1872年7月9日 「マリア・ルス号事件」

1872年7月9日、日本の横浜港において「マリア・ルス号事件」が発生しました。この事件は、明治5年（1872年）に停泊中のマリア・ルス号（ペルー船籍）内にいた清国人苦力が奴隷として扱われているとして、日本政府が彼らを解放したというものです。この事件は、日本が国際裁判の当事者となった初めての事例となりました。

当時、マリア・ルス号は日本と清国（中国）の間で商船として運航されていました。船内では清国人苦力が働いており、彼らは劣悪な労働環境下で奴隷のように扱われていたとされています。日本政府はこの事実を知り、奴隷制度廃止の立場から彼らの解放を求めることになりました。

日本政府はマリア・ルス号の船長に対し、清国人苦力の奴隷的な扱いを即時停止するよう要求しました。船長はこれに従わなかったため、日本政府は船を押収し、清国人苦力を解放しました。この行動は国際的な注目を浴びることとなり、日本が国際裁判の当事者となった初めてのケースとして歴史に残る出来事となりました。

マリア・ルス号事件は、日本が奴隷制度廃止に真剣に取り組んでいることを示す重要な節目でした。日本政府の行動は国際的な評価を受け、奴隷制度の撤廃に向けた国際的な動きにも影響を与えました。

この事件をきっかけに、日本は奴隷制度撤廃のための取り組みを一層強化しました。後に明治政府は、奴隷制度の完全廃止を宣言し、奴隷取引を禁止する法律を制定しました。マリア・ルス号事件は、日本が人権と平等を重視する近代国家としての基盤を築く上で重要な一歩となりました。

この事件は、国際的な注目を浴びただけでなく、日本国内でも奴隷制度に対する意識を高めるきっかけとなりました。マリア・ルス号事件は、日本の歴史における人権と正義を追求する姿勢の一つとして、今日まで語り継がれています。