「じゃあ、今付き合ってる彼女は、どうするつもりなんだ。今度もまた、あやちゃんにしたように、『ごめん』の一言で終わらすつもりか?」
 
涼太
「あっ…それは違うんだ、そんなつもりじゃなかったんだ、あのときも、ただ…。」
 
彩花
「涼太さん…彼女が泣いてる…そうよ、泣いてるよ、彼女もあのときの私のように。」
(彩花は呟くように言う)
 
ナレーション
「涼太と彩花、ふたりは無言で見つめ合っていたが、彩花は目をそらし、健太郎を見て再び涼太を見た。その瞳には、憂いも、迷いもなかった。」
 
彩花
「涼太さん、私、父が亡くなって、あのときから今まで、ちゃんと考えられる状態じゃなかったの。わかるでしょ。
今、健太郎さんの話を聞いてやっと、わかったわ。
涼太さん、私健太郎さんと一緒にいたいの。だから、涼太さんも彼女のことを大事にしてあげてね。」
 
ナレーション
『涼太は、自宅に戻って何時間もただ呆然としていた。ふと窓の外に目をやると、夕焼けが鮮やかだった。西陽が異様なくらいに紅かった。』
 
涼太
「俺のあの夏の恋は終わった。本当に終わったんだ。」
 
ナレーション
『そう言うと、涼太は電話を掛けた。』
 
~電話の呼び出し音~
 
~つづく~
 
2022年10月8日土曜日 唯李😊⚜️
2022年10月11日火曜日修正 唯李😊⚜️


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唯李(ゆり)と申します。
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小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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