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#21【葛飾北斎】富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」

#21【葛飾北斎】富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」


皆様こんにちは!
絵画インストラクターの松本です。

今回は待ちに待った・・・・
富嶽三十六景の代表、
「神奈川沖浪裏」!!!


あまりにも有名な一枚なので緊張します。
それでは張り切っての解説です!!

葛飾北斎ってどんな画家?
  • 江戸本所割下水にうまれる(1760-1849)
  • 浮世絵(木版画)の風景画というジャンルを築く
  • 画狂老人と呼ぶほど絵に人生を捧げる
  • 引っ越し93回!
  • 金銭管理が下手で画料はほぼ借金返済に
浮世絵「富嶽三十六景」って?
  • 全46枚!
  • 当初は36枚の予定が人気が出たため10枚追加された
  • 富士山を色々な場所から描く
  • 鮮やかな青「ベロ藍」プルシアンブルーの使用
  • 西欧諸国でジャポニスム(日本趣味)の要因となる

富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」かながわおきなみうら


大迫力の一枚!!
波しぶきが降りかかります!!

神奈川沖浪裏

 6歳の娘がこの絵を見て
「生きてるみたい!」と感動していました。
波しぶきの形は竜の爪のよう。

 娘が描かれた人達を「赤ちゃんみたい!」と
笑っていたのですが、確かにくすっとさせられますね。
大きな自然の前では人間は赤ちゃんみたいなものなのでしょう。

富士山
現在の千葉県木更津市から
東京湾を隔ててみた富士山。

富士山

押送り舟
(おしおくりぶね、おしょくりぶね)
鮮魚や野菜を運んだ舟。

舟

富士山の「静」と
波の「動」が対比になっているのが
魅力的です。

海外では「The Great Wave」として浮世絵の代表

 神奈川沖浪裏は海外で
「グレイト・ウェーブ」「ビッグ・ウェーブ」と
呼ばれ親しまれています。
北斎に影響を受けた画家に

・ゴッホ 
・モネ
・ドガ

があげられます。

 ゴッホの「星月夜」の空と、
神奈川沖浪裏の波のうねりが
なんだか似ていますね!

フィンセント・ファン・ゴッホ
「星月夜」1889年

ゴッホ 「星月夜」

 また北斎に影響を受けた音楽家にドビュッシーがおり、
神奈川沖浪裏に着想を得た「海」という作品を発表しています。

 アメリカの雑誌「ライフ」では
「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人(1999年)
にて北斎が日本人で唯一選ばれており
日本人としてとても誇らしいです!

 海外の方が日本の版画といえば
この絵を思い浮べるでしょう。
海外の方からみても
とてもインパクトのある絵なんですね。
(^^♪

北斎の構図「三角形の相似」「黄金比」「フラクタル」

 それでは北斎の構図をみていきましょう。

 まず、大きく三角形の相似が
3つ見て取れます。

三角形の相似

大波、手前の波、富士山。三角形ですね!

波が富士山よりも大きい三角形なので、
富士山との遠近がより強調されています。

 次に「黄金比」です。
人が美しいと思う比率を「黄金比」といい 
1: 1+√5 /2 という数式であらわします。
少数に直すと比率が永遠に続くのですが、
省略して1:1.618であらわします。

 こちらが1:1.618の長方形。

長方形

名刺やカード類はこの比率に近く、
歴史的建造物では
パルテノン神殿に黄金比が使われています。

 この長方形の中に正方形を作ります。
残りの部分はまた黄金比の長方形になります。

黄金比

 新しくできた長方形のなかにもう一つ
正方形を作ります。
 黄金比

 神奈川沖浪裏を重ねると・・・。

黄金比

 富士山の頂上に黄金比の線を引っかけて重ねると、
大波が正方形の中におさまります。

 また黄金比の右側に正方形を作ると
大波の頂点が正方形の線のところになっています。

大波

この正方形の対角線と
左側の正方形の重なったところを
中心に円を描くと
波の空いている部分になります。

波

北斎はコンパスを使っていたといわれているので、
構図を考える時に円を意識して
空間を作ったのではないでしょうか。

黄金比や円に絵の要素を引っかけることで
魅力的で惹きこまれる絵になっているんですね!!
(^^♪

また黄金比で作成された螺旋(黄金螺旋)が
随所にみられます。
螺旋

構図3つ目のポイントは
波がフラクタルになっていることです。

小さな部分が繰り返され、
さらに全体と部分が相似形になっています。

自然界では海岸線や雲の形、雪の結晶にみられます。
部分と全体が似ていることで、
絵にリズムが生まれて心地よさや面白さを感じます!
(^^♪

繰り返しのリズム
フラクタル

全体と部分

波


ヽ(^o^)丿
 時代も国境も超える北斎は本当にかっこいいです!!
 
 大胆な構図や破天荒な人生に騙されますが、
しっかり理系なんですね。
 鋭い観察眼で自然のパターンをつかみ、
さらに独自の表現へ昇華させているところに
すごみを感じます。

以上「神奈川沖浪裏」でした。
次回「富嶽三十六景 武州玉川」(ぶしゅうたまがわ)の解説です。

お楽しみに!

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